ダイヤモンド社のビジネス情報サイト

私は「愛国奴」にはならない

 私は北京の長期的な発展のために、北京の人たちが豊かに暮らせるように、命がけで取り組む用意ができている。

 「そんな時間があったら日本のために汗をかけ!」と、反論をする方もいるだろう。ただ私から言わせれば、国際社会で日本人の存在感を表現しながら、外国の発展を促し、且つ祖国との接点を見出し、両者が有機的に、一緒に成長していけるような時空を深化させるべく汗を流すことこそが、結果的に日本の発展・繁栄に寄与することになると信じている。

 それに、私は「愛国奴」にはなりたくない。狭隘な愛国心からは、何も生まれない。国籍や祖国についてのアイデンティティは、閉ざされたものではなく、開かれたものであるべきだ。

 倫理観から、猫さんのことを否定する意見には、違和感を禁じ得ない。私も尊敬するアスリートの為末大さんは自らのツイッターで、示唆に富むコメントをしている。

 「日本では、特に五輪が近くなると殺気立った人達が出てきて、なんだか出兵する一等兵の気分になる。正直危ないなと感じる事もある。」

 「移民がいない国というのはもう先進国では珍しくなっていて、次の世紀のスポーツ倫理の争点の一つは、国のアイデンティティとしてのスポーツだろう。」

猫氏の行動はポジティブ

 「グローバル化と日本人」というテーマは、我々が避けては通れないものである。

 私は、国力とは最終的に、一つの国家社会が、どれだけの「個」を世界に輩出できたかで量られるものだと思っている。世界で勝負する日本人があまりにも少ないなか、猫さんの行動はポジティブだと思う。

 「国籍をどこに置くか」というのは究極的には個人の問題だ。法治国家であれば、合法か違法であるかが、唯一の判断基準であるべきだ。倫理の問題に帰結するのは的を射ていない。

 アメリカの著名なコラムニストであるトーマス・フリードマンが主張するように、世界は“フラット化”していく。日本人も、個別な案件に喜怒哀楽を以て反応するだけではなく、これを機会に、日本人として世界で勝負していくためのマインドセットを“フラット化”するべきではないだろうか。

「個の力」でねじ伏せてみせる

 私自身は、「個の力」を鍛えることを怠らず、国際社会という舞台で「日本人としての生き様」を世界の強者たちに見せつけてやりたい。中国語で中国人をねじ伏せてみせる。英語でアメリカ人をねじ伏せてみせる。日本人は世界ではバカにされることが多い。そんな場面で悔しいと思わなければ男じゃない。

 今日もこれからデンバーでの国際会議が始まる。日本人が国際社会で、誇りを持ってのびのびと生きられるように、献身していく覚悟はできている。

 ランニングもやった。腹筋もやった。気合が入ってきた。今日も思う存分暴れてきたい。

 だったら、お前がやれ!!

 


<加藤嘉一氏の著書>

 

 


「北朝鮮スーパーエリート達から日本人への伝言」(講談社)
アマゾン][楽天ブックス

 

 

 


「いま中国人は何を考えているのか」(日本経済新聞出版社)
アマゾン][楽天ブックス

 

 

 

 

 


「中国人は本当にそんなに日本人が嫌いなのか」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
アマゾン][楽天ブックス
 

previous page
4
Special topics
ダイヤモンド・オンライン 関連記事


DOLSpecial

underline
昨日のランキング
直近1時間のランキング

おすすめの本
おすすめの本
われ日本海の橋とならん

人の波がぶつかりあい、時代のエネルギーが炸裂する。アジアでいちばん激しく、生命力があふれた国、中国。その中国で「もっとも有名な日本人」となった著者が、内側から見た人にしかわからないリアルタイムの中国を語ります。そこから見えてくるのは、中国、日本、世界の現在。日本は、そして日本人は、これからいったいどこへ向かえばいいのか。私たちの課題も見えてきます。


話題の記事


加藤嘉一 [国際コラムニスト、北京大学研究員]

1984年静岡県生まれ。英フィナンシャルタイムズ中国語版、香港<亜州週刊>、The Nikkei Asian Reviewコラムニスト、北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶応義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。2003年、高校卒業後単身で北京大学留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。自身のブログは6100万アクセス、中国版ツイッター「新浪微博」のフォロワー数は133万人以上(2012年4月2日現在)。中国で多数の著書を出版する一方、日本では『われ日本海の橋とならん』(ダイヤモンド社)などを出版。2010年、中国の発展に貢献した人物に贈られる「時代騎士賞」を受賞。趣味はマラソン。

 


加藤嘉一の「だったら、お前がやれ!」 思考停止のニッポンをぶった切る

 「だったら、お前がやれ!」
この言葉が意味すること、それは「対案の無い無責任な批判はするな」ということだ。もともと、この言葉は加藤嘉一氏の亡くなった父の口癖だったが、加藤氏は自らの行動規範として常に心に留めている。相手に対して意見するとき、必ず自らに問いかける。
そんな加藤氏が今、憂いているのは、日本社会にあまりにも無責任な批判、意見、論評が多いということだ。本連載では、日本社会に蔓延る無責任な論評を、加藤氏の視点で切り込み、加藤氏なりの対案や考え方を示す。

「加藤嘉一の「だったら、お前がやれ!」 思考停止のニッポンをぶった切る」

⇒バックナンバー一覧