2011年 5月3日記念ハルキョンLASヨシュエス3点セット短編3 + おまけ超短編 アスカがドイツに帰るって!? セット
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涼宮ハルヒの憂鬱SS
ハルキョンVer.サブタイトル『捨てられない思い』
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文芸部室のハルヒ率いるSOS団による不法占拠からしばらく経った。
俺とハルヒが来た当初は壁際に置かれた本棚と簡素な机とパイプ椅子、そこでポツンと座って静かに本を読む長門しか居ない寂しかった部室も、今じゃあ物であふれ返っている。
手始めは朝比奈さんがハルヒに拉致されて来た事だ。
朝比奈さんのコスプレ衣装を提げるためのハンガー、そしてコスプレ写真を撮りまくってデジカメの容量が足りなくなると、隣のコンピ研からパソコンを強奪。
萌え要素だからと言って、朝比奈さんにメイド姿で居るように強要し、お茶を飲みたいがためにカセットコンロまで近所の店から調達した。
押し切られる形となった朝比奈さんも、最近は自分から様々なお茶に挑戦するようになってしまった。
そして次なる曲者は古泉。
初めの内はオセロやチェスなどの様な平凡なボードゲームしか持って来ていなかったのだが、俺の連勝が続くと、今度は軍人将棋や昔懐かしい野球盤など次々と変わり種のゲームを提案する。
さらにエスカレートして、「新世紀エヴァンゲリオン」のカードゲームの勝負を挑んで来るまでになりやがった。
最も、古泉が勝てるのは俺がルールを覚えるまでの間なのは変わらないんだがな。
そして部室に物が増える一番の原因は、団長である涼宮ハルヒだ。
あいつが思い付きでイベントをする度に、確実に文芸部室には相応しくない物が増えて行く。
退屈しのぎに野球大会に出た後は、バットや9人分のヘルメットなどの道具一式とチアガール衣装。
七夕で部員全員の短冊をつるした大きな笹も窓際に置かれ、反対側にあるクリスマスツリーと相まっておかしな雰囲気を醸し出している。
植物なのに枯れない所を見ると、どうやら造り物らしい。
本物だと世話や掃除が大変だからと、意外と合理的なやつだ。
窓際と言えば、あの夏休みから望遠鏡まで設置され、新聞で珍しい星座などが観れると話題になると、教師たちの目を盗んで夜まで学校に残り、天体観測に付き合わされるようにもなったな。
しかし映画撮影に使ったビデオカメラやレフ板などが、いつも俺が座る席の近くまで迫って来て息苦しさを感じるようになって来たのは確かだ。
だから俺は無駄な物を部室から出すようにハルヒに提案した。
「はあっ!? この部室のどこにゴミがあるって言うのよ!」
俺の言葉にハルヒは自信たっぷりにそう言い返しやがったが、俺も我慢の限界が来ていたから引き下がるわけにはいかなかった。
「例えばそのギター、文化祭が終わってからロクに弾いてもいないだろう」
「キョン、あんたはENOZの先輩達からもらったギターを捨てろって言うの!?」
「捨てろとは言わないが、自分の家へ持ち帰ったらどうだ。どうせ使っていないんだろう」
「嫌よ、これはあたしの元気の源の一つなんだから」
「どう言う事だ?」
「あたしはこのギターを見る度にね、あの文化祭でのライブの事を思い出して胸が熱くなるのよ」
「そうなのか?」
「するとね、あたしの頭の中にドンドンと楽しいアイディアが浮かんでくるのよ! それって素晴らしい事だと思わない?」
「そ、そうだな」
そう言って満面の笑みを浮かべたハルヒに、俺はついうなずいてしまう。
ああ、俺はついにこの笑顔に心を奪われて逆らえなくなっちまったんだな、と思った。
こうなっては仕方が無い、ここは古泉のやつに犠牲になってもらうとしよう。
ボードゲームのコレクションを家に持ち帰るように頼むと、やはり古泉は難色を示した。
だが俺は今度はボードゲームでは無く、コンピ研から譲渡されたノートパソコンでネットゲームで対戦をしようと提案すると了承を得る事が出来た。
苦肉の策だが、どうやら上手く行ったようだ。
ボードゲームが無くなり空いたスペースに他の荷物を収納する事によって、なんとか俺の席の息苦しさは解消された。
