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歌手・氷川きよし(34)が7日、奈良県内で全国ツアーをスタートさせ、“育ての親”である所属事務所会長の長良じゅんさんをしのびステージで号泣した。
長良さんが亡くなってから初めてとなるステージ。恩人への思いは“私事”と胸にしまい込んで臨んだものの、亡き人の追悼をテーマにした新曲「櫻」の途中でこらえきれず涙。ファンに励まされながらの熱唱となった。
米ハワイからの訃報が届いて5日目。長良さんを亡くした悲しみを胸にしまいこんでステージに立った氷川だったが、思い出とともに、あふれ出した涙が止まらなくなった。「ごめんなさい、こんな歌い方になって…」。
10曲目「櫻」の途中で歌声が詰まり始めた。何とか歌い切ったが、ファンに頭を下げてわびるうちに涙声に変わった。「東日本大震災で犠牲になった方や、亡くなった方への思いを込めた追悼の歌なんですが…すみません…こんな…」。下積み時代の自分を見いだし、演歌界のスターに育てあげてくれた長良さんと曲のテーマが重なり、最後はおえつを漏らし言葉にならなかった。
その後「櫻」のカップリング曲「出発」を歌い始めたが、何度も涙で声が途切れた。会場の1500人のファンからは「大丈夫よ!」「がんばれ、きよし!」と温かい声援が飛んだ。
デビュー曲「箱根八里の半次郎」をはじめ、多くの曲を長良さんがプロデュースし、今の氷川きよしがある。「デビュー13年目でやっとスタートライン。人生は楽しいことと悲しいことの繰り返しですが、何があっても前に進む気持ちをお伝えしていきたいです」。この日、ファンに向けて発した言葉は、故人への誓いでもあった。日本時間8日には長良さんの「ハワイ葬」が現地で営まれるが、氷川は参加せず、ファンの前に立ち続ける。
(デイリースポーツ提供)
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