<猫さん五輪消滅>「カンボジア人としてリオ目指す」
毎日新聞 5月9日(水)14時47分配信
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観客の声援を受けて、力走する猫ひろしさん=別府大分毎日マラソンで2012年2月5日、野田武撮影 |
【猫ひろしさん】五輪代表が消滅…国際陸連「資格不十分」
競技者としての猫さんを支援してきた関係者によると、猫さんは8日夜も東京都内で長距離の走り込みを行った。走り終わった後にロンドン五輪に出られなくなったとの報道を知らされ、「もし今回出られないとしても、カンボジア人として4年後のリオデジャネイロ五輪を目指す」と話したという。
猫さんのマラソン歴は約5年。当初のタイムは3時間超だったが、皇居周辺などで練習を重ね、カンボジアの大会で好記録を出したことなどから代表話が浮上。2月の別府大分毎日マラソンで2時間30分26秒の自己ベスト記録を出し、3月に五輪代表に選ばれた。
◇国籍問題に一石
スポーツ選手の国籍変更は珍しいことではない。中東諸国が潤沢なオイルマネーで優れたアフリカ出身選手を集めるケースが議論を呼んできた。だが、富める国の五輪水準に達しないアスリートが「オリンピアン」になるという夢のため、貧しい国の代表枠を得るというのは極めて特異な事例だ。
猫さんの記録は、五輪参加標準記録B(2時間18分0秒)には達していないが、競技普及のため有力選手不在の国に設けられている「特別枠」で代表に選ばれた。猫さん自身、「批判的な声があるのは理解している」と語ったこともある。
国際陸連は国籍変更後3年間は代表になれないとの規定を05年に策定。昨年11月、国際競技会で代表経験のない選手にもルールを設け、国籍取得後原則2年間は国際競技会に出場できないとした。今年3月には期間を1年間に緩和したが、昨年10月に国籍を得た猫さんが例外的に出場権を得るには1年間の居住実績か国際陸連理事会の承認が必要だった。
国際的には知られていなかった猫さんの存在。だが、陸上関係者の中には、これが認められれば、実力の足りない外国選手が「特別枠」に殺到するようになるとの指摘もあった。今回の国際陸連の判断は今後一つの指標になるかもしれない。
◇現地で関心薄く
「走る動機は純粋」「カンボジア人の出場機会を奪うな」−−日本で賛否両論が渦巻く一方、当のカンボジアではどうか。
「猫ひろし? 聞いたこともない」。5月初旬、プノンペンの広場でサッカーをしていた大学生(21)はけげんな表情を浮かべた。次々に集まってきた友人に五輪選考の経緯を説明しても誰も関心を示さない。
資金協力も議論を呼んだ。猫さんを支援する日本企業がカンボジア五輪委員会主催のハーフマラソンに協賛し、2万ドル(約160万円)を出資。「癒着では」と指摘する記事が日本の週刊誌をにぎわせた。だが、五輪委のワット・チョムラーン専務理事(40)は「我が国のスポーツ発展に外国の支援は不可欠。日本メディアは関心があるようだが、こちらでは何の話題にもなっていない」と戸惑う。
カンボジアは過去7回の五輪出場でメダルがない。地元スポーツ記者、ペッ・バンニーさん(46)は「五輪は大国のための大会。カンボジアは活躍できないから国民も興味がない。参加するのは勝者にいけにえをささげるようなものだ」と皮肉る。20年に及ぶ内戦などで社会基盤が破壊され、人々の関心は「食べ物と仕事」(政府職員)。五輪は別世界の出来事のようだ。
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最終更新:5月9日(水)15時14分
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