だけどこれもハルヒが新たなイベントを実行するまでの一時しのぎにすぎないんだろうな。
自分の私物は何も部室に置いていないのに、こんな目に遭うとは、「やれやれ」と言わずにはいられないぜ。
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英雄伝説 空の軌跡SS
ヨシュエスVer.サブタイトル『スニーカー・コレクター』
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リベール王国での事件を解決し、エステルとヨシュアは結社ウロボロスによって苦しめられている人々を助けるための旅に出る決意をした。
その初めの目標となったのが、レンを探し出して家族として迎え入れる事だった。
影の国の事件でレンからクロスベルに居ると聞いた2人は、遊撃士協会クロスベル支部に所属してレンを探そうと考えた。
クロスベル支部から住居として提供されたのは、遊撃士協会の近くにあるアパートの一室だった。
ロレントを旅立ってから、リベール国内の各街の支部を回っている間は、自分達だけの部屋を持てる機会は無かった。
だから偶然とは言え、自分達の自由に出来る部屋を持てた事にエステルは舞い上がってしまったのだ。
「エステル、こんなにたくさん買ってどうするつもりなのさ」
ヨシュアは部屋に並べられたストレガー社のスニーカーを見てため息をついた。
「新製品を見ると、つい買わずにはいられなくなって」
クロスベルは貿易の盛んな街、様々な国と地域の製品が輸入され、限定モデルなども売り出されている。
「君は女の子なのに、どうしてそんなにスニーカーが好きなの?」
「それは、あたしが小さかった頃に、父さんからもらったお土産が原因かな」
ヨシュアの質問にそう答えたエステルは、昔の思い出を語り始めた。
百日戦役で妻のレナが死んでしまい、残された娘エステルを傍で見守るためにカシウスは軍を退職して遊撃士となった。
しかし優秀な遊撃士として名が売れると、遠い外国からの依頼も舞い込むようになった。
カシウスは断る事が出来ず、長い間家を空けることも多くなってしまっていた。
「父さんは遠い街の仕事から帰って来た時、あたしに寂しい思いをさせてしまったからって、色々お土産を買って来てくれたのよ」
だがその頃、外遊びに夢中だったエステルは、すぐに壊してしまったり汚してしまったりするアクセサリーや洋服よりもスニーカーを欲しがったらしい。
「だから、あたしがスニーカーを集める様になったのは、父さんのせいなのよ!」
「いや、思いっ切り君のせいじゃないか」
苦しい言い訳をするエステルに、ヨシュアはあきれた顔でツッコミを入れた。
ヨシュアは正遊撃士としての自覚が足りないんじゃないかとエステルを諭した後、決定的な一言を告げる。
「ここは仮住まいなんだから、レンを見つけたら出て行かなくちゃいけないんだよ」
「大丈夫、2人で頑張ればロレントの家に持ち帰れない事も無いわ」
「僕にも運ばせる気なの?」
ヨシュアが尋ねると、エステルは両手を合わせて拝む。
「ごめん、どうしてもスニーカーだけは妥協できないのよ。神様、ヨシュア様、一生のお願い!」
「分かったよ、だけどほどほどにね」
飛び上がって無邪気に喜ぶエステルの笑顔を見て、ヨシュアは太陽のような眩さを感じた。
きっと昔のカシウスも同じ気持ちだったに違いないとヨシュアは思った。
「やれやれ」
自分の甘さに苦笑して、ヨシュアはため息をつくのだった。
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新世紀エヴァンゲリオンSS
LASVer. サブタイトル『葛城家ゴミ問題』
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コンフォート17の葛城家の間取りは3LDK。
ミサトが独りで住むのには十分すぎる広さだった。
寝室以外は物置のように使っていたミサトだったが、シンジとアスカを新しい家族として迎え入れ、それぞれに自分の部屋を与えると、事情は変わった。
ミサトは荷物を寝室に押し込んで耐えていた。
