一筆啓上
「あぐり京都で夫婦円満」
 「で、今月は何の取材?」。同業者の夫(NHKアナウンサー)が月に一度、ボソボソと言うセリフである。KBS「あぐり京都」を担当させてもらって、今年度で三年目。お酒を飲みながらお互いのビデオを見て反省会をするのが我が家の日課だが、同業者ゆえに夫は非常に厳しい。「このコメント何? 食べ方もカメレオンみたい」等々、ほめられたことがない。私もムスッとして黙る。
 そんなとき、夫が最後に言うのが冒頭のセリフ。実は、ロケを誰よりも楽しみにしているのは夫だ。何故ならお土産に美味しい京野菜を頂いてくることが多いからである。夫はスタジオでニュースを読むことが多く、「君は美味しそうな取材が多くてうらやましい」とやっかむ。
 みず菜、壬生菜、おたふく、京せり、紫ずきん、黒大豆、えび芋、万願寺甘とう、賀茂なす――これまで数々の京野菜や肉を取材させてもらった。安心で安全、しかも美味しい野菜作りにどんなご苦労をされているのかインタビューしていると、その作品がピカピカの宝石のように思えてくる。
 ロケの日の楽しみは、頂いた野菜を農家の方に教えてもらった料理法で試してみること。今月は「万願寺甘とうのベーコン巻き」と「琴引メロンと生ハム」。ビールにワインにぴったりで、実に美味しかった。
 同じ反省会でも美味しいご馳走があり、栽培のための工夫や苦労話を報告しながらだと雰囲気が全然違う。夫の毒舌も甘くなり、私もより農家の方たちの頑張りぶりを伝えられるようにもっと精進しなければ! と素直に反省する。
 これまで取材させてもらった農家さん達は、ご夫婦仲むつまじく作業されている姿も印象的だった。我が家もあやかって、いつまでも新鮮で楽しい生活を続けられればと思う。

(フリーアナウンサー・臨床心理士 山下りら)
 
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