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台湾の記者会見にて。デンバー滞在前に、取材で訪れていた。

 現在、私は米国コロラド州デンバーに滞在している。デンバー大学で開催された「Beyond History: Reconciliation and Sources of Conflict between China and Its neighbors」(歴史を乗り越えて:中国と近隣諸国との間における和解と衝突の原因)という国際会議に出席するためだ。

 私も国交正常化40周年を迎える日中関係に関する基調報告をした。国境や利害関係、政治システムや価値観を越えて、歴史が遺した幾つもの壁を打ち破るべく、各国の精鋭たちとガチンコで議論することは、「世界の中の日本」を再考させてくれる。

 デンバーは標高1500メートル以上の高地にある。気合で日課としている毎朝のランニングをしてみると、心臓に適度な負荷がかかって心地良い。

 高橋尚子さんら五輪メダリストたちがマラソントレーニングの拠点としていたボルダーからも、車でわずか30分くらいということで、現地の人たちは「多くのプロアスリートがデンバーを拠点にしているよ」と教えてくれた。私も将来的にデンバーとボルダーを拠点に数か月滞在し、心技体を鍛え直したいと強く意識した次第である。

だったら、お前が走れ!

 先ほど、60分間のランニングを終えて、ふと思い出した。

 お笑い芸人の猫ひろし氏が、今年夏にロンドンで開催される五輪に、男子マラソンのカンボジア代表として出場することに関して、日本で議論が起こっている。

 完全に個人的な感想であるが、私は心から猫さんのことをうらやましく思っている。陸上競技に勤しんでいた中高時代、私も本気で五輪を目指していた。同じランナーとして、ぜひ頑張ってほしいと思っている。

 そもそも、アスリートとして五輪出場を実現できなかった私のような負け犬に、猫さんの行動を批評する資格などないと思っている。もし私の父親が生きていたら、いつものようなパンチが飛んできたことだろう。

 「だったら、お前が走れ!!」

 まったく、その通りだ。五輪にも出ない、出たことがない、ましてや真剣に走ったり、一つの壮大な目標を実現するために、犠牲を払ってでも汗を流したことのないような人間に、猫さんについてとやかく言う資格は限りなくゼロに近い、というのが私の根本的なスタンスだ。

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われ日本海の橋とならん

人の波がぶつかりあい、時代のエネルギーが炸裂する。アジアでいちばん激しく、生命力があふれた国、中国。その中国で「もっとも有名な日本人」となった著者が、内側から見た人にしかわからないリアルタイムの中国を語ります。そこから見えてくるのは、中国、日本、世界の現在。日本は、そして日本人は、これからいったいどこへ向かえばいいのか。私たちの課題も見えてきます。


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加藤嘉一 [国際コラムニスト、北京大学研究員]

1984年静岡県生まれ。英フィナンシャルタイムズ中国語版、香港<亜州週刊>、The Nikkei Asian Reviewコラムニスト、北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶応義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。2003年、高校卒業後単身で北京大学留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。自身のブログは6100万アクセス、中国版ツイッター「新浪微博」のフォロワー数は133万人以上(2012年4月2日現在)。中国で多数の著書を出版する一方、日本では『われ日本海の橋とならん』(ダイヤモンド社)などを出版。2010年、中国の発展に貢献した人物に贈られる「時代騎士賞」を受賞。趣味はマラソン。

 


加藤嘉一の「だったら、お前がやれ!」 思考停止のニッポンをぶった切る

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この言葉が意味すること、それは「対案の無い無責任な批判はするな」ということだ。もともと、この言葉は加藤嘉一氏の亡くなった父の口癖だったが、加藤氏は自らの行動規範として常に心に留めている。相手に対して意見するとき、必ず自らに問いかける。
そんな加藤氏が今、憂いているのは、日本社会にあまりにも無責任な批判、意見、論評が多いということだ。本連載では、日本社会に蔓延る無責任な論評を、加藤氏の視点で切り込み、加藤氏なりの対案や考え方を示す。

「加藤嘉一の「だったら、お前がやれ!」 思考停止のニッポンをぶった切る」

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