交流サイト最大手の米フェイスブック(FB)が、おひざ元の米国で成長にかげりが出始めたようだ。会員の活発なコミュニケーションが減っており、新規会員も頭打ちになっている。
米国人はSNSやFB疲れを起こしているのではないか――。そんな見方をする識者も現れた。プライバシーが何もかもあらわになることに会員が抵抗感を示し出したという。さらに肝心のプライバシー情報も、FBの運営側の取り扱いについて米消費者団体専門誌が注意を促した。
世界中で会員数が9億人を突破し、5月中には新規株式公開(IPO)を控えるFBで、地域別の会員数が最も多いのは米国だが、既に成長のピークを超えたことを示すデータも出た。英国のオンライン市場調査会社、グローバルウェブインデックスが2011年11月にまとめたSNSに関する調査結果を見ると、米国は全体の人数では他地域を圧倒しているものの、2011年に入ってユーザー数が減少に転じているのだ。
この調査は2009年以降6回実施されているが、ほかにも気になるデータがある。米国ではFB会員による利用状況が、初回の調査以降減退している点だ。例えばFB上でお祝いの電子カードのような「バーチャルギフト」を友人に贈ったり、共通の趣味や活動のグループに参加したりする割合は15%以上も減少。自分のページに近況をつづったり写真を公開したりする人も、それぞれ10%、5%ずつ少なくなっている。友人にメッセージを送る、新たな友人を積極的にFB上で探し出してコミュニケーションを楽しむユーザーも減った。
一方で、「FBに疲弊している米国人」も話題になっている。ダイヤモンド・オンライン2012年4月24日付の札幌市立大学、武邑光裕教授とエイベック研究所の武田隆氏による対談記事で、武田氏は、FBが今やゴシップにあふれていると指摘。武邑教授も「米国では40代の人たちの多くがFBから撤退している」と説明した。FBは実名制がとられているため、個人的な「しがらみ」を持つ人はプライバシーがむき出しになることへの警戒感からやめてしまうようだ。
武邑教授らが指摘した米国人ユーザーの「FB疲れ」がどこまで深刻化しているのかは分からないが、会員数、活動の実態いずれもダウンしているところを見ると、「FB離れ」が進んでいると考えられなくもない。
さらにFBが入手する膨大な量の個人情報について、米コンシューマー・リポート(CR)誌が2012年6月号で「警告」を発したのだ。
米国では1億5000万人がFBを利用しているといわれるが、CRでは「あなたの個人情報がFBにどれだけ収集され、どう使われているか、悪用の可能性はないのか」と疑問を投げかける。FB会員約2000世帯に対して実施した緊急調査をベースに、米国全体における問題点を提起した。
CRの予測によると、480万人のユーザーが「いつ、どこに行く」とFBで明らかにしていたという。これは「空き巣犯に自宅を留守にする日程を教えるようなもの」だ。さらに1300万人が、自分の情報をどこまで公開するかを決める「プライバシー設定」を怠っていたか、知らなかったとする。公開先を制限しなければ、FB上のあらゆる書き込みは当然、見ず知らずの人でも閲覧可能となる。
FB運営側では、ユーザーがどのウェブサイトを閲覧したかの情報も得ているという。そのサイトが「いいね」ボタンを備えていれば、たとえユーザーがボタンを押さなくても、FBにログインしていなくても、さらにFB非会員ですらも訪問履歴が運営側に送られるというのだ。さらに、自分と「友人」関係にあるユーザーが使っているアプリによっては、仮にFB上の情報公開先を制限していてもアプリが勝手に第三者に情報を送ってしまうという点も説明している。
CRが調査した全世帯のうち11%は、1年前に比べてFB上のトラブルが増えたと回答。見知らぬ人による不正ログインや、脅し、いやがらせがあるという。
過去にもFBでは、プライバシーの取り扱いが論議の的になったことがあった。対応を誤れば米国のみならず、日本をはじめ各地で思わぬ火種にならないとは限らない。
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