梅沢和木(ウメザワ カズキ)
アーティスト
1985年、埼玉生まれ、埼玉在住
2003年、大宮光陵高等学校美術科卒業制作展出品、埼玉県立近代美術館
2004年、武蔵野美術大学映像学科入学
2005年、「全国絵画公募展IZUBI」入賞・出展
2006年、映像学科三年展「異形の。 odd-looking」出展
2007年、五人展「黒い」出展、DESIGN FESTA GALLERY WEST
「ASK?映像祭2007」入選・出展、art space kimura
「ASIAGRAPH2007」一般公募CG部門入選・出展、秋葉原UDX
2008年、「saisei」出展、BankART Studio NYK
武蔵野美術大学卒業作品展
GEISAI#11出展、東京ビッグサイト
横浜アート&ホームコレクション展出品、art project frantic
2009年、「カオスラウンジ」出展、MOGRAG GARAGE
101 TOKYO Contemporary Art Fair 2009出品、art project frantic、秋葉原UDX
「Identity」出展、AISHO MIURA ARTS
“100 degrees Fahrenheit vol.1”出展、CASHI
「トーキョーワンダウォール2009」トーキョーワンダウォール賞受賞、出展
「ZINE’S MATE」出品、parapera vacant
「解放区エリア10-10」出展、AISHO MIURA ARTS
「解体されるキャラ」出展、apmg
「エターナルフォース画像コア」個展、frantic gallery
リンク
「梅ラボ」(ホームページ)
「梅ラボmemo?」(ブログ)
梅ラボ (umelabo) on Twitter
「梅 THE 和」(タンブラー)
原田裕規(ハラダ ユウキ)
武蔵野美術大学造形学部芸術文化学科在籍
1989年、山口生まれ、東京在住
2006年、「The10thFlag-ArtExhibition」受賞・出品
「Indiket2006」Art Space Hap賞受賞・出品
「Improvisation Workshop 絵と音sessionその2」参加、yukotopia
Namiki Street Painting、さわぐるみギャラリー
「Hibino DNA AND...16 art bank project」出品
2007年、「実はみんな空を飛びたかった(個展)」、ART SPACE HAP
並木緑化計画、さわぐるみギャラリー
「Yes,Yes,Yes,(個展)」、新地ギャラリー
「ART PORTFORIO in ARTZONE 2007」出品、ARTZONE
DONATION OF PANDA(灘幼稚園)
2008年、「学校へ行こう!MAX、絵うまい系学生選手権vol.1」出演
「岡本太郎『明日の神話』広島誘致ラストスパートアクション」参加
「学校へ行こう!MAX、絵うまい系学生選手権vol.2」出演
基町高校創造表現コース卒業作品展出品
「ART PORTFORIO in ARTZONE 2008」出品、ARTZONE
2009年、武蔵野美術大学造形学部芸術文化学科入学
「レビューハウス☆ドリームナイト2」出品
リンク
「原田裕規 / Yuki HARADA」(ブログ)
原田裕規 (haradayuki) on Twitter
原田裕規のtumblr(タンブラー)
「ラヴォス」(c) Kazuki Umezawa 2009
「ジェノサイドの筆跡」(c) Kazuki Umezawa 2009
原田裕規:梅沢さんの作品は「キャラ」という重要な特徴を持っています。僕は昨今の「キャラ美術」を分類するならば、奈良美智さんに始まり現在でも至る所で確認ができる「自己投影型・肖像タイプ」のそれと、梅沢さんが含まれる「俯瞰型・パノラマタイプ」のそれがあると考えているわけですが、梅沢さん自身はキャラを扱った絵画についてどのようにお考えですか?
