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「一週間レンタルで300円」と書かれていると、店頭に延滞料金表は掲げられていても「延滞しなければいいんでしょ。私は延滞しないから」なんて、普段はゴミの日にゴミを出すことすらうっかり忘れるのに、その時だけはなぜか「私はちゃんと期日を忘れずに行動できる人間だ」というありえない前提でコストを見積もって、まるで実質的なコストが300円であるかのように錯覚してしまう人間という生物のセキュリティホールを突くと、会社の利益は増えることがある。

某DVDレンタルの会社に「レンタル商品の返却日をメール通知するサービス」を提案したら、「それをやると、利益率が落ちるから」という理由で却下された、という話を十年くらい前に聞いたのだけど、つまり、当時は会社側はユーザの「うっかりミス」による延滞料金で儲けることを確信犯的にやっていたわけだ。

実際には一定の確率で延滞するから、ユーザが「300円でこれで借りよう」と思ってレンタルするとき、店側は「これで310円ぐらいの売り上げだな」と思って貸し出していたりするわけだ。

錯覚を利用して稼ぐという点では、以下も似ている。

ケース どのように錯覚を利用したか
解約の方法をわざと分かりにくくしている有料ケータイサイト 「月々300円か」と思って登録し、3ヶ月後にそのサイトに興味がなくなって解約しようと思ったけど、解約の仕方がよく分からないままめんどくさくなって解約が2ヶ月先延ばしになったので900円のところを1500円払わされることになったのだけど、それはユーザ登録時には見えないコスト。
ネットで商品を買ったときにチェックボックスをうっかり外し忘れるとDMがじゃんじゃん来るようになるショッピングモール 1000円だな、と思って買うのだけど、一定の確率でDMチェックを外し忘れて、それによってDMがメールボックスにあふれることで迷惑する分のコストを金額換算すると1050円分ぐらいだったりする。
ユーザに分かりにくい形でユーザの行動履歴情報を広告会社に売り渡していた数ヶ月前までのはてなブックマークボタン 無料だと思って使っていたけど、気がつかないうちに広告会社に行動履歴を収集されていて、その会社の社員もしくは協力会社のエンジニアなどの関係者が、その情報を外部に持ち出したり、なんらかの事故が起こったりして漏洩する確率はゼロだとは言えず、その分のコストを気がつかないうちに負担させられていた。


そして、そのもっとも効果的なのものの一つが、コンプガチャのようなランダム報酬で引き起こされる錯覚なのではないか。


孫引きになるが、こちらの記事から転載:

 サルにランダムな報酬を与え、その心理学的効果を分析した研究が幾つかある。例えば、サルにある調教をし、それをするたびに褒美を与え続けた結果、サルはすぐにその努力が特別な褒美と結びついていると分かる。しかし今度はその作業をしても褒美を与えるのをやめてしまうと、非常に短期間のうちにサルはまったくその作業をしなくなる。褒美がもらえそうにもないのに、やるだけ労力が無駄だと分かるからだ。
 ところが褒美を一貫して与えるのではなく、完全にランダムなスケジュールで与えた場合、褒美がもらえなくなったサルの反応はまったく異なってくる。褒美を与えるのをやめても、その作業をしてももう二度ともらえないとは、サルにはわからない。そして褒美が与えられるたびに、その褒美はサルにとって嬉しい驚きとなる。その結果、サルの頭から仕事をサボる理由がなくなるのだ。たとえそれをしても褒美がもらえなくても、サルはひたすらその作業を続ける。場合によっては、永久的に続けるだろう。
 なぜランダムな褒美にのめり込みやすいのか、はっきりとは分からない。想像するに、予想外の嬉しい驚きがあったとき、脳内に自己陶酔をもたらす化学作用があるからではないだろうか。褒美がランダムだと、いつそれを受け取れるか、はっきり分からない。しかし素晴らしい喜びの感情を期待して、労力と能力を費やすのが苦にならない。事実、こうしたものにおぼれてしまいやすい人は多い。

【『ゾーン 「勝つ」相場心理学入門』マーク・ダグラス/世良敬明(せら・たかあき)訳(パンローリング、2002年)】


つまり、報酬がランダムになると、支払った金額に対して得られる価値の判断が狂ってしまうというバグみたいなものが、我々の脳にあるわけだ。

このセキュリティホールを突いてユーザの脳のハックすれば、「錯覚」を利用したビジネスがやり放題だ。

だから、これを利用したビジネスは何千年も前からあるし、それによる犠牲者も昔からいるし、それを禁ずる法律や規制も昔からあるわけで、実際には、法律や規制によって、それがなかなかできないようになっている。

ただ、敵が振り下ろしてくる剣をぎりぎりのところで見切って最小限しか下がらなければ、敵が剣を空振りした直後にすぐに踏み込んで反撃できるから有利に戦えるのと同じように、この手の法律も、法律すれすれのところでビジネスすれば、コンプガチャのように、一時的にしろ、大きく稼げるというわけだ。

つまり、この手の法律にはかならずグレーゾーンがあって、
そのグレーゾーンを、どこまで濃いところまで走れるかを競う
チキンレースの極北の一つが、コンプガチャなのではないか。

このグレーゾーンで稼ぐためには、法律や規制を定義している文言や過去の判例をよくよく読み込み、法律家に相談し、ぎりぎりの境界線を見極めるのが効果的かもしれない。

そして、コンプガチャを最初にやった人たちの「見切り」は達人クラスに思える。
業界の事情を知らないオイラのような門外漢が、普通に
「二以上の種類の文字、絵、符号等を表示した符票のうち、異なる種類の符票の特定の組合せを提示させる方法を用いた懸賞による景品類の提供はしてはならない。」(S52.3.1公取告示3号)
という文言を読むと、コンプガチャはどう見ても黒で、どうしてこれがいままでグレー扱いされていたのか、そのロジックがすぐには分からなかった。

