前原が猛進するカジノ解禁の中身 -サンデー毎日

今週発売のサンデー毎日5.20号掲載の次期衆院選関連記事の中で「前原が猛進するカジノ解禁の中身」というサブタイトルでカジノに関連する記事が掲載されています。


前原が猛進するカジノ解禁の中身
[...]「カジノ法案はどうなってるんだ」
3月上旬、前原氏は周囲を軽くせかした。超党派議員による国際観光産業振興議員連盟(カジノ議連)が昨年8月に打ち出したカジノ推進法案について、民主党内の了承が遅れていたのだ。取りまとめ作業は加速した。法案はカジノを軸にした観光地域を整備する内容で、商業施設や国際会議場、展示場などと併設するイメージだ。[...]
(出所:サンデー毎日5.20号 pg22)


詳細は雑誌そのものを読んでいただければと思うのですが、どうも不可解なのは昨日のNHKニュースも含めて、ニュースになるような目新しい情報は全く含まれて居ません。私が手元に持っている情報と比べても、この種の記事がニュースとして表に出てくるには、その内容もタイミングもどうもチグハグ感があるんですね。

…ということは、どなたかが意図的に観測気球を打ち上げているのかな?とも思っているところ。ま、こういう観測気球の打ち上げは、大抵「何か」が起こる前触れでもありますから、ぜひ期待して見守りましょう。


超党派議連がカジノ推進法案-NHKニュース

おっとっと、NHKで速報が流れたようです。リンク先で動画も見られます。一応、第一報としてご報告。


超党派議連がカジノ推進法案
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120507/k10014927241000.html


カジノを中心とした観光振興を目指す超党派の議員連盟は、震災の復興や地方自治体の財政再建を進めるためにも、税収などが期待できるカジノを速やかに導入する必要があるとして、設置を推進するための法案をまとめました。

カジノは、現在、国内では禁止されていますが、大阪市の橋下市長が設置に意欲を示すなど、地方自治体を中心に、解禁を求める声が上がっています。

こうしたなか、カジノを中心とした観光振興を目指す超党派の議員連盟は、東日本大震災の復興や地方自治体の財政再建を進めるためにも、税収などが期待できるカジノを速やかに導入する必要があるとして、設置を推進するための法案をまとめました。[...]



コンプガチャは違法懸賞、消費者庁が中止要請へ

やっとと言うべきでしょうかソーシャルゲームに関して消費者庁が動き出したようです。以下、読売オンラインからの転載。


コンプガチャは違法懸賞、消費者庁が中止要請へ
http://www.yomiuri.co.jp/net/news/20120506-OYT8T00110.htm?from=yoltop


携帯電話で遊べる「グリー」や「モバゲー」などのソーシャルゲームの高額課金問題をめぐり、消費者庁は、特定のカードをそろえると希少アイテムが当たる「コンプリート(コンプ)ガチャ」と呼ばれる商法について景品表示法で禁じる懸賞に当たると判断、近く見解を公表する。同庁は業界団体を通じ、ゲーム会社にこの手法を中止するよう要請し、会社側が応じない場合は、景表法の措置命令を出す方針。

コンプガチャは市場規模2500億円を超えるソーシャルゲームで収益の柱の一つとなっているが、「射幸心をあおる」「子どもが夢中になり高額請求された」などの批判を受けていた。[...]


このコンプガチャの違法性に関しては以前より指摘がなされており、私もその説に対して賛同していたところです。一方で、関係者による情報提供では消費者庁の担当官が一時期、「コンプガチャも含めて違法にはあたらない」などと言い切ってしまっていたとのこと。それがこの度、急に方向転換した模様です。



さらに景表法関連でもう一点、これって違法なんじゃないの?と私が注目しているのが以下の「金スロ」店。

換金可能なゲーセン「金スロ」って何?
http://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&frm=1&source=web&cd=3&ved=0CG4QFjAC&url=http%3A%2F%2Fnikkan-spa.jp%2F193181&ei=NBOnT-TRDMbumAWQyenTBQ&usg=AFQjCNEtTQk3IMQzFVOkvAhrOqYLy052pA

「店もお客さんも現状、パクられることはないですよ。よく所轄の警察官が雨宿りがてら覗いていきますが、システムを説明すれば『今のところは大丈夫だね』と言ってますから。だからこうして堂々と営業しているんです」

店先で呼び込みをしていた、どこにでもいそうなサラリーマン風の店員が明るく話す。店舗前に置かれた派手な看板には、「金箔カードの自動販売機。伝説の4号機が打てる!」と書かれている。怪しむ記者の背中を押すように店員が続ける。[...]


上記の「自販機の付属ゲーム」という理屈で風適法の範疇からは外れることは可能かもしれません(似たような例が他にあるので)。一方で、このマシンは金箔カード購入後に付属するボーナスゲームの中で景品として追加の金箔カードを提供しており、その景品提供行為は当然景表法の規制対象となります。そして私が現時点で理解している限りの金スロのゲームシステムだと、景表法違反を回避できるように作られているとは思えません。

逆にいえば金スロの理論が成り立つのならば、もはや風適法に縛られて遊技店営業をする必要もなければ、カジノの法制化をする必要もないワケで、残念ながら日本の法制はその様には出来ていません。こちらに手が廻るのも時間の問題かと。

カジノジャンケットシステムの統計的理解

えーっと、何やらまたワケの判らない事をふれて廻っている人が居るようなので、解説しておきますね。


(ジャンケット事業者は)自分が送客したVIPの「総ベット金額の○%」という契約でキックバックを貰う


どうも、私が過去にジャンケット事業者とカジノ事業者の収益配分に関して行った上の説明に対して、「木曽はジャンケットを判っていない」などと「逆」宣伝して廻っている人がいるようです。