梅沢和木:とりあえず原田君が言ったみたいに自己投影型のキャラと、わりと俯瞰した感じの表現とがあって、村上隆は俯瞰で奈良美智は自己投影型といったふうに暫定的に分けられると思うんだけど、そういうのは別にしても俺はけっきょく自己投影的には出来ないのだなあという諦めのような気持ちがある。その気持ちが、同じキャラクターをスキャンして大きくしたような絵に色を塗るなどの行為をさせているのかもしれない。
例えばここに置いてある紙を見てほしいんだけど、スカイプとか電話とかをしながらこれに何も考えずに描いて、ほっとくと自然にこうなる*1。自分の自己投影的なキャラというか、輪郭だけみたいな絵はほんとこんな風に勝手に増殖していく。そういう落書きは日々、どんどん感覚的に量産されている。
これはこれで面白いと思うんだけど、俯瞰してデータベースをフォトショップで反映してトレースして云々の方が自分の場合は成立しやすいし扱いやすいのかなあと思って、客観的に考えると自己投影的な描き方もあるしパノラマ的に表現もできるけど、表現方法としてシビアに選んでやる際にパノラマ型の方が作品として強いものが出てくるなと思っている。自己投影型でやっても突き詰め切れなくて勝てないなという弱気な気持ちもある。。
*1:
(c) Kazuki Umezawa 2009
(c) Kazuki Umezawa 2009
原田:そうですよね。自己投影型だとメンヘラアートになっちゃうというか……?
梅沢:そうそう。競争率高いしなあ。あとは何だろうな。そういう自分だけのキャラっていうのはやはり自分だけで愛したいという気持ちもある。好きなキャラクターを描いてそれを高めるような感じ。
俺はそれぐらいでやる方が丁度いいんだよね。だから(個展の*2)DMに好きなキャラクターを使ってマンガを描いたけど、キャラクターとして単純に素晴らしく、描くだけで癒されていく(笑)。
二次元というのはどうしても手に入らなくなるものなんだよね。だから暫定的に(パソコンの中に)保存するという形であくまでいるんだけど……。
梅沢さんの部屋の壁(c) Kazuki Umezawa 2009
原田:梅沢さんの活動は伝統的な美術の文脈では「オタクの」「ネットの」などの言葉と共に、つまり「ネット美術」カテゴリに収められた上で消費されているように思うのですが、実は僕自身梅沢さんの作品は伝統的な美術の文脈の上でこそ語ることが出来ると考えています。これについてはおそらく「今・日本の」批評の問題も関係してくることでしょうが、できれば、それと関連させてこれからの梅沢さんの活動について伺っても良いですか?
梅沢:これからどうやっていくかっていうのは非常に難しいところだけど、とりあえず既存のシステムはあまりよくないというのはあるじゃないですか。それはギャラリーにしろ美大にしろアートフェアにしろある。
その既存のよくないシステムをいかに自分の表現を使って崩していけるか。つまり重要なのは新しいシステムだろうね。
新しいシステムの話は東浩紀さんと被ってくるけど*3やっぱりギャラリーとかには普通は普段行かないじゃないですか。でもアートというものには常識的に考えて「誰でも接せられる何か素晴らしいもの」みたいなお題目がある。
でも、実際のアートをやっているギャラリーとかは美術好きな人しか行かないみたいな状況が現に存在することこそが難しい。そこではよく分からないものが展示されている。
それに比べてPixiv*4とかはまだ近いと思う。ただPixivにはオタクしかいない。でもネットで、例えばTwitter*5というのはアートの世界に比べものにならないぐらい早いし効率的だと思う。ニコニコ動画*6でのタグ付けしかりランキングしかり。その話は美術の世界でもタグやランキングを付ければいいのかという単純な問題ではなく、そういったニコニコのタグなどの要素を取り入れた作品を投入することで気付かせたり(旧態依然のシステムを)壊したりすることができるかもしれないという……それは単純に自分の作品で美術の世界を良くするという作家なら多くの人が持っている欲求だと思うんだけど、その欲求をある種確信犯的に自分はそちらより優れたシステムを元に作品を作っているし愛も注いでやっていると示す。
あとはどうやって投入していくかだろうね。明らかに優れてないシステムが依然古い体制に依存されながらだらだら使用されているという意味では政治も美術の世界も一緒で、それを再構築するためのシステムのヒントがTwitterなりタグなりにある。ネットをだらだらやっているオタクのほうがより良いシステムを無自覚に構築しているのではないか。
