中国の役割は変わり始めた。かつて欧米で消費される安価な商品を供給していた中国は、今では欧米製品の重要な顧客となりつつある。
これは先進国にとって大きな機会だ。先進国はこれを足がかりに、成長と雇用を再び均衡させることができる。ただしそのためには、進化するサプライチェーンの中で適切な位置を占めるべく競争する姿勢を持たなければならない。
中国国民の所得拡大は、中国に構造的変化をもたらす。成長が続けば、当然、高付加価値製品の生産へとシフトするからだ。技術や知識は依然として重要だ。中国は欧米からツールやスキルを吸収するだけでなく、独自の新技術を生み出す必要もある。
米国は貿易インフラへの投資を
米国の政策について見る。こうした構造的変化に対応するために、貿易の拡大を目指す必要がある(この時、特に雇用を念頭に置くべきだ)。これまでよりも幅広い分野において海外需要を取り込む。具体的には、教育と投資に目を向けなければならない。
中流層に新たな雇用機会を提供するには、質の高い教育と今より効率的な能力開発が極めて重要になる。
一方、米国企業が世界のサプライチェーンから外れている現状を正すには投資が必要だ――特に中規模企業が課題を抱えている。米国には商社と貿易インフラが不足している。米国よりも経済を開放している小さな国は、世界市場と結びつくために商社や貿易インフラを整備してきた。
もちろん、こうした課題は一夜にして改善できるものではない。しかし、現状は投資と政策によって改善していける。米国が持つ政策オプションの中には、比較的単純ながら、すぐに効果が得られるものがある。例えば外国から、特に中国からの直接投資を阻む障壁を撤廃することだ。