このところ、「継続性」という言葉の意味を考えさせられる機会が多い。

 10節を終了したJ1リーグで、ベガルタ仙台が首位を走っている。開幕からの無敗記録は途切れたが、ここまで7勝1分け2敗の成績は堂々たるものだ。直近の日本代表合宿にひとりも選ばれていないチームが、J1を力強く牽引しているのだから。
チームを率いる手倉森誠監督は、就任5シーズン目である。コーチ時代も含めれば、2004年からベガルタに携わっている。いまやチームの顔となった梁勇基や関口訓充は、手倉森監督の“一番弟子”のような存在だ。

 クラブの隅々まで知り尽くす指揮官だからこそ、J2優勝、J1残留、昨季の躍進と、段階的にチームをステップアップさせることができたのだろう。2年連続の好スタートは、必然と言っていい。

 2位のサンフレッチェ広島は、今季から森保一監督が指揮を執る。ただ、サッカーの方向性はペトロヴィッチ前監督が構築したものを土台とする。選手に戸惑いがあったら、かくもアグレッシブで躍動感溢れるサッカーが成立するはずもない。3-4-3の攻撃的なサッカーを継承しつつ、森保監督なりのエッセンスが散りばめられていると理解するべきだ。

 なでしこジャパンも同様である。

「7月11日のオーストラリア戦は、ロンドン五輪の第1戦をイメージしてのぞみたい」
 5月8日に行なわれたキリンチャレンジカップの記者会見で、佐々木則夫監督はこう語った。「五輪の第1戦は非常に重要です。(4年前の)北京でも、ニュージーランドと2対2で引き分ける際どい戦いをした。大会までにいい準備はしたが、初戦には魔物がいることを我々は体験している」と。

 4年前の北京五輪直前にも、キリンチャレンジカップは開催された。なでしこジャパンは男子と同じくアルゼンチンと対戦し、2対0で勝利している。佐々木監督はこの試合で、6人の交代枠を使い切った。

 6人まで交代すると、スタメンの半分以上が入れ替わることになる。現実のゲームとは、明らかにかけ離れたシチュエーションだ。

 疲労を感じるなかで、何ができるのか。ゲームの最終盤に、どれぐらい粘りを発揮できるのか。実際のゲームで問われるポイントを、見定めることができなくなってしまうのだ。

 オーストラリアを迎える今回は、「3人で挑む」と佐々木監督は明言した。「五輪の第1戦となるカナダ戦と同じシチュエーションで戦いたい」からである。交代枠に自ら制約を設けることで、より有意義な一戦にしたいと考えているのだ。

 ちなみに、ドイツ・ワールドカップ直前に行なわれた韓国との国際親善試合でも、佐々木監督は交代選手を3人しか使っていない。北京五輪を教訓としたスタンスは、ワールドカップ初戦の勝利につながっている。なでしこジャパンのコーチや若年層の代表監督を含め、6年間にわたって女子サッカーの強化に携わってきた継続性が、緻密なチームマネジメントにつながっているのだ。

 7月下旬開幕のロンドン五輪に先駆け、ザック率いる日本代表は6月上旬にワールドカップ最終予選に挑む。5月23日には、アゼルバイジャンを迎えてキリンチャレンジカップを戦う。この試合も交代枠は6人になるはずだが、さて、ザックは何人使うだろうか。