そうなってくるとどのような既存の良くないシステムの隙間に入れていくかという抽象的なやり方の話になるだろう。そのためにいま現代美術的なギャラリーのいくつかで活動していて、やっぱり良い物を作っていればアートフェアなどのお誘いもあったりするので、その中で少しずつ、より良いシステムへ近づいていく意思を感じさせるような作品を見せていけばいい。
ただ、システムを構築するのは僕ではないので。自分は作品を作るだけだから既存のより良い面白いシステムによって作られた作品、梅ラボでも藤城嘘君*7でも誰でもいいんだけど、それがギャラリーやらアートフェアやら、ちょっとやはり堅いイメージがある既存のシステムに入って行ってそれを新たな要素が介入されていることに気付いた批評家なり誰かが新たなシステムを構築してくれるのが理想的かな。
原田:システムを構築するのはアーティストではないという話まできた段階で、批評の登場というのは十分にあり得ると思うんですよね。梅沢さんの持っているそういう意識も僕は非常に正当なものだと思っていて、それは(美術コースの)高校3年間を思い出すとキャラクターの絵を描きたいけれど先生に怒られるから描けない人が多くいたことや、(自分が今教えている)美術予備校でもそういう人はいることや、(今在籍している)美大でもやっぱり同じなんですね。
ただ、奈良美智さんぐらいのキャラなら描いても怒られないからここまでは描けるけど、これ以上露骨には描けないな、とか。目が大きな美少女を描いたらみんなに引かれるかなみたいな意識を持っている人は多いはずなんですよ。
だからその「おい、お前いけよ。おい、お前いけよ」みたいな押し合いの状況の中でポッと出てきた人が梅沢さんだとも言えると思います。それを見てみんなが「あ。あいつが行ったから俺も行こう」という風にどんどん後に続いていくのかなと。なのでキャラを美術の中に変換することに対する欲望はみんな必ず持っているはずなんですね。だからそれに加担する形で自分がいまブログ*7で批評を書いていたりするわけですけど……それも最近あまり効率的じゃないように思えてきて……(笑)
梅沢:本を作ったりしたら良いんじゃないかな?
原田:そうですね!
梅沢:補足すると美術家でも批評家的な視点は持っていても良いと思うし、批評家でも美術家的な視点は持っていても良いと思う。その方が効率的にスムーズに進みそうな気はするね。黒瀬さん*9とかを見るとやはりそう思う。
*2:「エターナルフォース画像コア」展
梅沢さんの個展、2009/11/27-12/19、frantic gallery
*3:SNS直接民主制
思想家、批評家の東浩紀が提唱したネット時代の新しい政治システム。インターネットというテクノロジーの発達が現代において極端にコミュニケーションコストを下げている現象に着目し、小規模な自治体においてはインターネットの技術の活用によって直接民主制が可能であるという提案。
*4:Pixiv(ピクシブ)
ピクシブ株式会社が提供する会員制のウェブサイト。自作のイラストやマンガなどのイラストの投稿・閲覧を通してコミュニケーションが行えるサービスを提供する。
*5:Twitter(ツイッター)
2006年Obvious社(現Twitter社)がサービスを開始した。個々のユーザーが短文(つぶやき/ツイート)を通してコミュニケーションを行ったり、フォローをし合ったりするなどして、ゆるく繋がることができる。
*6:ニコニコ動画
ニワンゴが提供している動画配信関連サービス。再生している動画に対してコメントを書き込むと動画にオーバーレイされ再生されることにより、特定の動画の特定の時間/場面に対する特定のコメントを共有することができる。
*7:藤城嘘
美術家、へなちょこへいわあーてぃすと(「藤城嘘(lie_)on Twitter」より)、ポストポッパーズ代表。90年代生まれ。東京出身。現在は「某所沢の美大に通いながら制作とポップンに明け暮れている」(ポストポッパーズウェブサイトより)。
*8:ブログ
「原田裕規/Yuki HARADA(1989~)」(http://d.hatena.ne.jp/haradayuki/)。インタビュアーのブログ。2009年5月13日スタート。
*9:黒瀬陽平
美術家、アニメ評論家、声優オタク、『REVIEW HOUSE』編集委員。1983年、高知生まれ。2008年、東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修士課程修了。同年3月に『レビューハウス』創刊、4月に『思想地図』vol.1に公募論文「キャラクターが、見ている -アニメ表現論序説」を寄稿。
2009年11月11日、埼玉にある梅沢和木さんのアトリエで収録(収録:原田裕規)