＜亀岡の車暴走＞ 「十分に頑張ったね。真緒」　犠牲の７歳

　アイドルに憧れた７歳の少女は、病院搬送の途中で２度も心臓の鼓動を取り戻したが、やがて力尽きた。京都府亀岡市で先月２３日、無免許運転の車が集団登校の児童の列に突っ込んだ事故は７日、発生２週間を迎えた。犠牲になった市立安詳（あんしょう）小２年、小谷（おだに）真緒さん（７）の両親が毎日新聞の取材に応じ、最愛の娘を失った悲しみを語った。

　真緒さんは、姉愛奈（えな）さん（８）＝同小３年＝と妹優奈（ゆな）さん（５）の３人姉妹の真ん中。事故当日の朝、いつものように愛奈さんと自宅を出た。玄関で見送る父真樹さん（２９）に、２人は振り向いてはにかんだ。

　そのわずか後、集団登校の列の後方にいた真緒さんに、暴走車が直撃した。前方の愛奈さんは軽傷だった。

　真樹さんと母絵里さん（３０）は真緒さんが運ばれた兵庫県豊岡市の病院に車で急行した。「真緒、頑張れ」。絵里さんは祈り続けた。

　病院に着くと、医師が言った。「これ以上の処置は難しい」。午後１時２１分、真緒さんの死亡が確認された。

　真緒さんは救急車で運ばれる途中で心臓が止まったが、救命処置で鼓動を取り戻した。しかし、豊岡の病院に向かうドクターヘリの中で再び止まった後、もう一度動き出した。ただ、長続きはしなかった。

　絵里さんは病院で、対面した真緒さんに語りかけた。「十分に頑張ったね。こんなに大けがをしているのに、『頑張れ』なんて思ってごめんね」

　真緒さんはアイドルグループ「ＡＫＢ４８」の大ファンだった。好きなメンバーになりきって振り付けも覚えた。無言で帰宅した真緒さんに、両親はアイドルが着るようなピンクのドレスを着せた。

　「明るく元気で、いつも周囲を笑わせてくれた。言い出したら切りがないくらい良い子だった」。学校かばんなどの遺品を見つめながら、絵里さんは言葉を詰まらせた。

　姉と妹が受けた傷も大きい。愛奈さんは「真緒ちゃんが帰るよう毎日祈っているの」とつぶやいた。優奈さんも「真緒ちゃんはお空に行っただけ。どうしてみんな泣くの？」と尋ねるという。

　「なぜこんな事故が起きたのか。徹底的に解明してほしい」。両親は最後にこう訴えた。【野口由紀】