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現実主義に目覚めよ、日本!

第73回
日本の経験がこれからの世界を動かす

東京財団前会長 日下 公人氏
2008年4月17日

 前回は「日本になろう」としている米国と、昔の米国を追いかけている日本について書いた。新しい米国はもう折り返してきている。それなら日本は、古い日本へ戻るべきだ。古い日本の中を探すと、もっとよい答えがある。それは、外国のほうが先に見つけ始めている。

 麻生太郎さんは、外務大臣のときにカンボジアに行って、こんなことを言われたという。「カンボジアは新しい国だから、いろいろなことをどう進めていいか分からない」。カンボジアの人たちが悩んでいることの大半は、実は日本が復興するときに同じように悩んだことだったから、麻生さんは「日本はそれらを全部経験してきました。ですからその経験をお教えしましょう」と言った。

 するとカンボジアの人たちは「いや、もう既に、日本から来て教えてくれている日本人女性がいます。その女性が、カンボジアの民法や民事訴訟法などをすべてつくってくれています」と言ったという。

 親族関係や争いごとの解決方法などを定めた民法は、その国そのものと言っても過言ではない。それを、日本人がつくっているというのだ。おそらく日本人がつくったものの中で、カンボジアの人たちが気に入ったものだけを採用するのだろうが、それは「カンボジアが日本になる」というようなことである。日本人は、カンボジアをつくってあげているのだ。

 新興国は、とにかく日本に学びたい。文化を教えてくれ、いろいろなことをすべて教えてくれという状態になっているそうだ。そこでわたしが、「中国もそうなるんじゃないですか」と麻生さんに聞いたら、「オリンピックの後に雪崩を打ってそうなるかもしれない」と彼は答えた。

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