SNS各社の提供するソーシャルゲームコンテンツが違法に当たるとして、報道各社は消費者庁が中止を要請すると報じた。これに対して消費者庁は、記事の内容を否定している。
ソーシャルゲームにおいて、特定のアイテムをそろえるとレアアイテムが入手できる、いわゆる「コンプリートガチャ」という手法がある。「ガチャ」は、カプセルトイ(ガチャガチャ)を模したもので、1回数百円でゲーム内アイテムが入手でき、さらに特定の組み合わせがそろうとレアアイテムが手に入る。
記事によると、「GREE」(グリー)や「Mobage」(DeNA)のコンプリートガチャについて、消費者庁が景品表示法(景表法)で禁じる懸賞に当たると判断し、近く見解を公表。ゲーム会社にこの手法の中止を要請し、応じない場合は景表法の措置命令を出す方針とされた。
なお、名指しされたグリーやDeNAではいずれも、消費者庁側から要請はなく、コメントできないとの立場を取っており、グリーでは、「仮に要請があるとすれば、真摯に対応したい」とコメントするに留まっている。両社の株式は売り注文を集め、いずれもストップ安の状況だ。
■ 福嶋消費者庁長官のコメント
消費者庁において景品表示法など、法律関連を管轄する表示対策課では、今回の報道について否定的なコメントをしている。担当者によると、4月24日に行われた、福嶋浩彦消費者庁長官の定例会見において、読売新聞側からソーシャルゲームに関する消費者庁側の見解を求められたという。会見の問答は、同庁のWebサイトに会見要旨として掲載されている。
福嶋長官は24日の会見において、「問題は、消費者庁としても注目して動きを注意深く見ている」と話し、SNS事業者が自主的な取り組みを始めていること、協力できるところは消費者庁としても協力するとの見解を示した。
さらに、「結論を出していない段階で、予断で話すことは避けたい。ソーシャルゲーム上のガチャなど、それ自体が直接景表法上で問題が生じる対象になることではないと思う」と述べ、コンプリートガチャの手法については、「場合によっては景品に当たるということも考えられる」と語った。福嶋氏は、消費者庁としてはまず、「考え方を整理し、考えを示すことが必要なのではないか。検討しているところである」とコメントした。
■ 報道を真っ向から否定
問われるのは、景表法における「絵合わせ」行為だ。表示対策課の担当者は、「会見で長官が指示した通り、検討が始まった段階。中止要請や措置命令などは何も決定しておらず、そういった考えもない。事業者名を出したこともない」とする。
担当者は、検討結果を公表するかどうかも現時点では未定であるとし、報じられた件について、「記事内容とは異なる」と否定している。
■ コンプリートガチャの現状
それでは、コンプリートガチャに関する苦情や被害はどういった状況にあるのか。エンドユーザーからの相談を受け付け、対処方法などを紹介する国民生活センターに相談状況を問い合わせた。
同センターの担当者は、コンプリートガチャに関する相談件数のみをピックアップすることは、データベース上、困難であるという。SNSに関する相談件数自体は抽出できるものの、SNSが普及拡大している現在の状況では相談内容は千差万別、多岐に渡るため、コンプリートガチャ関連の実情とは異なるとの見解を示している。
その上で担当者は、コンプリートガチャ関連の相談内容の一例について、3件の相談内容を明らかにした。相談は以下の通り。
【事例】
・強いカードを購入するため、ガチャポン方式でチャレンジしたところ、5万円を請求されてしまった。
・カード会社より高額な利用請求(2カ月で約50万円)があった。調べてみると、中学生の子供がゲームを利用していた。問題のあるゲームなので請求を取り消して欲しい。
・中学1年生の息子が友人に誘われ、携帯電話のカードゲームサイトに登録したところ、高額な料金を請求された。どうしたらよいか? 画面には10万円以上は利用できないと表示された。