八王子Pは07年に都内の理工系大学に入学。プログラミングなどを学び、将来はSE職を目指す大学生だった。音楽が好きで、イベントなどでDJをすることもあったが、それ以外の音楽経験は特にない。IT系の会社に入るつもりで、プロのミュージシャンになろうとは「まったく考えていなかった」。そんな彼が著名なボカロPとなったきっかけは、当時、ニコ動を席巻していた人気のボカロP「kz」率いるユニットの人気曲をニコ動で聞いたことだった。
■クリエーターがクリエーターを呼ぶ好循環
「あんなかっこいい曲を自分も作ってみたい」。独学で作曲を学び始めた八王子Pは、約1年後の09年12月、ニコ動に「エレクトリック・ラブ」を初投稿。軽快なテクノポップの処女作は、いきなり10日で10万再生を記録するヒット作となり、一躍、ニコ動の有名人となった。
作曲はすべてコンピューターによる「打ち込み」で、楽器は使わない。音楽理論を勉強したわけではないが、「好きな曲をひたすら耳コピすると、和音の法則が見えてきた」。続く楽曲もユーザーの支持を受けヒットを連発。ボカロファンのあいだで人気が高まり、イベントなどで自主制作のCDを1枚1000円で販売すると2000枚も売れた。
「CDを出しませんか」「契約しませんか」。昨年夏になると活躍がレコード業界関係者の目に止まり、複数の誘いが舞い込んだ。そして今年2月、ボカロ曲を集めたCDアルバムでメジャーデビューを果たす。契約を結んだ所属事務所は、くしくも憧れていたkzさんと同じ会社だ。
八王子Pは振り返る。「この2年の変化はものすごかった。今の自分を、ボカロを始めた当時はぜんぜん想像できていない。やっぱりニコ動にチャンスをもらえたおかげだし、ニコ動での活動を通じていろんな人とつながることができた」
クリエーターが新たなクリエーターを呼び込むという好循環。ニコ動発コンテンツの活躍の場は、着実に広がりを見せている。
■既存メディアにも影響力
初音ミクが歌う「テル・ユア・ワールド」が採用されたグーグルのテレビCM(ユーチューブより)
エクシングが展開するカラオケ「JOYSOUND」には1700曲以上ものボカロ曲が蓄積され、歌われたランキング上位には著名ボカロ曲が著名アーティストの曲と肩を並べている。kzさんによる新曲「テル・ユア・ワールド」は、先の年末年始に放映されたグーグルのテレビCMに起用され、話題を呼んだ。3月のCD発売初週にはオリコンランキングの4位にランクイン。ボカロ曲の初週販売では最高の3.3万枚を売り上げた。
八王子Pも負けじと活動領域を広げている。今年2月、NHKの番組「週間ニュース深読み」で初音ミク特集があった際に依頼されて作ったボカロ曲は、そのまま同番組のエンディングテーマに採用された。聞いたNHKのスタッフが絶賛し、その場で決まったという。
もはや、既存のメディア産業やエンターテインメント産業にまで影響力を及ぼすニコ動発のクリエーターたち。ボカロPだけではなく、歌い手や踊り手などからも「スター」が誕生しつつある。
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