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とやかく言う前に
その脂肪をなんとかしろ!

 先日帰国した際のとある夜、都営地下鉄大江戸線に乗っていた時のことだ。

 大学生らしき若者男性二人が、車両内で猫さんを罵倒していた。二人とも、身長184センチの私より10センチほど低く、体重68キロの筆者より10キロ以上重いように見受けられた。

 「あいつ、卑怯だよな、芸能人だからって勝手な行動とってんじゃねえよ」

 これが彼らのトーンであった。

 3駅分、彼らの発言を聞いて、ついに我慢が限界に達した。私は彼らに近寄っていった。

 「こんばんは、加藤嘉一と言います。ちょっとよろしいですか?」

 最初は「何だこいつは?」という表情で見てきたが、そのうちの一人が私のことをどこかのメディアで見たらしく、「おお、あの人か」という表情に変わった。

 私は丁寧にお辞儀をしてから、本題に入った。

 「君たちの議論を先ほどから聞いていた。他人からこんなことを言われるのは鬱陶しいかと思うが聞いてほしい。そんな感情に任せた議論から君たちは何を得るのか? 無味乾燥な議論をしている時間があったら、まずは走りなさい」

 一人がムッとしたが、両目に力を入れて相手を制し、続けた。

 「体のあらゆる部分についているその脂肪を何とかしたらどうだ? 男として格好悪いぞ。やることをやってから、論拠を以って批判することだ。僕が女だったら、そういう男を格好良いと感じると思う。繰り返す。罵倒の前に、まずは走れ。少なくとも、腹筋をしなさい」

 真剣に持論を説いたが、「何なんだ、こいつは」という表情で相手にしてもらえなかった。「こいつ、頭おかしいんじゃないのか」という表情をしたまま、二人は下車していった。私から距離を置きながら。

 相変わらず、無責任な論評が社会に溢れている。残念ながら、これが日本の現状である。

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われ日本海の橋とならん

人の波がぶつかりあい、時代のエネルギーが炸裂する。アジアでいちばん激しく、生命力があふれた国、中国。その中国で「もっとも有名な日本人」となった著者が、内側から見た人にしかわからないリアルタイムの中国を語ります。そこから見えてくるのは、中国、日本、世界の現在。日本は、そして日本人は、これからいったいどこへ向かえばいいのか。私たちの課題も見えてきます。


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加藤嘉一 [国際コラムニスト、北京大学研究員]

1984年静岡県生まれ。英フィナンシャルタイムズ中国語版、香港<亜州週刊>、The Nikkei Asian Reviewコラムニスト、北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶応義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。2003年、高校卒業後単身で北京大学留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。自身のブログは6100万アクセス、中国版ツイッター「新浪微博」のフォロワー数は133万人以上(2012年4月2日現在)。中国で多数の著書を出版する一方、日本では『われ日本海の橋とならん』(ダイヤモンド社)などを出版。2010年、中国の発展に貢献した人物に贈られる「時代騎士賞」を受賞。趣味はマラソン。

 


加藤嘉一の「だったら、お前がやれ!」 思考停止のニッポンをぶった切る

 「だったら、お前がやれ!」
この言葉が意味すること、それは「対案の無い無責任な批判はするな」ということだ。もともと、この言葉は加藤嘉一氏の亡くなった父の口癖だったが、加藤氏は自らの行動規範として常に心に留めている。相手に対して意見するとき、必ず自らに問いかける。
そんな加藤氏が今、憂いているのは、日本社会にあまりにも無責任な批判、意見、論評が多いということだ。本連載では、日本社会に蔓延る無責任な論評を、加藤氏の視点で切り込み、加藤氏なりの対案や考え方を示す。

「加藤嘉一の「だったら、お前がやれ!」 思考停止のニッポンをぶった切る」

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