他方、中国の基本政策に問題はない。彼らは、新たな成長パターンを発展させることの大切さを認識して、第12次5カ年計画に明記している。後は、結果を出すことだ。そのために、以下の政策が重要になる。革新へのインセンティブを高める。技術基盤を厚くする。人的資本への投資を増やす。金融部門を発展させる。国内企業にも外国企業にも同じ競争政策を適用する。
相手の課題を理解せよ
米中両国に求められる要件がこのようなものであるなら、互恵的で生産的な関係は、比較的単純な方法で築くことができる。
中国は今後も先進国の市場と技術を必要とする。しかし、それだけに頼らず、独自の知識とスキルを培っていくべきだ。この点で米国は中国の力になれる。世界の技術革新を推進しているのは、やはり米国だ。一方、米国は、成長する中国市場への参入と、中国市場での平等な競争を必要としている。金融部門についても同じことが言える。
米国が長期的に健全な経済を保とうとするなら、財政の均衡を回復し、国内消費に頼りすぎることのない持続可能な成長パターンを確立することが何より大切になる。これには、単に輸入を抑えるのではなく、輸出を拡大することで経常赤字を継続的に縮小していく必要がある。中国の需要がその助けになる。中国経済は規模においても質においても成長を続けている。現時点で中国との関係を強化することは決して応急措置ではない。見返りの大きな将来への投資と言える。
米国が経常赤字を削減することは、中国にもプラスに働く。中国は3兆2000億ドル相当の外貨準備を抱える。その大半はドル建て資産だ。この準備金は、次第に巨大なリスクになりつつある。米国が国際均衡に向かえば、中国は外貨準備を徐々に減らすことができる。頭の痛い資産管理が楽になる。
中国と米国は、相手が抱える新たな構造的課題を深く理解することで、どの分野で協調すれば互いに利益を得られるかを、明確にできる。両国関係の構図は単純だ。中国は成長のために米国の技術革新を、米国は成長のために中国市場を必要としている。この共生関係を生かすには、両国が協力し合い、まとまった投資をし、それぞれの改革を進めていく以外に道はない。
国内独占掲載 : Michael Spence © Project Syndicate
日経ビジネス2012年5月7日号100〜101ページ
−米中新時代を築く時−
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