ANA国内線【PR】

本と映画と政治の批評
by thessalonike5
アクセス数とメール

access countベキコ
since 2004.9.1

ご意見・ご感想



最新のコメント
(づづき)たしかあなた前..
by ろうのう at 12:24
最近、「ワタミ」の件で市..
by 裕次郎 at 11:38
>カプリコンさん それ..
by liberalist at 11:26
liberalistさん..
by ろうのう at 09:06
20年デフレの惨劇、ここ..
by liberalist at 23:10
 岩手は、公務員にでもな..
by カプリコン at 21:35
1%対99%と言う対立軸..
by ろうのう at 20:07
(続き)  論壇がこの..
by Areopagitica at 16:20
 私も渡邊美樹の人倫に悖..
by Areopagitica at 16:19
最新のトラックバック
以前の記事


access countベキコ
since 2004.9.1


















ワタミの過労自殺 - 大学を卒業した半数がフリーター
昨夜(5/10)のNHKのNW9で、ワタミで働いていた26歳の元女性従業員が過労自殺した問題が報道されていた。入社してすぐに月100時間を超える残業を強制され、わずか2か月後、「体が痛いです、体が辛いです、どうか助けてください、誰か助けてください」と手帳に書き残して自殺に追い詰められた。この事件は、今年2月、神奈川労災審議官が労災認定をしたのを契機にネットで話題となり、社長の渡邊美樹のTwitterが抗議の声で炎上するという騒動へと至った。ネットでは憤激の渦が広がり、ワタミのブラック企業としての評判が定着したが、これまでマスコミが話題にして取り上げたことはない。今回、NHKがこの事件を小特集的な扱いで報じたのは、おそらく、5/8に読売が記事にしたところの、「就活失敗し自殺する若者急増」の問題が念頭にあったからだろうと想像するが、問題の性格が少し違うためか、NW9のニュースはこの警察庁の発表には触れなかった。いずれクローズアップ現代で特集されるかもしれない。クローズアップ現代は、4/26に『やめさせてくれない-急増する退職トラブル』を放送している。この放送は、NHKがブラック企業の問題に焦点を当てた点で意味があったが、やや腰が引けた内容で、期待したほどのインパクトはなかった。この問題は、現実に起きている事態の深刻さや重大さに対して、マスコミと世間の関心があまりに低すぎる。


警察庁の発表によると、昨年、大学生など150人が就活の悩みを苦に自殺しており、2007年の2.5倍に増えている。もう一つ、3月19日に政府が発表した雇用情勢に関する資料によると、2010年に大学・専門学校を卒業した者のうち、就職しながら3年以内に離職する者が3分の1以上で、また、2割が無職やアルバイトのままであり、すなわち、不安定なフリーターの境遇に陥る者が全体の過半数に上るという衝撃的なデータが報告されている。報告は実数を入れていて、2010年春の卒業生が85万人、その進路として、大学院などへ7万人、就職できずに無職・アルバイトになるのが14万人。就職するのが57万人だが、そのうち、3年以内に離職が20万人。さらに、大学に入りながら中退する者が6.7万人もいる。6.7万人は多い。経済的な事情が大きいのに違いないが、この中退者数と比率は異常だ。要するに、晴れて正規職員として就職し、無事に職場で働き続けられる者は、85万人の卒業生のうち、わずか37万人しかいないということになる。率として44%。数字を見ながら、とても日本の国の現実とは思えず、どこか、国内に産業のない欧州かアジアの国の不幸な話ではないかと蒼然としてしまう。この数字には高校を卒業して社会に出るボリュームが入っていない。大卒より就職が難しい高卒組を含めると、不安定層(無職・非正規)の実数はもっと大きくなるだろう。

