「オバマ再選の行方」

「雇用を輸出したのは誰だ」――オバマの強烈なパンチにたじろぐロムニー候補

共和党の「切り札」は副大統領候補

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2012年5月9日(水)

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 有権者に対しては、細かな政策論よりも、「成功例」を端的に表現したワン・フレーズ(ひと言)の方がインパクトがある。これは、共和党の予備選でもしばしば見られた現象だ。

 ロムニー候補がオバマ大統領の外交・安全保障政策を批判しても、オバマ陣営は「誰があのビンラディンを殺したのかね」とやり返す。「Bin Laden is dead」と言いさえすればいい。

 ブッシュ大統領(当時)がビンラディン追跡作戦に力を入れていた07年、ロムニー氏は、「1人の人間を追いかけるのに何十億ドルもの資金を使っている。果たしてそれほど価値のあることかどうか」(AP通信とのインタビューで。4/26/2007)とコメントしていた。

 それだけにロムニー氏にとっては「ビンラディン殺害」を素直に喜べない。ロムニー氏は4月30日、ニューハンプシャー州ポーツマスでの集会で、「確かにオバマ大統領はビンラディン殺害を命じた。だが(弱腰でイランでの米人救出作戦で失敗した)ジミー・カーターでも殺害命令は出せた」とオバマ大統領にジャブを浴びせた。

オバマ大統領は、日米首脳会談後の記者会見でロムニー批判

 これに対してオバマ大統領は同日、野田佳彦首相との首脳会談後の記者会見で鮮やかなパンチを食わせた。「人というものは、その時思っていたことを口に出す。あの時はこう言っていたが、今はこう思うと言い直している人について、私はとやかく言うつもりはない。その人自身が釈明すればいいことだ」

 頭が良いにもかかわらず、どうも一言多いのがロムニー候補。しかも言った後に前言を平気で覆す。予備選を通して、他の候補が常に批判してきたロムニー候補の弱点だ。オバマ陣営は前哨戦からそこを激しく突いているのだ。

アメリカの雇用を海外に「輸出」しているのはどこの誰だ

 ロムニー候補のアキレス腱は、Flip-flop(前言を覆す)だけではない。億万長者というイメージが一般大衆を遠ざけている。しかも大金持ちのくせに節税にかけては徹底している。ブッシュ前政権が残した富裕層向けの優遇税制をめぐる民主、共和の対立と絡んで、ロムニー候補の節税対策は裏目に出ている。

 オバマ陣営は5月に入るや、その点に絞って攻撃を開始した。

 オバマ支持のスーパーPAC「Americans for Prosperity」は、Romney Failed to Disclose Swiss Bank Account Income"(ロムニーはスイス銀行口座公表せず)と題するテレビスポットを流し始めた。

 対象にしたのは、11月の本選挙で激戦が予想されるオハイオ、バージニア、アイオワの3州だ。最新の世論調査では、オハイオ、バージニアともに両候補は全くの互角。オハイオはオバマ44%、ロムニー42%。バージニアはオバマ43%、ロムニー44%となっている(Quinnipiac University 5/3/2012)


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著者プロフィール

高濱 賛(たかはま・たとう)

高濱 賛=在米ジャーナリスト。米パシフィック・リサーチ・インスティテュート所長。元読売新聞ワシントン特派員、総理官邸キャップ、政治部デスクを経て、同社シンクタンク・調査研究本部主任研究員。1995年からカリフォルニア大学ジャーナリズム大学院客員教授、1998年から同上級研究員。「中曽根外政論」「アメリカの歴史教科書が教える日本の戦争」など著書多数。



このコラムについて

オバマ再選の行方

2012年、日本を取り囲む国々のトップが代わる可能性がある――米国、中国、ロシア、韓国。
どの国よりも日本に影響を与えるのが、米大統領選の動向だ。

歴史を振り返ると、多くの米大統領が2期を務めている。
しかし、オバマ大統領は再選を果たせるのか?

同大統領は、医療保険制度の改革という公約を果たした。
しかし、これに覆そうとする共和党が議会下院で過半数を握る。
同大統領は、アフガニスタンからの2011年7月からの撤退開始も、公約通りに宣言した。
しかし、アフガン情勢は不安定で、撤退がスケジュール通りに実行できる保証はない。
経済再生を優先するために抱えた巨額の赤字は、批判の的になっている。

果たしてオバマ大統領は再選できるのか?
2012年大統領選にかかわる出来事をタイムリーに取り上げ、解説する。

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