後から『デジタルアイテムは「貸与」しているのであって「提供」したわけではない』という理屈を教えてもらって、実際にそんな理屈が通ったのかどうかは知らないけど、なるほど、無理やり屁理屈をこねようとすれば、こねられなくはないかもしれない、と思ったものだ。

もちろん、「自分が買ったデジタルアイテムは一時的に借りてるだけのものだ」という感覚のユーザなんてあんまりいなくて、多くのユーザは、「買ったデジタルアイテムは、自分の所有物だ」という感覚のユーザの方が多いだろう。だから、実質的には、『デジタルアイテムは「貸与」しているのであって「提供」したわけではない』なんていうのは屁理屈だろう。

逆に言うと、これは、こういう屁理屈を作り出すビジネスゲームなんじゃないだろうか。

「ユーザの感覚的にはギャンブルや富くじだと感じるもの」を、文言の解釈しだいで「ギャンブルでも富くじでもない」と言い張れるようなものを見つけ出したり開発したりして提供すれば、少なくとも、それが屁理屈であるという社会的コンセンサスができて監督官庁が動き出すまでの短い期間に荒稼ぎした金で他社のCTOを年収1500万円でヘッドハントしたりすることができるわけだ。

つまり、「ユーザの感覚と、法律上の定義のズレ」という金脈を掘り当てる、山師的なゲームだ。

ただし、実際の山師と異なるところは、掘り当てた金脈を、山師が独占できないところだ。
まるでゴールドラッシュの時代のように、一番儲けるのは、誰かが金脈を掘り当てたのをみつけたら、あとからガンガンそこに資本投下して最新の掘削機を何百台も買いそろえて、鉱山労働者を組織化しまくって、そこでの採掘が禁止されるまでの短い期間に、可能な限り多くの金を掘り出した企業が一番多くをぶんどっていくゲームだ。

これは、「どこまでモラルを捨てられるか」というゲームでもある。

「ユーザの感覚と、法律上の定義のズレ」を利用して儲けるビジネスは、実際には「倫理的には邪悪だけど、法律的には違法ではないこと」で儲けるビジネスになることが多い。

昔、某新聞社のケータイサイトの担当の人に対して、そのサイトを企画開発している外部のコンテンツプロバイダが「解約ボタンを深い階層の分かりにくいところに設置すれば、解約率が下がって利益が増えます」と提案したところ、「うちはそういうあこぎなことはしない会社ですから」と、その提案を却下したそうだ。

また、かつて「レンタル商品の返却日をメール通知するサービス」の提案を、「延滞料金による収入が減るから」という理由で却下したレンタルDVD会社も、去年辺りに、ようやくメール通知サービスをはじめたらしい。担当者が変わったのだろうか。

それに対して、コンプガチャで株価が大きく変動した某社は、解約がしにくいことでもよく話題になった。
ここに、「倫理的には邪悪だけど、法律的には違法ではないこと」で儲けるビジネスという点で、一貫性が見て取れる。

そもそもなんで「ランダム報酬によってユーザの脳をハックする」というやり方でのビジネスが歴史的に規制されてきたかというと、それによって顧客が不利益を被るからだ。それは騙し討ちであり、win-winの取引ではないからだ。それをwin-winだと主張するのが屁理屈でしかない、ということが、昔から知られていたからだ。

もちろん、お金を賭けると麻雀やモノポリーに異様な魅力が生じてまるで別のゲームになるように、ランダム報酬を上手くいれればソーシャルゲームにも独特の異様な魅力が生じて別のゲームになるのだろう。
アルコールが禁止されて、アルコールのないワインやビールしか売れないとしたら、ワインやビールの豊饒な食文化は死滅してしまうだろう。

つまり、ランダム報酬をサービスに組み込むこと自体を完全に否定してしまったら、将来的に娯楽文化の豊饒な世界が大きく損なわれてしまう可能性がでてくる。

このため、ランダム報酬自体を完全に禁止する法律や規制は作れず、だからこそ、そこを逆手にとって、ギリギリのところでランダム報酬によるセキュリティホールを使ってユーザから多くのお金を巻き上げるビジネスは、今後もなくならない。

だから、「倫理的には邪悪だけど、法律的には違法ではないこと」で儲けるという方針で経営しされている企業は今後も、新しい「金脈」を見つけては、そこでの採掘が禁止されるまでそこで掘りまくるということを続けていける可能性もけっこうあるのではないかと思う。

つまり、「最もモラルを捨てきった者が最も利益を上げられるビジネスゲーム」という構造は、今後も残るだろうし、そこでなくなったとしても、別なところでまた同じ構造のゲームが生じるだろう。

「正直は最大の戦略である」とよく言われるけれども、
実際には、正直にやったためにユーザの信頼を勝ち得てブランドを確立して成功する企業がある一方で、
徹底的にモラルを捨てきって「倫理的には邪悪だけど、法律的には違法ではないこと」で儲けて「成功」と言われてる企業もあるわけで、格言なんて、ただのポジショントークだったりすることが多いよな、なんて言っているとひねくれた中学生のようだけど、「正直にやった企業だけ生き残る世界をみんなで一緒に作っていきましょう」なんてことを頑張りだすと、善意によって作られた規制が新しいビジネスの芽まで潰しちゃうようなことも起きがちなので、なんとも難しいところだな、と思ったりするわけです。

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marmot_p
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miza
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