また、企業をどんどん海外に追い出し、国内の所得と消費が落ち込んで景気が悪化している現状では、就職者数はさらに減り、不安定層が拡大する趨勢にある。そして、不安定層の中に入った若者は、10年、20年と経つうちに40代となり、結婚もできず、貯金もなく、年金も払えないまま、孤独に老後を迎えるという人生になる。過半数がその危機の中にあるのだ。彼らは税金(所得税)もまともに払えないし、場合によっては生活保護が必要となる。国の税収は激減し、健康保険も厚生年金も破綻する。このような破滅の状況に対して、あまりに言論や報道の危機感が薄い。マスコミが報道しないのなら、ネットで論議を起こせばいいのだが、なぜか議論が起きない。マスコミが関心が薄いのではなく、どうやら国民全体の関心が薄いのだ。6年前、NHKが『ワーキングプア』の放送をした頃はそうではなかった。NHKの番組は感動的で、視聴者の心を打ったし、ネットの中では大きな反響が広がったものだ。NHKが取り上げ、派遣問題や貧困問題に注目が集まり、どうやら新自由主義は悪だという考えが社会の常識となり、竹中平蔵や奥谷禮子を批判する感性が一般的になったはずなのだが、現在は当時よりずっと状況は悪化して、新自由主義の支配が強まっているのに、それに対するラディカルな反発や抗議がない。逆に、ネットの中を見ると、就活苦で自殺した若者に対して、「クズは死ね」などと罵倒が浴びせられている。

どうしてこうなるのだろうかと思う。こういう問題を批判的に取り上げ、告発し、共感の広がりを期待しても、社会一般の倫理感覚が麻痺してしまっていて、この状況を悪として捉えず、仕方ないと受け止めているのである。かつてのように可視化されない。可視化の水準と圧力が低い。受け止めに痛切さがない。ブログを書く者もそうだが、本を書いて出す者も、まずはどれだけ市場で売れるかという点がポイントになる。今は、原発の問題か、橋下徹の問題でないと世間の関心を集められない。雇用やブラック企業の問題は、社会悪を告発し弾劾するという視角と論調では注目されず、逆に、そんな中でどうすればサバイバルできるかという指南書が、憐れな大学生やその親の市場に売れるという構図になっている。肯定されているのだ。この状況を肯定し、必然性を合理化し、さらに脅し上げ、文句を言わずにサバイバルしろと言う議論が商品として売れる。日本人は新自由主義に飼い馴らされてしまった。マルクスは、「その時代の支配的思想は、常に支配階級の思想である」と言ったが、それが窮極のところまで来た感がして、どうやって抵抗の論を起こせばいいのか見当がつかない。自殺する大学生に対して、掲示板に「クズは死ね」と書き込む方が多数派なのであり、そうした連中が反論や糾弾を受けることがないのだ。黙って見過ごされている。そして、マルクスを引用しながら問題を告発しようとする私などに対しては、「古い左翼」のレッテル貼りで攻撃が加えられる始末となる。

このところの言論状況を見ていて、特に若者の雇用関連のニュースを聞くたびに感じるのは、人々が経済や生活の問題に無関心になっていることと、原発や橋下徹の問題のみに異常に惹き寄せられていることだ。ある意味で、依存症的な人とニュースの関係になっている。原発関連は定番で第1面。この情報的事実は、実は、自分にとって最も身近で重要な問題がどうにもならず、破滅しかないために、敢えて正面から考えるのを避けて目を背け、代わりに別のものに興味を集中させて気を紛らわせているような心理現象のように察せられる。原発の問題も重要だが、雇用の問題は横に置いていいという問題ではないはずだ。だが、若者の雇用の問題は真面目に論じられることはなく、大越健介が欺瞞的に一言で片づける「厳しい雇用情勢」で流され、常態化され、古市憲寿と誰かが浮薄に若者論を興じて遊ぶネタの一部になっている。フランス大統領選やスペインの大規模デモでは、こうした就職難に喘ぐ若者が先頭に立って政治を変える行動に出た。エジプト革命も若者の反乱だったが、その動機は単に自由と民主主義を求めたのではなく、それ以上に雇用と生活の問題が大きかった。経済政策を変えるため、利権を独占して経済を疲弊させているムバラクの権力を倒す決死の行動だった。日本でこうした動きは起こらないのだろうか。古市憲寿とジャレ合い、湯浅誠を担ぎながら、「現代思想」の言辞を弄して悦に入っているシニカルな脱構築系の目からは、フランスやギリシャの若者も「古い左翼」なのだろうか。

