赤字でもしたたかな任天堂――持ち味の冒険心で苦境を乗り越える? (1/2)
株式上場以来、営業、最終損益とも初の赤字転落という“敗北”を喫した任天堂。しかし、これまでにも失敗に終わったゲーム機を世に送り出しながら、それを糧に新作を生み出してきた歴史がある。“ゲーム王国”の今後の巻き返し戦略に、注目が集まっている。
昭和37年の株式上場以来、営業、最終損益とも初の赤字転落という“敗北”を喫した任天堂。主力の携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」の販売低迷などが業績不振の要因の1つ。しかし、これまでも失敗に終わったゲーム機を世に送り出しながら、それを糧に新作を生み出す「冒険」を繰り返してきた歴史が任天堂にはある。年末には新型据え置きゲーム機「Wii U」を投入する“ゲーム王国”の今後の巻き返し戦略が注目される。
「(赤字で)マスコミなどにたたかれることもあると思うが、頑張って」。
決算発表の翌日(4月27日)に東京都内で開かれた任天堂のアナリスト向け説明会。業績や営業方針について厳しい質問が相次ぐ中、出席者の1人から“異例”の励ましの言葉が岩田聡社長にかけられた。
突然のエールに、岩田社長は表情を変えず「この業績ですから、たたかれて当然。理不尽な目に合っているとは思っていない」と冷静に対応した。
最終損失432億円、営業損失373億円という散々な結果となった平成24年3月期連結決算。今年1月26日、任天堂は24年3月期の連結営業損益が初の赤字に転落する見通しを公表。その翌日(1月27日)には、大阪証券取引所で任天堂株が一時9910円まで売り込まれ、約7年10カ月ぶりに1万円を割った。
だが、岩田社長は気を落としたそぶりを全く見せず、8月以降に発売する自社の新作ソフトのダウンロード販売など新戦略を発表。「ビデオゲームが社会にポジティブに受け入れられるための努力をやめてはいけない」と熱弁をふるった。
失敗にめげない姿勢は、これまでの任天堂のゲーム機の製作現場にある。
「ニンテンドーゲームキューブ」「バーチャルボーイ」「ファミリーコンピュータディスクシステム」……発表してきたゲーム機の中には、岩田社長が「失敗作」と認める商品もあるが、それを元に新作を生み出してきた。3DSもその1つだ。
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