しかし、つい先日限界を告げる事件が訪れた。
ミサトの寝室を掃除しようとしたシンジが荷物雪崩に巻き込まれてしまったのだ。
何かが崩れる大きな物音とシンジの叫び声を聞いて駆けつけたアスカにより、シンジは何とか荷物の山から引っ張り出されて救出された。
これには堪らずシンジは、夕食の席でミサトに無駄な物は捨てる様に迫った。
「別にあたしの部屋なんてさ、無理して掃除する必要なんて無いのよ」
そう言って手をヒラヒラさせるミサトに対して、シンジは首を横に振る。
「そうは行きませんよ、ホコリっぽい部屋で寝るなんて体に悪いんですから」
「じゃあ、リビングで寝れば問題無いじゃない」
「だからと言って、部屋を片付けなくても良い理由にはなりませんよ」
シンジとミサトのやりとりを見て、アスカはあきれた様子でぼやく。
「まったくミサトってば、家ではだらしないんだから」
「それはアスカも同じじゃないか」
他人事のように言っているアスカにシンジの矛先が向かうと、アスカは驚きと怒りが混じった顔でシンジに食ってかかる。
「何ですって!?」
「アスカがリビングで寝っ転がって食べたお菓子のカスや読み散らかした本とか、全部僕が片付けているんだよ」
「あらあら、アスカも人の事を言えないじゃない」
今度はミサトがニヤニヤしてアスカをからかった。
「あ、あれは後でまとめて捨てようと思ったのよ」
「じゃあ何ヵ月も前の週刊誌なんて取っていないで、さっさと整理して捨てろよ」
「分かっているんだけど、アタシも忙しくて時間が無くてさ」
「テレビを見る暇はあるのに、何を言っているんだよ」
シンジが非難するようにアスカを責めると、アスカはウンザリした顔で答える。
「エヴァのパイロットなんだから、いろいろとストレスがたまるのよ」
「そうそう、あたしもネルフの仕事がキツイから、命の洗濯をいけないの」
「じゃあ僕のストレスは、どこで発散させたらいいんですか!!」
調子に乗ったミサトに向かってシンジは大声で叫んで、玄関から飛び出してしまった。
「はあ、はあ、ここは……」
息を切らせて辺りを見回したシンジは、以前ユニゾン特訓をしていた時にアスカが飛び出してしまった時に居た公園に自分が居る事に気が付いた。
(ははっ、あの時と立場が逆になるなんて、思いもしなかったよ)
シンジは出会った時から、ずっと強気なアスカに圧倒されっぱなしだった。
その後の学校生活でもシンジはアスカに苦手意識を持ってしまい、なるべく距離を取ろうとした。
だから突然ミサトからアスカと同居するように聞かされた時は逃げ出してしまいたかった。
しかしシンジとのユニゾンが上手く行かず、レイとの交代をミサトがほのめかすと、アスカは飛び出してしまった。
そしてミサトに言われるままに後を追ったシンジが公園に座り込むアスカを見た時、その背中は寂しげで泣いているように見えた。
幻想的な月明かりが、さらにアスカを華奢に感じさせたのかもしれない。
シンジは初めて自分の方からアスカに慰めの言葉を掛け、その時からアスカを単なる同居人から家族へと認識を変えた。
(もしかして、アスカ……? それとも、ミサトさんかな)
背後に人の気配を感じて、シンジは振り返った。
「やあシンジ君」
「……加持さんですか」
「おいおい、そんなガッカリするなよ」
「す、すいません。だけど、加持さんはどうしてここに?」
「影ながら君達の安全を守るのも、諜報部の仕事だからな。シンジ君の方こそ夜に家を飛び出して、どうしたんだ?」
加持に尋ねられたシンジが理由を話すと、加持は大きく噴き出した。
「加持さん、僕にとっては死活問題なんですよ」
「すまん、すまん。だが前は諜報部の連中が葛城の部屋のゴミを片付けていたんだ」
「汚れ仕事だからですか」
「はは、上手い事を言うな」
シンジの発言に乾いた笑い声を上げた加持は、穏やかにシンジに語り掛ける。
「だがな、君を家族として迎え入れてからしばらくして、葛城は諜報部に家へと近づく事すら許さなくなったんだよ」
その加持の言葉を聞いて、シンジは自分が家出をしてしまった時の事を思い返した。
第三新東京市から逃げ出そうとしたシンジを引き止めたミサトは、家へ帰ってからシンジの目の前で『サードチルドレン監督日誌』を破り捨てた。
