「オバマ再選の行方」

「雇用を輸出したのは誰だ」――オバマの強烈なパンチにたじろぐロムニー候補

共和党の「切り札」は副大統領候補

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2012年5月9日(水)

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本命は元USTR代表のポートマンか、「ラティーノの星」ルビオか

 サバト教授が第1陣に挙げた4人は、いずれも40〜50歳代の、共和党を背負って立つホープばかりだ。そのうち3人は激戦が予想されるいわゆる「スウィング・ステート」を地盤にする上院議員や下院議員である。

 これまで知事出身の大統領候補は、ワシントンでの経験を持つ上院議員や下院議員をランニングメートに選ぶケースが多かった。

 例えば、クリントン大統領候補(元アーカンソー州知事)は1992年、アル・ゴア上院議員(テネシー)を、ブッシュ大統領候補(元テキサス州知事)は2000年、元下院議員(ワイオミング)のチェイ二ー元国防長官を、それぞれ副大統領候補に指名している。

 また外交、安全保障分野での経験のないロムニー知事としては、米通商代表部(USTR)代表経験を持つポートマン上院議員や、下院予算委員長として幅広い視野から政策全般を見てきたライアン下院議員は打ってつけと言える。

 4人のうちルビオ上院議員(フロリダ)とジンダル州知事(ルイジアナ)の2人はマイノリティ(少数民族)の出身。ルビオ氏はラティーノ、ジンダル州知事はインド系(アジア系)だ。どちらかと言えば民主党寄りの少数民族の票を狙うには重要な要素になる。

 ジンダル知事は弁舌さわやかな政治家である。今年、オバマ大統領の年頭一般教書に反論する共和党一般教書を読み上げた。オックスフォード大卒の肩書は「知的シンボル」ともなる。一方のルビオ氏はラティーノ社会の「ライジング・スター」。草の根保守「ティー・パーティ」(茶会)から圧倒的な支持を得ている。

20人の候補者リストにカトリックはなんと11人

 予備選が進む中で、南部、中西部のキリスト教保守によるモルモン教嫌いは、若干和らいできた。とは言え、モルモン教徒であるロムニー候補にとって、プロテスタント・メーンライン(主流)のメソジスト信者であるポートマン氏は組み合わせとしては最適。

 第1群に属す副大統領候補者を見ると、ポートマン氏を除く他のすべての候補がカトリック教徒というのも面白い。

 ちなみにサバト教授が挙げた23人の候補者のうち、カトリック教徒は11人、キリスト教保守(エバンジェリカルズ)は4人。プロテスタントのメーンライン(長老派、メソジスト)は6人。残り2人は宗派に属さないクリスチャンとなっている。いずれにせよ、カトリック教徒の政界進出が目覚しいことを如実に示している。

 第1群のトップに挙げられているポーツマン氏の「弱点」は、ブッシュ政権下で行政予算管理局長やUSTR代表として起用されたこと。ロムニー陣営は、イラク戦争の「負の遺産」を残して去ったブッシュ政権とはできるだけ距離を置こうとしているからだ。


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著者プロフィール

高濱 賛(たかはま・たとう)

高濱 賛=在米ジャーナリスト。米パシフィック・リサーチ・インスティテュート所長。元読売新聞ワシントン特派員、総理官邸キャップ、政治部デスクを経て、同社シンクタンク・調査研究本部主任研究員。1995年からカリフォルニア大学ジャーナリズム大学院客員教授、1998年から同上級研究員。「中曽根外政論」「アメリカの歴史教科書が教える日本の戦争」など著書多数。



このコラムについて

オバマ再選の行方

2012年、日本を取り囲む国々のトップが代わる可能性がある――米国、中国、ロシア、韓国。
どの国よりも日本に影響を与えるのが、米大統領選の動向だ。

歴史を振り返ると、多くの米大統領が2期を務めている。
しかし、オバマ大統領は再選を果たせるのか?

同大統領は、医療保険制度の改革という公約を果たした。
しかし、これに覆そうとする共和党が議会下院で過半数を握る。
同大統領は、アフガニスタンからの2011年7月からの撤退開始も、公約通りに宣言した。
しかし、アフガン情勢は不安定で、撤退がスケジュール通りに実行できる保証はない。
経済再生を優先するために抱えた巨額の赤字は、批判の的になっている。

果たしてオバマ大統領は再選できるのか?
2012年大統領選にかかわる出来事をタイムリーに取り上げ、解説する。

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