南海トラフ近くで“ゆっくり地震”5月7日 5時11分
東海から西の「南海トラフ」に近い海底で、3年前、通常の地震の数十倍以上の30秒から100秒というゆっくりとした速さで岩盤の境目がずれ動くタイプの地震が起きていたことが、専門家のグループの分析で明らかになりました。
地震の揺れが強くないのに津波が大きくなる、「津波地震」のメカニズムの解明につながるのではないかと期待されています。
東海から西の「南海トラフ」と呼ばれる海底付近では、陸側の岩盤の下に海側の岩盤が沈み込み、岩盤の境目では巨大地震が繰り返し起きています。
海洋研究開発機構などの研究グループが、紀伊半島沖の「南海トラフ」付近の海底に地震計を設置して調査した結果、3年前の平成21年の春、マグニチュード4程度の地震が繰り返し起きていたことが分かりました。
観測データをさらに分析したところ、これらの地震は、海側の岩盤が沈み込み始める「南海トラフ」に近い、比較的浅い部分で発生し、通常の地震の数十倍以上に当たる30秒から100秒ほどのゆっくりとした速さで岩盤の境目がずれ動いていたことが明らかになりました。
速度が遅いと、揺れはあまり強くならないということです。
「南海トラフ」では、400年余り前の江戸時代に起きた「慶長地震」の際、揺れはあまり強くないのに大津波が発生したという記録があり、岩盤の境目の比較的浅い部分が強い揺れを伴わずに大きくずれ動く「津波地震」だった可能性があると指摘されていました。
海洋研究開発機構の杉岡裕子研究員は「慶長地震は、今回観測された地震と同じメカニズムで起きていた可能性がある。より大きな規模の地震が発生すれば、揺れが小さくても大きな津波を引き起こすおそれがあるので、注意が必要だ」と話しています。
大津波を発生させる地震のメカニズム解明へ
静岡県の駿河湾から九州の太平洋沿岸にかけての海底には、「フィリピン海プレート」という海側の岩盤が陸側の岩盤の下に沈み込む、「南海トラフ」と呼ばれる谷のような地形が延びています。
「南海トラフ」沿いでは、岩盤どうしの境目にひずみがたまり、東南海・南海地震などの巨大地震が繰り返し起きてきましたが、地震で大きくずれ動くのは、岩盤が深く沈み込んだ部分だけで、今回、ゆっくりとした地震が発見された比較的浅い部分にはひずみがあまりたまらないと考えられてきました。
一方、去年3月に起きた東北沖の巨大地震では、「南海トラフ」と同じように海側の岩盤が沈み込んでいる、日本海溝の近くの比較的浅い部分が大きくずれ動き、津波が巨大化していたことが明らかになりましたが、その詳しいメカニズムは解明されていませんでした。
今回の発見によって、岩盤の境目の比較的浅い部分にも一定のひずみがたまり、地震を引き起こすことが裏付けられ、今後、大津波を発生させる地震のメカニズムの解明が進むものとみられます。
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