米国で発生した最近の原発事故としては最悪規模となったネブラスカ州の原子力発電所の事故で、安全性に関する否定的な調査結果を米原子力規制委員会(NRC)の幹部がもみ消したと非難する書簡がNRCに送られた。
書簡は4月24日付けで、下院エネルギー委員会のエドワード・マーキー議員(民主党、マサチューセッツ州)宛てにも届いた。書簡によると、送り主は西部地域を管轄するNRC地域事務所の職員。書簡には、NRC幹部が「安全に関する問題を提起したことで、場所をはばからず調査員らを厳しく非難し威圧した」と書かれている。さらに、その幹部は、調査員らにこの件を上層部と協議することを禁じたという。
調査員らがテキサス州アーリントンにあるNRCの地域事務所の幹部らにこの一件を持ちこんだところ、幹部らは「ほんの名ばかりの」対応をしただけだったと、書簡は非難する。書簡には「第4地域職員」と署名されており、NRCの5人の委員に送付されている。第4地域にはミシシッピ川以西のほとんどの州が含まれている。
マーキー氏は9日、NRCのヤツコ委員長へこの書簡を送り、独立機関による調査の必要性を訴えた。
書簡の告発は主に第4地域を管轄する幹部の1人、トロイ・プルエット氏に向けられたものだ。プルエット氏は地域内に21基ある原子炉の調査・評価プログラムを担当する責任者。プルエット氏はコメントの要請をNRCの広報に回し、広報担当者は具体的な内容については言及を避けた。メリーランド州ロックビルにあるNRC本部の広報担当者は、NRCは現在、調査中だと述べた。
事情に詳しい複数の関係者によると、NRCの首席調査員はこの件についての報告を受けているという。
書簡は、プルエット氏はネブラスカ州オマハの北19マイル(約30キロ)にあるフォートカルフーン原子力発電所に関する調査結果を無視したと告発している。NRCによると、2011年6月7日に同発電所で発生した「赤信号」レベルの火災は(燃料交換のために停止中であった)同発電所の再稼働を著しく脅かすことになった。
同発電所の再稼働時期について査定するタスクフォースの責任者だったプルエット氏は、赤信号レベルの事故が起きたとなると、彼自身の職務遂行を困難にする「政治的環境」につながりかねないと発言したと、書簡に書かれている。また、プルエット氏がこの件について話し合うため、ロックビルのNRC本部を訪れた際には、上層部に対して、報告されている装置の不具合は「重要なものではない」と述べ、この点については職員らとも合意を得ていると主張したという。
フォートカルフーン原発は、顧客所有の形態をとるオマハ電力公社(OPPD)によって運営されている。現在、OPPDはNRCと共同でこの件について調べている。
第4地域内でこの告発がどの程度、広まっているのかは不明。9日に取材に応じた原発の調査員は「プルエット氏の誠実さを尊敬している」と述べた。
フォートカルフーン原発の件以外にも、職員が違反事項を指摘したり、「安全性に関わる重要な問題を指摘しようとする調査員の能力を抑制する、むしばまれた環境」に言及すると、人事考課の評価が下がったことが、少なくとも2件のケースであったと書簡は訴えている。