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てんかん原因事故どう防ぐ 東北大病院・中里信和科長に聞く

 京都市で歩行者7人が死亡した暴走事故の容疑者がてんかんを患っていたことをめぐり、関係者は病気への偏見が広がることを懸念している。こうした懸念を払拭(ふっしょく)し、事故を防ぐにはどんな対策が必要か。東北大学病院てんかん科の中里信和科長に現状と課題を聞いた。

 −昨年4月、栃木県でクレーン車の運転手がてんかん発作を起こし、児童6人が死亡する事故があった。
 「医師から運転を止められていたのに運転を続けており、厳罰は当然だ。発作がなく、法的に正しい手続きをして免許を取得している患者は、報道に触れてつらい思いをしている」
 −2002年の道路交通法改正で、てんかん発作が過去2年以内にないなどの条件を満たせば、運転免許を取得できる。
 「国内の患者は100万人とされ、7〜8割は正しい診断と投薬治療で普通の生活を送っている。私は発作が残る患者には厳しく指導してきたが、以前は隠れて運転して事故を起こし、亡くなる方もいたようだ。栃木県の事故以降は患者自身が危険性を強く自覚していると感じる」
 −患者が警察に、病気を正しく申告する仕組みをどう整えるべきか。
 「発作の有無を判断する期間を2年以内から欧米並みに1年程度に短縮する方が、自己申告は改善すると期待できる。さらに免許を返納しても『免許の一時停止』とするような扱いを設けてほしい。免許を返納した後、患者がもう一度、自動車学校通いから始める負担は重すぎるためだ」
 「医師から警察側への通報制度をつくるべきだとの意見もあるが、治療は患者との信頼関係があってこそ成り立つ。通報されると分かれば患者は病状を隠してしまう」
 −医療側の課題は。
 「残念なのは、専門医から治療を受けている患者が全体の2割にとどまること。医師不足から、専門知識に基づいて最新の治療を実施できる体制が弱い。東北大病院では医師向けの症例検討会を開いて、診療ネットワークづくりを進めている」
 「運転禁止に関する説明は、家族に同席してもらうのが効果的だ。また家族も含めて、治療で発作が減り、油断した時期が最も危険であることにも注意してほしい」
 −病気への世間の偏見をどうみているか。
 「事故後に解雇されたり、部署を変えさせられたりする患者がおり、胸を痛めている。偏見を生むのは無知。病気を持つ人への理解を広め、社会参加の権利を守りながら、安全を損なわない規制こそ求められている」

 なかさと・のぶかず 東北大医学部卒。広南病院副院長を経て、2010年、大学病院として全国で初めて開設された東北大病院てんかん科の科長に就任した。東北大大学院医学系研究科教授。専門はてんかん学。陸前高田市出身。52歳。


2012年05月13日日曜日


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