とここまで書いて、自殺した元従業員の26歳の女性が働いていた和民の久里浜店の画像を検索すると、ネットでバイトを募集する広告サイトに掲載した店の写真があり、4人の男女がにこやかな笑顔でピースサインをしている絵に出くわした。「経験必要なし」、「キッチンなら簡単な盛り付けから、できることから徐々にお任せしていきます」、「10~20代中心なので友達も増えちゃう♪」、「働いたら楽しいので長く続ける人も多いです」などとコピーがある。自殺した女性は、入社配属と同時に不慣れな刺身の調理と盛り付けを任された。マニュアルで決められた制限時間内に客に出さなければならない、この刺身の盛り付けが、店の業務の中で最も重労働で、「これができるようになれば他もこなせる」とワタミ側に言われたのだが、そこからうまく行かずに追い詰められて精神を病んで行く。会社側のサポートもなく、人間関係でも悩み、労災審議官の判定によれば、入社して1か月後には「適応障害」の症状を発していた。このバイト募集のページに書いている「簡単な盛り付け」とは、きっと、彼女を死に追い詰めた激務のことであり、この作業を最初に押しつけて、耐えきれずに数か月で辞めていく構図なのだ。そして、あの男の「熱意」だの「情熱」だのをオウム真理教的に刷り込んで、「やればできる」と若者の心をマインドコントロールするのだろう。この広告の被写体となった4人の若者は、この店で女性が自殺した事実を知っているのだろうか。

それを承知の上で、ワタミの管理者に言われ、作り笑いの元気な顔を撮らせ、バイト広告のモデルになったのだろうか。久里浜店は午前3時までなのだが、当然、この時間は電車が動いておらず、例えば都内から電車で通勤している者は始発が動くまで店で仕事をやらされる。会社はそれを計算済みで、こんな具合に残業100時間になる労務システムなのだ。月100時間残業を強制して、1人の若者を死に追いやり、社会問題になって非難を浴びながら、その同じ店のバイト広告で、「働いたら楽しいので長く続ける人も多いです」とは、まさにブラックジョークではないか。


by thessalonike5 | 2012-05-11 23:30 | Trackback | Comments(9)
トラックバックURL : http://critic5.exblog.jp/tb/18274408
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
Commented by Areopagitica at 2012-05-11 16:19 x
 私も渡邊美樹の人倫に悖るツイートには憤激しました。監督官はほぼ認定していたようですが、時間が掛かりすぎだ、というのが率直な感想です。この件、(当初認定していなかった)横須賀労基署も何をしているんだと思っていたら、厚労省の定める「心理的負荷評価表」の評価が、彼女の勤務実態と合致していなかったようですね。この評価表とやら、本年1月に改正したのですが、厚労官僚のやる気の無さがヒシヒシと伝わってきます。以前、貴殿のツイートにあったように、国会で取り上げて痛撃を喰らわす気配も無い。
 さて、この新自由主義者が謳歌する昨今、こういう末端の若者への誹謗はあっても、この社会を覆う歪で偏った資本構造と、為政者・権力者・経営者連中については、「まあ、こんな時代だから仕方ないよね」と免責される不可思議が罷り通っております。記事中にもある通り、書店に赴いてもフザケきったマニュアル本かぬるま湯に浸かった反資本主義奨励の新書だらけで、マルクスやらケインズやらセンやらスティグリッツやら水野和夫の本は脇に追いやられ、人々が問題の本質に触れる可能性は殆ど皆無です。(続く)
Commented by Areopagitica at 2012-05-11 16:20 x
(続き)
 論壇がこの調子では先日(5/8~9)、オランドとツィプラスの記事にもあったように、日本でジェネラルで真面目な経済左派が世に出て来る素地が醸成されません。竹中平蔵を批判しただけで、「時代の所為にするな」と言われる有様。貸切バスの事故だって規制緩和と過当競争の悲惨な結果でしょう。経済は誰が決めるのか、それは政治ですよ。政治にすら漕ぎ着けないこの日本のひ弱さは何だ、と嘆息します。
Commented by ろうのう at 2012-05-11 20:07 x
1%対99%と言う対立軸はつくづく的確な対立軸設定だと思う 国民の不安に付け込んで新たにいびつな対立軸を作られ続けることが恐ろしい
Commented by カプリコン at 2012-05-11 21:35 x
 岩手は、公務員にでもならなければ働く場所がないので、公務員試験も教員採用試験も私が採用された20年以上前の時期に比べ狭き門になっています。市町村の合併や学校の統廃合も採用減の大きな要因となっています。
 岩手の学校は、そのため40代以上の教員が過半数を占め20代・30代の教員が少ないというアンバランスな状況になっています。そして、以前と変わってきたのが、教員採用試験を目指してる若い方を都合のように非常勤として使い回すようになってきたということです。人件費の削減のためとしか思えないような人の使い方です。つまり、小学校の例ですが、非常勤や講師(つまり,非正規職員)が2〜3名は必ずいるということです。
 ひどいところだと,非常勤という雇用の約束なのに時間外労働せざるおえない状況に追い込まれている方もいるようです。
 私も,本採用になる前に講師として勤務した経験があるので、安定しない立場にある若者の気持ちは理解できます。しかし、今は昔よりも明らかに公務員だけでなく雇用の状況は最悪です。地方の私立大学、しかもつぶしのきかない文学部の私でも3社からの内定をもらうことができました。
 なんとか、世の中、変えたいですよね。
Commented by liberalist at 2012-05-11 23:10 x
20年デフレの惨劇、ここに極まりという感じですね。
20年近くもデフレを続けていれば、こうなるのが当然です。むしろ、よく20年も「持った」方だと思いますよ。さすがに、もう社会が若年層の雇用を中心にデフレには耐えられなくなっているのでしょう。
左も右も中道もノンポリも、デフレを甘く見過ぎだと思います。これを放置している政治家や日銀は大罪ですよね。国民がどんどん貧しくなっているのを見殺しにしているわけですから。

