とやかく言う前に
その脂肪をなんとかしろ!
先日帰国した際のとある夜、都営地下鉄大江戸線に乗っていた時のことだ。
大学生らしき若者男性二人が、車両内で猫さんを罵倒していた。二人とも、身長184センチの私より10センチほど低く、体重68キロの筆者より10キロ以上重いように見受けられた。
「あいつ、卑怯だよな、芸能人だからって勝手な行動とってんじゃねえよ」
これが彼らのトーンであった。
3駅分、彼らの発言を聞いて、ついに我慢が限界に達した。私は彼らに近寄っていった。
「こんばんは、加藤嘉一と言います。ちょっとよろしいですか?」
最初は「何だこいつは?」という表情で見てきたが、そのうちの一人が私のことをどこかのメディアで見たらしく、「おお、あの人か」という表情に変わった。
私は丁寧にお辞儀をしてから、本題に入った。
「君たちの議論を先ほどから聞いていた。他人からこんなことを言われるのは鬱陶しいかと思うが聞いてほしい。そんな感情に任せた議論から君たちは何を得るのか? 無味乾燥な議論をしている時間があったら、まずは走りなさい」
一人がムッとしたが、両目に力を入れて相手を制し、続けた。
「体のあらゆる部分についているその脂肪を何とかしたらどうだ? 男として格好悪いぞ。やることをやってから、論拠を以って批判することだ。僕が女だったら、そういう男を格好良いと感じると思う。繰り返す。罵倒の前に、まずは走れ。少なくとも、腹筋をしなさい」
真剣に持論を説いたが、「何なんだ、こいつは」という表情で相手にしてもらえなかった。「こいつ、頭おかしいんじゃないのか」という表情をしたまま、二人は下車していった。私から距離を置きながら。
相変わらず、無責任な論評が社会に溢れている。残念ながら、これが日本の現状である。