病院側の管理部は「3社について事実はありません。ただ、(ブログが指摘する)事実は一部マスコミによってありました」という。センター側は、救命外来の玄関にいた記者に良識ある配慮を求めるとともに、待合室に記者がいたため患者のプライバシーと医療行為の妨げになるため退去を依頼したが、10~15分後に再び記者が待合室にいたため、再び退去してもらったという。これらの記者の動きがブログでの批判につながった可能性がある。
■一般人のブログでも、間違いには謝罪と訂正を
取材現場には多数の記者が駆けつける。新聞だけでなく、テレビや通信社、場合によっては雑誌社、フリーランスもいる。病院の敷地は多くの場合広く、入り口も多数あるためにセンター側でも状況が把握できるわけでもない。筆者も現地を見ておらず、敷地や建物の位置関係は分からない。筆者による現時点での取材では、ブログによって名指しされた社による行為はなかったということになる。センターによるブログの内容は「誤報」といえるかもしれない。
ブログでは翌日に訂正したものの、霊安室前の無断撮影や行き過ぎた取材があったことは再度、書き込んでいる。しかし、具体的な社名が出てきた背景や理由については説明していない。読者からすれば、「個人名を出しても良い」という強い書き込みがあったからこそ、ブログの記述が確からしさを高め、インパクトを与えた。
病院側の管理部もブログが指摘する事実は一部のマスメディアによってあったと説明しているが、微妙にトーンが異なる。ブログでは敷地内の取材も行き過ぎた取材に含まれているが、管理部側は「公共施設でもあり建物内はできても、敷地から立ち退かせることまでは難しいし、写真の撮影禁止も言っていない」とする。
病院のブログとはいえ、ソーシャルメディアの時代には、一般に大きな影響力を持つ。新聞社はそれぞれ「ブログを見た読者の方から、弊社読者応答部門に「新聞で謝罪しろ」などといった批判が多数届いたため」(朝日新聞)、「ブログを見たとみられる人から大阪本社に電話、メールで問い合わせが入ったことにより」(毎日新聞)この事態を知ることになった。
パソコンやスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)などがあれば、いまでは誰もが情報発信できる。マスメディアだけが発信者ではないことを、新聞社側は身を持って知ることになった。マスメディアはもちろん、一般のブログの書き手でも、間違った内容を掲載した場合、速やかに謝罪と訂正を行うことが発信する情報の信頼につながっていくはずだ。
藤代裕之(ふじしろ・ひろゆき)
ジャーナリスト・ブロガー。1973年徳島県生まれ、立教大学21世紀社会デザイン研究科修了。徳島新聞記者などを経て、ネット企業で新サービス立ち上げや研究開発支援を行う。学習院大学非常勤講師。2004年からブログ「ガ島通信」(http://d.hatena.ne.jp/gatonews/)を執筆、日本のアルファブロガーの1人として知られる。
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