偽物を追え〜アジア知財最前線

【フィリピン】知財侵害、監視国に据え置き:取締強化も「法整備が不十分」

2011/5/5

米通商代表部(USTR)は、このほど発表した米通商法スペシャル301条(知的財産権の保護条項)に基づく年次報告書で、フィリピンを引き続き知的財産権の保護が不十分な「一般監視国」のリストに据え置くと明らかにした。フィリピン当局が、模倣品および海賊版製品の押収など知財権の保護強化に注力する一方で、USTRは、法的措置を強化する必要があると指摘している。

USTRは、フィリピン当局が昨年、模倣品や海賊版製品の押収に注力するなど、知的財産権保護に向けた活動を強化したことを評価。しかし一方で、知財権保護のための法律が機能していないことや、依然として模倣品および海賊版製品の販売が横行していることなどを理由に、フィリピンを引き続き一般監視国のリストに据え置くことを決定した。USTRは、過去10年間にフィリピンで発生した知財権に関する犯罪のうち、有罪判決を受けたのはわずかであると指摘した上で、知財権保護に向けた法律を整備するよう当局に勧告している。

4日付各紙によると、フィリピンは、2006年から一般監視国に指定されており、今回で6年連続の指定となる。05年までは、重点的な改善が必要とされる「優先監視国」に指定されていた。

USTRはこれまでに、「世界で最も模倣品の販売が横行している市場」として、マニラ市キアポや同市ビノンドにある商業施設「168モール(一路發商場)」、サンフアン市の「グリーンヒルズ」、マカティ市の「マカティ・シネマ・スクエア」を名指し。これらの市場で衣料や靴、腕時計、ハンドバッグなど、有名ブランドの模倣品が出回っていると指摘している。

今回発表された年次報告書をまとめるに当たり、USTRは、米国と通商関係のある77カ国・地域を調査。うち、フィリピンを含む42カ国・地域を知的財産権の保護が不十分として、監視国に指定した。優先監視国には、◇中国◇タイ◇インドネシア◇インド◇パキスタン◇イスラエル◇ロシア◇カナダ◇アルゼンチン◇チリ◇ベネズエラ◇アルジェリア――の12カ国を指定。一般監視国には、フィリピンのほか、◇ベトナム◇ウズベキスタン◇ウクライナ◇スペイン◇トルコ◇メキシコ――などを指定した。

■昨年は53億ペソ相当押収

一方、フィリピン知的財産権局(IPフィリピン)のリカルド・ブランカフロア局長は、今回の発表でフィリピンが優先監視国に含まれなかった点を強調し、「フィリピンが監視国から完全に除外される日も近い」と自信を示した。

IPフィリピンは昨年、政府機関と連携し、知的財産権保護に向けた活動を強化。この一環として、国家知的財産権委員会(NCIPR)は、昨年通年で509万1,704点、額にして約53億ペソ(約100億円)相当の模倣品および海賊版製品を押収した。

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