政府が開いた夏の電力需給に関する検証委員会で、8月に関西、北海道、九州の3電力管内が電力不足に陥るという予測が示された。原発が再稼働せず2010年並みの猛暑となることを想定した数字で、関西電力では15・7%もの不足となる。原発の再稼働が見通せぬ状況の中でどう対処していくか。対策は待ったなしだ。
検証委は、電力会社が示した電力需給見通しが適正なのか点検するために有識者で構成された。外部の目で新たな電力を掘り起こすことにも期待が懸かったが、供給増に向けた提案は電力会社側の反論に遭い、有効策は示せなかった。その結果、関電のほかに北海道が3・1%、九州が3・7%不足するなど大筋で変わらぬ結論となった。
一方で、大飯原発3、4号機(福井県)が再稼働した場合は関電管内の電力不足は0・9%に縮小するという数字が政府から示された。だが関電は4日、再稼働しても安定供給は難しいと大阪府などに説明したばかりだ。見通しが大きく変わった理由は明確でない。これでは情報の信頼度に疑問を持たざるを得ない。
もともと国民には、電力会社が電力の需給逼迫(ひっぱく)や原発の必要性を過剰に強調しているという不信感がある。政府が検証委を設けたのも、電力不足というお墨付きを得て大飯原発再稼働につなげるのが狙いではないかとの見方も強い。
大飯原発の地元などからも、再稼働は単なる電力需給の問題ではないはずだとの声が上がっている。福島第1原発事故を踏まえて徹底した安全対策をした上で長期的なエネルギー政策の中に位置付けるのが筋だ。再稼働とは切り離して当面の電力不足回避に取り組むことが必要ではないか。
関電は具体的な節電策の最終調整に入っており、企業に対しては緊急時に送電を抑制する「需給調整契約」の普及拡大を目指し、節電分を買い取る「ネガワット取引」を検討している。家庭では昼間の電気料金を高くし夜間を引き下げる新料金体系の実施などが挙がっている。昨年の夏と同様、国民一人一人が節電意識を高めて暮らしを見直すことも大切だ。
昨年は東京電力管内などで、強制力を伴う電力使用制限令が大口需要家向けに発動され、計画停電も行われた。国民生活や産業への悪影響を最小限に抑え込むよう、政府はあらゆる策を動員して厳しい夏を乗り切るよう主導しなければならない。