得意を伸ばす就業支援や塾を開設
ビジネス界が発達障害者を支援する意義
同社のスタッフは、フルタイム4人。パート4人。パートは、アクティブシニアの元NECのエンジニアに依頼しているという。
「福祉よりもビジネスの世界のほうがコミュニケーションの構造化、定量化がうまい。福祉の世界の人に任せるよりも、はるかに上手にできるから(彼らに任せているの)です」
また、アクティブシニアの人たちは、元々、多くの人間に接してきていて、人間力がある。しかも、構造化されたコミュニケーションを獲得してきている。だから、彼らに任せたほうが適しているというわけだ。
「教わる側からすると、同い年の人たちとのコミュニケーションが取りにくい。例えば、小さい頃からいじめられた経験があると、圧倒的に歳の離れた子どもや親の世代のほうがやりやすい。コストも安く済む。彼らも喜んで引き受けてくれる。少なくとも、IT業界の構造化されたコミュニケーションは合っているのです」
同社の利用者は、診断名や障害者手帳を持たない人たちのほうが多い。そこで、紹介事業のほかに、企業からの出資を受けて、人材紹介や内定塾などの就業支援事業を行っている。
また、10代向けの部活や塾などの事業、TEENS(ティーンズ)も、特徴の1つ。
「発達障害の人は、一般の塾では自分の課題を伝えられないし、友人もほとんどいない。部活でも周囲と交流が少ない。元々弱いコミュニケーション力や社会性がなくなって、ますます就職できなくなるのです。場がないと成長できないから、場を作ります。多くの場合、若者支援の場は自然の中に作られますが、そういう子たちではない。うちは、3Dのアニメーションを作ったり、iPhone向けのアプリを作ったり、尖ったところを強引に伸ばして、得意な分野で人と関連する。そこをうちの稼ぎ頭にしたいと思っているのです」
これは、親にもうれしい事業だろう。コミュニケーション不全で引きこもってしまうような人たちを生まないよう、発達にでこぼこのある人たちが好きなことをやりながら学べるコミュニケーション塾といえる。
「多くの発達障害の子どもたちは、閉じこもってビデオ見て、親が“うちの子はパソコンできるのではないか”と思う。でも、仕事のパソコンとビデオを見るのとは違う。そういう親の期待のズレや本人の社会性のなさが、いきなり大学卒業の時に出てきて“就職できません”となるのです」