A:核医学検査で受ける線量では子供が出来なくなったり、胎児への影響はありません。
精巣に150mSv以上,卵巣に650mSv以上(いずれも急性被曝)の放射線を受けたときに一時的に子供が出来にくくなります。永久に子供が出来なくなるのは精巣に3.5Sv,卵巣に2.5Sv以上(いずれも急性被曝)の放射線を受けた時です。卵巣または精巣に受けた線量がこれよりも低い場合には、不妊が起こることはありません。
卵巣や精巣に受ける線量は妊娠の時期や核医学検査の種類によって異なりますが、いずれの検査にしても数回受けた程度では100mSvを超えることはありません(文献※1,※2,※4による)。
胎児に奇形や大脳の発達の遅れなどの影響が及ぶのは、胎児が100mSvを超える放射線を受けた時であることが判っています。胎児の受ける線量は妊娠の時期や核医学検査の種類によって異なりますが、いずれに場合においてもやはり、100mSvを超える放射線を受けることはありません(文献※2,※4による)。
胎児は胎内にいる時でも宇宙線や土壌、建物内から生じたりする放射線を吸収しています。また、生体構成要素の同位元素として母親を経由して放射性同位元素を摂取しています。
加えて、自然発生的に奇形や大脳の発達の遅れが生じるリスクが存在します。核医学検査による放射線を胎児が受けなくても、2.7〜3%の確率で奇形が生じ、4%の確率で大脳の発達の遅れが生じることが判っています。一方、核医学検査で受ける線量、10mSvを受けることでこれらのリスクが起こる確率は0.003%であることが判っています(文献※3による)。これらのことから考えて、核医学検査で受ける放射線以外の原因によるリスクの方が確率的には遥かに大きいのです。
しかしながら、胎児期の被曝や幼児期の授乳を通した内部被曝を回避するために核医学検査やアイソトープ治療の延期、あるいは中止します。これは放射線によって利益を受ける人以外の被曝を避けるのが、放射線防護の基本的考え方だからです。妊娠の疑いがある女性や妊娠中・授乳期の女性については、検査予約の際に必ずご相談ください。