GDPが増えない、経済成長しない(=デフレ)社会とは、これ程までに恐ろしい社会であるということです。
GDPには三面等価の原則というのがあり、生産、支出、分配はイコールになるというものです。つまり、生産が伸びなければ、分配面たる我々の所得も減っていく、雇用も非正規化、あるいは失業していくということを表しているのです。
良くもう日本は経済成長しない!とか、経済成長しなくて良い!なんて言えるなと思ってしまいます。経済成長しないとは、すなわち雇用が失われ、国民が貧窮化していく、社会が蝕まわれていく恐ろしい病魔なのです。

保守系の会合になりますが、デフレの恐ろしさを説いだ中野剛志氏の動画をご紹介しておきます。
Commented by ろうのう at 2012-05-12 09:06 x
liberalistさんへ 創生日本の会合の動画のことですか 創生日本は安倍系なので無視したほうがいいと思いますよ
Commented by liberalist at 2012-05-12 11:26 x
>カプリコンさん
それもまたデフレの弊害でしょうね。当たり前ですけど、デフレは地方財政も悪化させるのです。国民所得が減れば、かかる所得税収も減る。所得が減れば消費も減り、企業の利益も減る。結果、法人税収も減る。税収が減れば、国や地方の財政も悪化し、歳出カットとなる。こと地方には通貨発行権がないので、金融政策で持って、財政を支えることは出来ませんからね。
国の場合は、国債を発行して、日銀に買わせれば良いだけの話なのですが。(なのに、それをやらない、政治家と日銀は大罪なのです。)

>ろうのうさん
経済政策、ことデフレに関しては、左も右も関係無いと思うので紹介させて頂きました。例えば、フランスなら、オランドとルペンの経済政策に関しては、そこまで差異が無いのと同じです。内需拡大、国民生活重視の経済政策では変わらないと。
発表した場はともかく、発表の内容自体は至極真っ当なことを言っていると思い、紹介させて頂きました。
Commented by 裕次郎 at 2012-05-12 11:38 x
最近、「ワタミ」の件で市の健康福祉課・要介護担当と話」をした。「ワタミ」が名古屋市の要介護者向け宅配弁当に参入してきた。
「ワタミ」は過去4回も食中毒事件を起こしている業者で、認定審査を厳しくやるべきだという事と、大手業者が地場業者の圧迫をする事は好ましくないと言う事を話した。
行政は認定時はそれなりの審査はやるが、後のフォローをやらない。今後は議員を使ってこの問題提起をして行こうと思っています。
寝たきりの要介護者などは配達された弁当以外は食べられない弱者であり、行政は事前も事後も最大の配慮をすべきだと考えます。
この種の弁当は市販の物に比べると、ボリュウムもないし値段も高い、大手業者がその気になればボロ儲け必至です。
介護の仕事は市場主義ではなく、社会貢献の意識の高い企業がやるべきものだが、金 金 金 ホントに日本は戦後はアメリカに、その後は新自由主義に占領されて、日本独自の長所を無くした・・・泣けてくる。
Commented by ろうのう at 2012-05-12 12:24 x
(づづき)たしかあなた前に頻繁に三橋氏を推してたよね この人物が支離滅裂なのは明白なのに 奇怪なコメント控えて下さい
名前 :
URL :
※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。
削除用パスワード 
昔のIndexに戻る 両極が台頭して中道が陥没する欧... >>