江戸期以前の屏風(びょうぶ)では国内最大級とされる「竹虎図(たけとらず)屏風」の初の一般公開が3日、福井県福井市の県立美術館で始まった。約80年にわたって所在不明だった“幻”の作品。狩野派の神髄が込められた六曲一双から放たれる豪壮さと雄大さが、来館者の目をくぎ付けにしている。展示は6月3日まで。
同美術館によると、竹虎図屏風は、江戸時代初期に幕府の奥絵師を務めた狩野安信(1613〜1685)の晩年の作とされる。左隻、右隻とも縦222・2センチ、横515・6センチで、確認されている江戸期以前の屏風では国内最大級という。
屏風はもともと越前松平家に伝来していた。1929年に競りに出されて以来、所在不明となり、一部識者にのみ存在を知られる“幻”の屏風となった。屏風を所蔵していた奈良県田原本町の浄福寺が2010年、県立美術館に照会し、本物と分かった。今年3月に同美術館に寄託された。
左隻に2頭の虎と5本の竹、右隻に3頭の虎と2本の竹が描かれている。虎と竹の画題は狩野派が最も得意とする分野で、金色の背景に大きく描かれた虎と緑色の竹が際立つ。虎の粗暴な筆致やユーモラスな表情に安信の個性がにじみ出ているという。
夫婦で見入っていた五十嵐靖子さん(66)=越前市岩本町=は「虎が配置よく描かれ迫力もある。虎が今にも向かってきそうな感じがした」と話していた。
現在開かれている「新収蔵品展」の中で公開している。観覧料は百円で高校生以下、70歳以上と障害者は無料。「ストラスブール美術館展」の入場券があれば無料で見ることができる。