【北京】留学目的で米国への出国を希望している盲目の中国の人権活動家・陳光誠氏の処遇をめぐって、両国政府当局者とも6日、梁光烈中国国防相のワシントン訪問を前に早期決着を望んでいることを明らかにした。関係者によれば、米政府は中国政府や陳氏と出国の手配について話し合いを続けている。
梁国防相は4日、公式訪米のため予定通りサンフランシスコに到着した。7日にワシントンでパネッタ米国防長官らと会談することになっている。中国の国防相の訪米は9年ぶりのことで、今年秋に米国では大統領選、中国では共産党大会が控えており、両国とも陳氏の出国問題がもたらす政治的な波紋を小さくしようと躍起になっている。
中国国営新華社通信によれば、梁氏はサンフランシスコ到着に際して、「中米はゼロサム・ゲームを争うライバルではなく、共通の利益が相違よりはるかに大きい互恵の関係にあるパートナーだ」と挨拶した。中国の外務省ならびにメディアとも6日現在、陳氏の問題については沈黙を保っている。
米国防総省によると、梁氏はサンディエゴの米海軍基地を訪問し、米側当局者との間で海賊対策作戦について話し合った。6日にワシントン入りし、週の後半にはフロリダ州やノースカロライナ州の米軍基地や、ニューヨーク州ウエストポイントの陸軍士官学校を訪れる。
ニューヨークのアジア・ソサエティーのアーサー・ロス米中関係センターのオービル・シェル所長は、米中の陳氏の問題へ対応について「レトリックや非難を最小限に抑え、実務的に成熟したやり方で解決を図った」と指摘、米中の問題処理の成熟ぶりを示していると評価した。
しかし、人権団体や外交関係者らは、陳氏が自身や家族の旅券の取得など出国に必要な手続きで問題に見舞われれば、直ぐに問題は再燃する恐れがあると慎重な見方をしている。人権活動家の中には、反体制派活動家が発効された旅券を没収されたりして渡航ができなくなったケースがいくつもあると指摘し、中国政府が約束を履行するかどうか疑問視する向きもある。
山東省の自宅に軟禁されていた陳氏は、北京に脱出し米大使館に保護された後、米中間の合意で中国国内の大学で法律を学ぶことになった。しかし妻や友人の活動家らとの話し合いの結果思い直し、米国への出国を希望するようになった。中国外務省は4日、陳氏は他の中国人と同様に自由に海外留学を申請できると発表、米政府も、中国政府が陳氏の旅券申請を認める意向を示したとし、中国当局は手続きを迅速に処理するものと期待していると表明した。
バイデン副大統領は6日、NBCテレビのインタビュー番組で、「米国は陳氏に直ちに査証を与える用意がある」とした上で、「我々は人権問題に関する姿勢をまったく後退させてはいない」と述べ、オバマ政権の対応は適切だと強調した。