社説
樽商飲酒事故 悲劇をもう繰り返すな(5月10日)
小樽商大で7日、花見の宴会をしたアメリカンフットボール部員75人のうち、男女9人が救急搬送された。急性アルコール中毒とみられている。
運ばれた中の7人が未成年で、1人は意識不明が続いている。
大学当局はこれまで学生の自主性を重んじて学内での飲酒を禁じてこなかった。その中で悲惨な飲酒事故が起きた。残念でならない。
アメフト部では、1年生は必ず4年生のところに行って、つがれた酒を飲み干す慣例があったという。
山本真樹夫学長は会見で「学生たちに認識はないようだが、これは飲酒の強要だ」と認めた。
酒の強要は時に人の命にもかかわる。許されるものではない。
春は歓迎コンパや花見など何かと親睦の機会が多い。ただし、学生同士で盛り上がるとしても一定のルールはある。
イッキ飲みはさせない。「吐かせればいい」も思い込みにすぎない。
アメフト部の花見は、大学のグラウンドで約2時間行われたという。残された焼酎やウイスキーの空ボトルの数を見ても相当量飲んだことは容易に想像がつく。
搬送者のうち、男子3人は小屋で横たわり、男子1人と女子5人は合宿所に戻った後、搬送された。
飲酒の際、介抱が的確に行われ、早めに救急車を呼べば大事に至らないケースが多い。
危険なのは、泥酔して寝たまま吐くことだ。のどを詰まらせて窒息する。危なそうだったら誰かを付き添わせなくてはいけない。
道内の大学では、見回り役を置いたり、1人でトイレに行かせないルールを設ける体育会系クラブもあるという。
体質的に飲めない人もいる。飲めても適量は分からないものだ。ルール作りもやむを得ないといえよう。
全国では訴訟で飲酒強要のアルコールハラスメントが認められたケースもある。
神戸学院大ユースホステル部の男子学生(当時2年生)が2008年に飲酒で死亡した事故で、両親の訴えに大学がハラスメントを認め、上級生ばかりでなく一緒にいた学生全員が和解金を支払うことになった。
飲酒事故の責任は明確にされても、もとより前途あるわが子を失った親の悲しみが癒えるはずもない。
小樽商大は今回の事態を受けて学内飲酒禁止の方針に転じた。
単に学生から酒を遠ざければいいというものでもあるまい。酒との上手な付き合い方を身につけることは無駄ではない。
ただ、どんな場合でも、自分や仲間の身を守ることが第一だ。