「オバマ再選の行方」

「雇用を輸出したのは誰だ」――オバマの強烈なパンチにたじろぐロムニー候補

共和党の「切り札」は副大統領候補

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2012年5月9日(水)

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 対抗馬リック・サントラム元上院議員、ニュート・ギングリッチ元下院議長が脱落し、ミット・ロムニー元マサチューセッツ州知事(65)が共和党大統領候補指名を確実にした。だが、共和党大統領候補というタイトルを正式に手中に収めるのに、今しばらく時間がかかる。ロムニー氏が獲得した代議員数は5月5日現在で865人(2012 Republican Delegates, Real Clear Politics)。正式指名に必要な代議員数1144人を獲得できるのは、早くても5月20日のテキサス州(代議員数155人)予備選を待たなければならない。

 その間、いくつかの州で予備選が実施される――5月8日にはノースカロライナ(同55人)、インディアナ(同46人)、ウエスト・バージニア(同31人)。同15日にはネブラスカ(同35人)、オレゴン(同28人)。同22日にはケンタッキー(同45人)、アーカンソー(同36人)。だが、これらの予備選で完勝してもロムニー氏の獲得代議員数は1144人に満たない。

バンパースティカーは「Bin Laden is dead and GM is alive」

 ロムニー候補がde facto Nominee(事実上の共和党大統領候補)になるのを待っていたかのように、オバマ陣営がロムニー攻撃を始めた。

 ロムニー候補とオバマ大統領が、それぞれの党の正式な大統領候補になるのは党大会の日だ。それまでには百十数日ある。さらに本選挙までは6カ月もある。にもかかわらず、ゴングが鳴る前から、オバマ陣営は強烈なパンチを繰り出している。

 4月26日にはジョセフ・バイデン副大統領が、ロムニー候補が2008年11月18日付けの「ニューヨーク・タイムズ」に寄稿した論文、「Let Detroit Go Bankrupt」(デトロイトの自動車メーカーは倒産させてしまえ、("Let Detroit Go Bankrupt," Mitt Romney, New York Times, 11/18/2008)を標的に一撃を加えた。

 バイデン副大統領は4月26日、ニューヨーク大学での講演で開口一番こう言い切った。「Bin Laden is dead and GM is alive」(ビンラディンは死んだが、GMは健在だ)。国際テロリスト集団、「アルカイダ」の指導者、オサマ・ビンラディン殺害から1周年を迎える、この時期にタイミングを合せたキャッチフレーズだった("Biden: Bin Laden is dead, General Motors is alive," David Jackson, USA TODAY, Biden: Bin Laden is dead, General Motors is alive, 4/26/2012)。

 オバマ大統領を当時、次々と倒産しかけたGMやクライスラーを救済するために60億ドルの公的資金を投入した。ロムニー氏は、これを激しく批判した。結果は、公的資金を得たGMやクライスラーは見事に立ち直り、米自動車業界は新たに20万人の雇用を創出した。

 バイデン副大統領は、「どちらが正しかったか、答ははっきりしている。選挙中のバンパースティカーはこれで決まりだ」と胸を張った。 バンパースティッカー(Bumper sticker)とは、車のリアバンパーに自分の支持する候補者名や政治的主張などを貼り付けるスティッカーのことだ。車社会のアメリカでは今や生活習慣の一部になっている。


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著者プロフィール

高濱 賛(たかはま・たとう)

高濱 賛=在米ジャーナリスト。米パシフィック・リサーチ・インスティテュート所長。元読売新聞ワシントン特派員、総理官邸キャップ、政治部デスクを経て、同社シンクタンク・調査研究本部主任研究員。1995年からカリフォルニア大学ジャーナリズム大学院客員教授、1998年から同上級研究員。「中曽根外政論」「アメリカの歴史教科書が教える日本の戦争」など著書多数。



このコラムについて

オバマ再選の行方

2012年、日本を取り囲む国々のトップが代わる可能性がある――米国、中国、ロシア、韓国。
どの国よりも日本に影響を与えるのが、米大統領選の動向だ。

歴史を振り返ると、多くの米大統領が2期を務めている。
しかし、オバマ大統領は再選を果たせるのか?

同大統領は、医療保険制度の改革という公約を果たした。
しかし、これに覆そうとする共和党が議会下院で過半数を握る。
同大統領は、アフガニスタンからの2011年7月からの撤退開始も、公約通りに宣言した。
しかし、アフガン情勢は不安定で、撤退がスケジュール通りに実行できる保証はない。
経済再生を優先するために抱えた巨額の赤字は、批判の的になっている。

果たしてオバマ大統領は再選できるのか?
2012年大統領選にかかわる出来事をタイムリーに取り上げ、解説する。

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