それはミサトとシンジが形ばかりの家族から、本当の家族へとなった出来事だとシンジは考えていた。
「葛城もアスカも、家族としてシンジ君に甘えてしまったんだろうな。きっと今ごろは反省して、シンジ君を探しているはずさ」
加持の言う通り、シンジの目に辺りを探しながら近づいて来るアスカの姿が見えた。
嬉しさを隠しきれないシンジの表情が明るくなる。
「話を聞いてくれて気分が軽くなりました、ありがとうございます」
「ここで俺に会った事は、一応葛城には内緒にして置いてくれよ。葛城家の事情に諜報部は立ち入らない事になっているからな」
シンジは加持の言葉にうなずくと、ゆっくりとアスカの元へと歩いて行った。
心配そうな顔をしていたアスカは穏やかそうな表情のシンジを見ると、拍子抜けしたように声を掛ける。
「何よ、平気そうじゃない」
「冷たい夜風に当たって、気分が落ち着いたよ」
シンジがそう答えると、アスカは自分も風に当たりに来たのだと話した。
先ほどのシンジを探していたアスカを見れば、それはウソだとシンジにも分かる。
シンジは苦笑しながらアスカと一緒に葛城家へと帰った。
「あたしはシンジ君の気持ちに気付いてあげられなかったわ、これじゃあ保護者失格ね」
「そんな、気が付いてくれればいいんです」
しおらしく頭を下げて謝るミサトをシンジは許し、夜を徹しての葛城家のゴミ削減作戦が行われた。
だが、のど元過ぎれば熱さ忘れるの言葉通り、またシンジは荷物雪崩に巻き込まれてしまう事になる。
「やれやれ」
ゴミ溜めを繰り返してしまうミサト達に、シンジはあきれた顔でため息をついた。
しかしこれが葛城家の日常的光景だとシンジは受け入れてしまうのだった。
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おまけ超短編『アスカがドイツに帰るって!?』
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使徒との戦いが終わっても、アスカが日本に残ってくれると聞いた時は、僕はとても嬉しかった。
きっと日本に居れば委員長やミサトさんと一緒に居られるからだろう、でも理由はそうだとしても構わない。
僕がアスカの傍に居られる事には変わりが無いんだから。
小さい頃から独りに慣れてしまっていると思っていた僕だったけど、ミサトさんやトウジ達、そしてアスカと一緒に居ると心が満たされる気がするんだ。
「あのね、シンジ。アタシ、ドイツに居るママの所へ帰ろうと思うのよ」
アスカに打ち明けられた僕は、耳を疑った。
「何時……?」
「今度の連休よ」
「そんな急に!?」
アスカの返事を聞いた僕は、胸をえぐられる思いがした。
でも、アスカがお母さんと一緒に暮らしたいと思うのは当然の事だ。
僕にはアスカを不幸にしてまで引き止める権利なんて無い。
「そう……良かったね」
倒れそうになった僕は気力を振り絞ってアスカに微笑むと、逃げる様に自分の部屋へ入った。
明りの点いていない部屋は、まるで今の僕の心の中を表して居るかのようだった。
深い悲しみに捕らわれた僕の目から涙があふれだして止まらない。
ダメだ、こんな顔をアスカに見られたら……!
でも、今夜一晩ぐらいは泣いても構わないよね。
「シンジ、明りも点けないでどうしたのよ?」
突然、部屋のドアをアスカに開けられて僕は驚いて叫んでしまう。
「アスカ!?」
「アタシがドイツに帰るのは、連休中の数日だけよ」
「そうなんだ、良かった」
アスカの言葉を聞いて誤解が解けた僕は、心の底からホッとしてため息を吐き出した。
「怒ってないの?」
「別に、僕が勝手に落ち込んだだけだし」
「……紛らわしい言い方をして、シンジを試したアタシが悪かったわね」
アスカがそう言った後、僕の頬に柔らかい感触があった。
暗くて見えにくかったけど、これって……されたんだよね。
「Gute Nacht」
アスカが小さくつぶやいて立ち去った後、絶望のどん底から舞い上がってしまった僕は、興奮してしまってその夜はなかなか眠れなかった。
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