耳年増な熟練プレイヤーが「門前の小僧、習わぬ経を読む」的に聞きかじった知識を披露しているだけならばまだしも、日本で専門家を名乗っている方々すらも同様の主張をして廻っているとこのと。ただ、非常に残念なのですが、そういう方々はジャンケットとカジノの間の収益配分のあり方を表層的にしか理解していない、少なくとも統計的に正確な理解をしているワケではなさそうだ、としか私の立場からは申し上げられません。

上記で行った私の説明は、マカオのジャンケットシステムを解説する際にしばしば用いられる「40-40-20モデル」に基づいて解説しているものです。40-40-20モデルとは、伝統的にマカオで用いられてきた政府、ジャンケット、カジノ事業者の三者間での収益配分を簡易的に示したもので、ゲームから期待される収益(T-win)のうち約40%を政府が税として取得し(マカオカジノ税率は39%)、残りをジャンケットが40%、カジノ事業者が20%の比率で獲得するというものです。すなわち、これをゲームの控除率ベースに直すと、例えば一般的なルールのバカラのバンカーサイドベットから期待される控除率1.06%のうち、0.424%を政府が、0.424%をジャンケットが、そして残りの0.212%をカジノが受け取るということとなります。

ただし、近年ではカジノ事業者に対するジャンケット事業者側の交渉力が増したことで、伝統的に使用されてきた40-40-20の収益配分モデルがジャンケット事業者にとって有利な方向に崩れています。瞬間最大風速的には40-50-10を超えるまでに高騰したともいわれていますが、現在ではマカオ政庁がその高騰に法的上限を設けたことで40-45-15程度を最上限とする形で落ち着いています。

こういった40-40-20モデルをベースにしたマカオのジャンケットシステムの説明は、別に私のオリジナルではなく、業界内で広く使われているもの。「40-40-20 macau」あたりで用語検索をかけて頂ければ、山ほど同じような解説が出てきますので(但し英語)、それらを読んでもまだ「間違えている」と主張したい人が居るのならば、是非世界中の専門家を相手どって論戦を挑んでみて下さい。



では、「木曽は間違えている」と吹聴して廻っている人達がどういう主張をしているかというと「カジノとジャンケットはNon-negotiable chipという特殊なチップを使っており、そのローリング総額の△%がジャンケットの売上で…云々」というもの。その説明自体は良い線をいっているのですが、それをもって「木曽の説明は間違いである」と繋げてしまうと残念賞ですね。なぜなら彼等のいう「ローリング総額の△%」は、私が説明した「総ベット金額の○%」と統計学的に同じ意味だからです。

最初にご紹介した40-40-20システムの説明で利用した表現も含めて、

ジャンケットの取り分は:
1) ローリング総額のa%
2) 総ベット金額のb%
3) 期待収益(T-win)のc%
4) ゲーム控除率のうちd%
である。

上記は、すべて統計学的に同じ現象を違う表現手法で示しているにすぎません。カジノ経営学の授業ならば「それぞれを変換計算してa, b, c, dの値を求めなさい」という設問が出てもおかしくない演習問題の範疇ですね。そして、このような理屈が理解できていない方々は、ジャンケットシステムの有り方を表層的には捉えていても、統計学的に正しく理解していないということになります。

さらに言うのならば、上記を理解していない人達は広く業界内で使われている「40:40:20システム」の説明と、日々現場で使用されているNon-negotiable chipとの関係をどのように頭の中で整合させていたのでしょうか? 「40-40-20システム」はカジノマーケティングの教科書のマカオジャンケットの項目で、「いの一番」に登場するほどの非常に基本的な知識です。まさかそれを聞いた事がないという専門家は居ないと思いますが、一方で上記で説明したようなジャンケットシステムの統計的理解なくして各種数字の違いを整合性をもって説明出来ません。

むしろ、そちらの方が私としては気になるところ。是非、今度どこかですれ違った時にご本人に聞いてみたいと思います。


劇団北京蝶々:オーシャンズ・カジノ

何だかちょっと面白そうな情報を見つけたので急遽ご紹介。


劇団北京蝶々:「オーシャンズ・カジノ」
http://pekinchocho.com/next-act.html

日本の未来に、幾ら賭ける?

「日本にカジノを!」
カジノ誘致の気運が高まる中、
とある地方都市がカジノ船の運航を開始する。
日本沿岸200海里
―――日本の法律が及ばない洋上で開催される
カジノ・パーティ。
VIP客に紛れ、一人の女の子がカジノ船に乗り込む。
失踪した彼氏を探し出す為に……。
「アンタは私の財産なんだから」
日本を東西に駆け抜けるアクションエンターテイメント!


サブタイトルを拝見する限り、長崎ハウステンボスのカジノ船運行をモデルにしている??

上記のような公演を4/18~4/30まで王子小劇場で行っているとのことです。5/18~5/21で大阪公演も。内容は不明ですが(台本を書いた人のカジノ合法化への賛否も含めて)、拝見する限りはこのブログ読者の皆様も興味ありそう。僕も時間があったら見に行きます。


プロフィール
木曽 崇(キソタカシ)

国際カジノ研究所 所長
エンタテインメントビジネス総合研究所 客員研究員
早稲田大学アミューズメント総合研究所カジノ産業研究会 研究員

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部首席卒業(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者での会計監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。

より詳細なプロフィール

各種連絡はtakashikiso@gmail.comまで
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