「Project syndicate」

米中新時代を築く時

米国は中国の市場を、中国は米国の技術を必要とする

バックナンバー

2012年5月9日(水)

2/3ページ

印刷ページ

 中国の役割は変わり始めた。かつて欧米で消費される安価な商品を供給していた中国は、今では欧米製品の重要な顧客となりつつある。

 これは先進国にとって大きな機会だ。先進国はこれを足がかりに、成長と雇用を再び均衡させることができる。ただしそのためには、進化するサプライチェーンの中で適切な位置を占めるべく競争する姿勢を持たなければならない。

 中国国民の所得拡大は、中国に構造的変化をもたらす。成長が続けば、当然、高付加価値製品の生産へとシフトするからだ。技術や知識は依然として重要だ。中国は欧米からツールやスキルを吸収するだけでなく、独自の新技術を生み出す必要もある。

米国は貿易インフラへの投資を

 米国の政策について見る。こうした構造的変化に対応するために、貿易の拡大を目指す必要がある(この時、特に雇用を念頭に置くべきだ)。これまでよりも幅広い分野において海外需要を取り込む。具体的には、教育と投資に目を向けなければならない。

 中流層に新たな雇用機会を提供するには、質の高い教育と今より効率的な能力開発が極めて重要になる。

 一方、米国企業が世界のサプライチェーンから外れている現状を正すには投資が必要だ――特に中規模企業が課題を抱えている。米国には商社と貿易インフラが不足している。米国よりも経済を開放している小さな国は、世界市場と結びつくために商社や貿易インフラを整備してきた。

 もちろん、こうした課題は一夜にして改善できるものではない。しかし、現状は投資と政策によって改善していける。米国が持つ政策オプションの中には、比較的単純ながら、すぐに効果が得られるものがある。例えば外国から、特に中国からの直接投資を阻む障壁を撤廃することだ。


関連記事

Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
内容は…
この記事は…
コメント0件受付中
トラックバック
著者プロフィール

マイケル・スペンス氏

情報と市場の関係に関する研究でノーベル経済学賞を受賞。米ニューヨーク大学スターン経営大学院教授、米スタンフォード大学フーバー研究所シニアフェローなどを務める。



このコラムについて

Project syndicate

世界の新聞に論評を配信しているProject Syndicationの翻訳記事をお送りする。Project Syndicationは、ジョージ・ソロス、バリー・アイケングリーン、ノリエリ・ルービニ、ブラッドフォード・デロング、ロバート・スキデルスキーなど、著名な研究者、コラムニストによる論評を、加盟社に配信している。日経ビジネス編集部が、これらのコラムの中から価値あるものを厳選し、翻訳する。

Project Syndicationは90年代に、中欧・東欧圏のメディアを支援するプロジェクトとして始まった。これらの国々の民主化を支援する最上の方法の1つは、周辺の国々で進歩がどのように進んできたか、に関する情報を提供することだと考えた。そし て、鉄のカーテンの両側の国のメディアが互いに交流することが重要だと結論づけた。

Project Syndicationは最初に配信したコラムで、当時最もホットだった「ロシアと西欧の関係」を取り上げた。そして、ロシアとNATO加盟国が対話の場 を持つことを提案した。

その後、Project Syndicationは西欧、アフリカ、アジアに展開。現在、論評を配信するシンジケートとしては世界最大規模になっている。

先進国の加盟社からの財政援助により、途上国の加盟社には無料もしくは低い料金で論評を配信している。

⇒ 記事一覧

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン