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Apes! Not Monkeys!  本館

2012-05-06

[]「親学」的なものは右派の世界観の現れ

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大阪市の「家庭教育支援条例」案はその背景にある疑似科学的な主張が問題視されたため、そのままの形で成立することはないでしょう。しかしながら、これは「維新の市議団が運悪く疑似科学的な主張にひっかかってしまった」ために起きた問題ではありません。「親学」が右派の世界観、人間観によくマッチする主張だからこそ、その科学的な妥当性(のなさ)なんて気にせずに飛びついたわけです。当ブログの読者の方は、産經新聞が以前に(04年と06年)インテリジェント・デザイン説への提灯記事を載せたことをご記憶だと思いますが、これも統一教会への義理立て(だけ)というわけではなく、進化論=唯物論=道徳教育に悪い、という右派の発想にID説がマッチするからでもあります。科学が右派の世界観、人間観を支持してくれない領域においては、右派はどれだけ批判されても疑似科学に支持を求め続けるでしょう(南京事件否定論などもその例)。

ところで、かつての社会生物学論争を想起すれば明らかなように、一般に「氏か育ちか nature or nurture」問題においては右派が生得性の強調を好み、左派は環境の強調を好む傾向があります。教育という文脈では三浦朱門の「出来ん者は出来んままで結構」発言や江崎玲於奈の「いずれは就学時に遺伝子検査を行い……」発言(とそれに対する反響)などが例証となるでしょう。生得性の強調は右派が持ちがちな本質主義的民族観にもよくマッチしますし。「政治的DNA」とか言ってた右派政治家もいましたよね。

しかし右派が、発達障害については、「生得的なもの」とする定説ではなく「育て方のせい」とする説に飛びつこうとしているのはなぜか? といえば、この場合「育ち」「環境」といってもひたすら親のことだけが考えられており、左派が強調したがるような意味での「環境」が重視されているわけではなく、その限りで右派の世界観とは整合的なのです。

[]あまりにも予想通りの反応で笑える

ぎんぎんくんなんて相手にしても傍目にはただのイジメに見えるのが関の山なので普段はスルーしてるわけですが、今回はご同類が数名現れたので。

http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/apesnotmonkeys/20120506/p1

gingin1234 社会, 教育

言いたいのは、結局「左派>右派」ってことだよな。左派の方が、右派よりはマシと言いたいだけ。 2012/05/06

m-matsuoka 社会, 教育

左派とやらの主張を出さずにウホウホじゃなかった右派右派と言っているのは、左派の教育がいかに劣悪かという証拠のようですね。id:charleyMan←日本の左翼が北朝鮮や中国を賞賛していたのを忘れては駄目。 2012/05/06

二人とも「どんどん delusional になる日本の右派」の実例である、というのは後述するように偶然ではありません。もう一つ。

先のエントリのどこをどう読んでも、百万遍読み直してみたとしても、「左派が疑似科学にはまることはない」なんてことは愚か、「左派の方が疑似科学にはまりにくい」ということすら書かれていないわけです。なぜか? そりゃもちろん、私がそんなことは書いていないからです。

当ブログを永らくご覧いただいている方ならご承知のように、私は左派には左派で疑似科学や陰謀説にはまるルートがあることを何度か指摘してきましたし、実際にきくちゆみ氏が『SPA!』の9.11陰謀説特集に寄稿したことをブログでとりあげたこともあります。*1ではなぜ右派の主張する疑似科学や歴史修正主義をもっぱらとりあげるのかと言えば、もちろん私が左派であることを自認しているからでもありますが、右派の疑似科学や歴史修正主義の方が桁外れに権力に近い(なにしろ、「親学」と南京事件否定論双方の支持者には、元首相と現職の都知事までいる)から、という決定的な理由があるからです。これに加えて、産經新聞・『正論』・『WiLL』のように、学問的な妥当性などこれっぽっちも気にすることなくプロパガンダにいそしむ右派メディアに影響力で匹敵する delusional な左派メディアなど、幸か不幸か存在していないからでもあります。

さて、まったく書かれていないことを無理矢理読みとってしまった人物が少なくとも3人現れたというのは、彼らがどれほど深く「敵か、味方か」図式に捉われているかを現わしています。それゆえに彼らの世界認識は一層 delusional なものになってしまうわけです。例えばこれ。

村山談話支持&強制連行あった派」というのは第90代内閣総理大臣安倍晋三センセイについても言えることなのであります。「村山談話支持&強制連行あった派」くらいのことで「左翼のお仲間」って、左翼なめんなよ! であります。ついでなので「事業相続の原則禁止や相続税100%」にもコメントしておくと、そもそも彼らが本気でそんなこと主張するつもりかどうかという点をおくとしても、この主張の背景にある理念は「平等」ではなく「一生涯使い切り型人生モデル」(その目指すところは消費喚起プラス社会保障の切り捨て)なんだから、左翼の主張とはまったく関係がありません。


ああ、そうそう。id:m-matsuoka は早く「法が無かった当時のシナに、法秩序を作ろうと苦心したのが日本軍」の資料的根拠を示してくださいね。cf., http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20120128/p1

*1:それどころか、先のエントリでは「社会生物学論争」という、左派の議論にもそれなりの理があったとはいえ左派の側に過剰反応があったことは否めない事例にばっちり言及しているわけです。この註、追記。