なにわ人模様:阪大サイバーメディアセンター教授・菊池誠さん /大阪
毎日新聞 2012年05月08日 地方版
ただ、「3月11日」以降、問題は怪しげな商品だけにとどまらなかった。「放射能がうつる」「どれだけ少量の被ばくでも遺伝的な影響が出る」といった既に否定された考えがもとになり、福島県からの避難者への差別が報じられた。「いまは避難するのも、とどまるのもどっちも当事者の決定として尊重する段階。決定を誰かが非難することはおかしいし、避難先での差別もあってはならない」
先月、東京都内で福島に住む市民の声を聞く会に参加した。放射性物質に汚染された地域の中で、住民の手で暮らしを取り戻す動きがある。現地の声に心を動かされた。
「現状は絶望的」。そう語る科学者もいるが、「僕は同意しない。自分ができることをやる」と動きはじめている。力を入れているのが市民を対象にした少人数の学習会だ。放射能問題を読み解く基本知識から話を始め、質問にも丁寧に答える。申し出があれば全国各地に出向くという。「リスクを判断する助けになればいい」。【石戸諭】