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核医学検査Q&A

Q21:放射能を受けると子供が出来なくなる恐れがありませんか?胎児への影響はないのでしょうか?

A:核医学検査で受ける線量では子供が出来なくなったり、胎児への影響はありません。

精巣に150mSv以上,卵巣に650mSv以上(いずれも急性被曝)の放射線を受けたときに一時的に子供が出来にくくなります。永久に子供が出来なくなるのは精巣に3.5Sv,卵巣に2.5Sv以上(いずれも急性被曝)の放射線を受けた時です。卵巣または精巣に受けた線量がこれよりも低い場合には、不妊が起こることはありません。

卵巣や精巣に受ける線量は妊娠の時期や核医学検査の種類によって異なりますが、いずれの検査にしても数回受けた程度では100mSvを超えることはありません(文献※1,※2,※4による)

胎児に奇形や大脳の発達の遅れなどの影響が及ぶのは、胎児が100mSvを超える放射線を受けた時であることが判っています。胎児の受ける線量は妊娠の時期や核医学検査の種類によって異なりますが、いずれに場合においてもやはり、100mSvを超える放射線を受けることはありません(文献※2,※4による)

胎児は胎内にいる時でも宇宙線や土壌、建物内から生じたりする放射線を吸収しています。また、生体構成要素の同位元素として母親を経由して放射性同位元素を摂取しています。

加えて、自然発生的に奇形や大脳の発達の遅れが生じるリスクが存在します。核医学検査による放射線を胎児が受けなくても、2.7〜3%の確率で奇形が生じ、4%の確率で大脳の発達の遅れが生じることが判っています。一方、核医学検査で受ける線量、10mSvを受けることでこれらのリスクが起こる確率は0.003%であることが判っています(文献※3による)。これらのことから考えて、核医学検査で受ける放射線以外の原因によるリスクの方が確率的には遥かに大きいのです。

しかしながら、胎児期の被曝や幼児期の授乳を通した内部被曝を回避するために核医学検査やアイソトープ治療の延期、あるいは中止します。これは放射線によって利益を受ける人以外の被曝を避けるのが、放射線防護の基本的考え方だからです。妊娠の疑いがある女性や妊娠中・授乳期の女性については、検査予約の際に必ずご相談ください。


参考文献:
  1. 「核医学検査Q&A」 飯沼武、小西淳二、石井勝己、舘野之男、宇野公一、田辺正忠、小田野行男、玉木長良、越智宏暢、利波紀久、勝山直文、楢林勇、金尾啓右、西村克之、日下部きよ子、福地稔、草間朋子、村田啓、久保敦司、油井信春、小泉潔、米倉義晴執筆/日本核医学会・ベクレル委員会 日本核医学会・日本アイソトープ協会 1996,p34-35
  2. 「改訂3版 放射線診療における被曝の管理」 日本医学放射線学会,日本アイソトープ協会 1987 丸善 p51-66
  3. ITIS RISK Newsletter "RADIOATION AND PREGNANCY Vol.2#2 December,1993" Eugene Pergament,Amy K.Stein,Judith L.Miller,Eugene Northwestern University Medical School.
    http://www.fetal-exposure.nwu.edu/RADIO.html
  4. 「新・放射線の人体への影響」 日本保健物理学会・日本アイソトープ協会編/丸善 1993 p36-39
  5. 「あなたと患者のための放射線防護Q&A」 草間朋子著/医療科学社 1996
  6. 「放射能と人体 くらしの中の放射線」 渡利一夫・稲葉次郎編/今井靖子,村松康行,西村義一,明石真言著/研成社 1999

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