<被災地の医療再建条件>
-新設の是非をめぐる議論をどう見ているか。
「文科省がことし1月に実施した意見公募では、大勢として、地域の医療を担う人材不足を心配する声が多かった。その後、岩手、宮城、福島3県の16市長から医学部新設の要望も出ている」
-地域医療の現状は。
<東北 しわ寄せ>
「医師の絶対数が足りないのは国際的に見ても明らかだ。そもそも、地域偏在することを見越して数を確保しておくべきなのに、国は医療費抑制のため医師数を減らそうと、1979年の琉球大(沖縄県)以来、医学部を新設してこなかった。そのしわ寄せが東北に及んでいる」
-新設反対派は「今の医学部入学定員増で、やがて医師過剰時代を迎える」と主張する。
「医師が余るなんてことはあり得ない。地域医療の人材が足りない上、日本では高度専門医療や新薬開発などに取り組む研究医療人材、海外で活躍する国際医療人材も不足している。中国に目を向けてほしい。爆発的に増加した人口がいずれ一気に高齢化する」
-新設には、医学部を有する地元の大学がそろって反対している。
「宮城の東北大は、世界有数の研究医療人材を供給できる日本の宝でもある。だから、地域の医療を担う人材の育成まで押しつけてしまってはもったいない」
「全国の医学部の配置は『西高東低』だ。これには廃藩置県の区割りが深く関わっている。戊辰戦争に負けなければ、福島は三つの県に分かれていたかもしれない。四国とほぼ同じ面積の岩手も同様だ。県が広いのに1校しかない」
-新設は果たして認可されるのか。
<西は非現実的>
「私見だが、全面解禁にはならないだろう。いくつか条件が付く。何より、被災地の医療再建に資すること。被災地にある既存の病院を、新医学部付属病院の分院や協力病院と位置付け、医師を継続的に供給する機能を持ってほしい。医師が被災地に通える範囲に本院がないと不便だから、西日本への新設は現実的でない」
「医師不足が深刻な東北を支える、そして既存の地域医療に影響を与えない。この二つがクリアされれば国民の賛同を得やすい。あとは、地元がどれだけ熱望するか。東北から強くメッセージを発信することが必要だ」
<すずき・かん> 1964年、神戸市生まれ。東大卒。通商産業省(現経済産業省)課長補佐などを経て2001年参院選で初当選し、現在2期目。09年9月~11年9月に文部科学副大臣を務めた。現参院文科委員会理事。48歳。