埼玉県坂戸市立片柳小学校長の大附邦夫容疑者(58)=ときがわ町大附=が道交法違反(酒酔い運転)容疑で現行犯逮捕された事件は、教育関係者や保護者に大きなショックを与えた。昨年末から飲酒運転による処分が相次ぎ、対策に力を入れていた県教育局は管理職の不祥事に、改めて「指導を徹底する」と表明。大附容疑者が勤める小学校では、急きょ保護者会が開かれるなど対応に追われた。
西入間署によると、大附容疑者は9日夜、越生町成瀬の県道を酒に酔った状態で、乗用車を運転した疑いがある。現場はゆるやかなカーブで、大附容疑者は道路脇の縁石にぶつかったが、けがはなかった。車は走れないほど壊れたという。大附容疑者は「学校から帰宅後、日本酒と焼酎を飲んだ。買い物にコンビニに行くため車で出かけた」と供述しているという。
坂戸市教委によると、大附容疑者は今年4月に片柳小に着任したばかりという。
◆相次ぐ教員の懲戒処分「より現実的な策に」
県教育局小中学校人事課によると、飲酒運転の懲戒処分を厳罰化した2006年12月1日以降、懲戒処分になった県内公立小中学校教職員(さいたま市を除く)は、免職4人、停職5人の計9人。管理職はいない。
教育局は飲酒の機会が増える時期に「飲んだら乗らない」「深酒には注意する」など、通知や会議の場で注意喚起してきた。だが昨年12月〜今年2月、酒気帯び運転での懲戒処分が3件続き、防止策を強化。「会議の説明だけでは聞き流される」と、1月には各校の倫理確立委員会で、飲酒運転に特化した教職員の研修会の実施を通知し、2月下旬までに報告書の提出を求めた。ほぼ全校から提出され、大附容疑者が校長を務めていた前任校でも、飲酒運転防止のテーマに講義や討論形式の研修会を開いたという。
また、教職員が集まる会議の場で「飲酒量の多い職員に飲酒時間や量を聞き取り個別指導」「アルコールセンサーを学校で購入」といった報告書の先進事例を紹介してきた。
今月1日に開かれた全県の公立小中学校長会議で、教育長や課長ら3人が飲酒運転に触れ、「教職員だけでなく管理職も気をつけてほしい」と注意喚起したばかりだったという。同課は「力を入れていただけに、管理者の逮捕はとんでもない。飲酒運転は心持ちで防げるはず。話をしてだめならより実践的な防止策を検討したい」とショックを隠しきれない様子だった。
◆保護者会で市教委が謝罪
大附容疑者が勤務する坂戸市立片柳小学校(児童236人)で10日夜、臨時保護者会が開かれた。市教委学校教育課によると、森沢清教育部長が集まった保護者56人に「学校を監督する側として、ご迷惑をおかけして申し訳ない。職員の事故の防止を校長会を通じて指導してきたが、伝わらず遺憾だ」と謝罪。「子どもの心のケアのため、学校にケアを担当する指導員を配置することを検討したい」と説明した。
保護者からは「今回の事実を伝えるのは誰がやるのか。親か、学校か」などと質問があり、森沢部長は「1年から6年の発達段階に応じて、言葉を選んで各担任が伝える」と答えた。
保護者会終了後、森沢部長は「今回は指導する立場の校長が(酒酔い運転を)してしまい、申し開きがたたない」と話した。
市教委は11日午前9時半から市立教育センターに市内の小中学校の校長を集め、改めて法令順守を指導することにしている。