「その他の危険」を示す警戒標識。県が何のために設けたか、既に分からなくなっている=長野市若穂綿内の国道403号 |
長野市若穂綿内の国道403号沿いに県が設置した、道路前方への危険を知らせる「警戒標識」が、何のために設けられたか不明確になっていることが8日、分かった。県側に台帳の記録が残っていないことや、設置当時と道路状況が変わったとみられることなどが理由。今はほとんど役割がない標識に地元からは撤去を含めた見直しを求める声も出ている。県道路管理課は事態を重視し、県が管理する警戒標識約2万基について「台帳の記録を一度総点検する必要がある」としている。
問題の標識は、上信越道須坂長野東インター方面から、旧長野電鉄屋代線綿内駅方面に向かう道路の左側にある。黄色地に「!」の記号が記されたデザインで、警戒標識の一種。警戒標識には踏切や落石など注意を促す対象を特定した標識もあるが、この標識は「他の標識では表現できない、警戒すべきことや危険がある場合に設置する」(国土交通省)という。
国の標識令によると、この標識は、運転者の注意が必要な箇所の手前30〜200メートルに設置するのが原則。若穂綿内の設置場所は、標識より先が緩やかな左カーブとなるが、近くの自動車販売整備業の政木建治さん(78)は「この先にびっくりすることなんてない」と困惑する。
これに対し、この道路を管理する県長野建設事務所維持管理課は、標識の設置理由について「記録が存在しておらず、明確に答えることができない」とするにとどまる。国の基準では、標識は台帳などを整備して管理することが望ましいとされているが、「当時の担当者が台帳を整備しなかった可能性が考えられる」といい、設置時期も不明だ。
地元の若穂綿内町区の区長、岡部元男さん(62)は4月中旬、元区長ら約40人が集まった会合で、設置理由を知っているか尋ねたが、「誰も分からなかった」。何に注意を促しているのかをはっきり明示するなど何らかの見直しが必要―と訴える。
こうした状況に国交省道路局企画課は「道路管理者は、道路法や標識令に基づいて必要な場所に標識を設けたはずで、県には説明責任がある」と指摘。これに対し県道路管理課は「警戒標識は、道路改良などに伴って場所を変更したり、撤去したりする場合も多いが、こうした対応がされないなど管理の精度が低いのが現状」と釈明。「台帳全体を総点検して整理する必要がある」としている。