著者:スティーヴン・ウォロシン、リサ・M・シュワルツ、H・ギルバート・ウェルチ
日経BP社
発行:2011年1月
価格: ¥ 1,680
ISBN-13: 978-4822248390
日経BP社
発行:2011年1月
価格: ¥ 1,680
ISBN-13: 978-4822248390
ただ・・・所々、いや全体に、ひっかかりを感じてしまって。
それは現代医療よりも、トンデモ系や似非科学、それらに引っ掛かる人に対して言ってくれよ、と。
((「はじめに」より引用))
>この本に書かれている情報の多くは、読者にとって目新しいことかもしれません。
>でも安心してください。
>医師を含め、多くの人にとっても新しい内容なのです。
工エエェェ(´д`)ェェエエ工
いくらなんでもそりゃないだろ。
この程度の基本的な内容を理解していない医者なんかいないって。
国家試験(必ずおさえておくべき超基礎の意)どころかミニテストのレベルですらないぞ。
>Quiz
>膀胱がんにかかる可能性(43人中1人)と、大腸がんにかかる可能性(19人中1人)のどちらが大きいでしょうか?
いくら素人さんでもこんなの間違える人おらんやろ・・・と言いたいが・・・まあ、現実はそうでもない。
著者が日本より識字率も低く教育に差がある米国の人とはいえ、日本の患者さんでもこれを間違えちゃう人がいるんです。
患者さんに説明するときは、極力専門用語を使わずに平易に判り易く伝わるように心掛けていますが、この時点からとなってしまうと流石にそこまで噛み砕いている時間なんてない。
当然理解している、と思いきや、まったく分かってなかった、なんてよくあるお話。
もうこれは「医師にとって当たり前は患者さんの当たり前ではない」とかどうこうということではなく、教育の違いなのか何なのか・・・。
この本で学んだことは、患者さんは「えっ、こんなことが?」と感じちゃうようなことが分かってないという可能性を常に考慮しなければいけないということ。
「いや、まさか分かってないはずが・・・」はありえちゃうということ。
そんなのちょっと考えれば分かるじゃん、なんてことでも、全然脳裏を掠めてすらいないことがあること。
その数字がどんな意味を持つのか掘り下げて考えることがない、数字を多方面から検証する習慣のない人たちがいるということ。
数字を目にしたらその大きさだけに捉われて、母数や比較対象に疑問を抱かない人がいるということ。
((帯から引用))
>治療の話をうのみにしない。
>がんの5年生存率の向上と実際の死亡率は関係がない。
>薬を飲んで治っても、その薬が効いた証明にはならない。
>検査結果の改善が、症状とも寿命とも関係ないことがよくある。
其れが何か?と言いたくなるような当然のことばかりですが、意外と理解されてなかったりする。ちょっと考えれば(ry
これがね、トンデモ系の人が科学に反論するときにこういう材料を持ってくるんですよ。
でも、それがその人自身が信じるものにだって当て嵌めたらどうなるか、という思考は放棄してる。
どこかで見聞きした理屈の表面をなぞっているだけだから、応用することができない。
似非医療商売に騙されちゃう人にこそ読んで欲しいけれど、都合のいい部分だけ抜き出して「だから科学は!医学は!信用できない!」ってなっちゃいそうだなあ。陰謀論者にはどんな理屈も通じないし。
著者、PubMedで検索してみたら、一応まともな論文を書いているし、科学の対極にいる世界の人ではないみたい。
始終違和感を覚えるのは、多分想定している読者層の違いかな?ある意味染まってない真っ白な、今まで「考える」という経験すらない人たち向けの。いくら御高説をたれたところで、読んで貰わなきゃ意味がないのだからね。そういう誘導のためだと理解した。
その違和感さえ覗けば、今まで読んだ一般向けの医学統計・数学の本の中では患者に「考える」ということを教える最高の良書。
本書の内容を全部理解して治療に臨んで貰えれば、こちらもどれだけ楽か。医師にすべてお任せ、ではなく、「一緒に」病気に立ち向かっていくという意味でもね。
例えば濃厚な治療が必要な病気を患って、医師の説明の中で怒涛の数字の渦に巻き込まれてしまい、インフォームドコンセントを受けてもちんぷんかんぷん、貴方が決めてください、と言われてもどうすればいいのか悩んでしまっている人などにはいいかもしれません。
ただ、本章の最後にあるように、極端な懐疑主義に陥らず、健全な懐疑主義に基づいて、医療情報を批判的に受け止められるニュートラルさを持っている人に限定したい気分。
医者から提示された数字の意味をきちんと理解したい人におすすめ。
~目次~
Part1 私のリスクって何?
第1章 リスクを理解する
第2章 リスクを比較の視点から
第3章 リスク一覧表の使い方
Part2 私のリスクは減らせますか?
第4章 治療の利益を判定する
第5章 その治療の結果は何か?
Part3 そのリスク減少に不利益はありますか?
第6章 治療の不利益について考える
第7章 その利益は不利益を上回るか?
Part4 健全な懐疑主義者になる
第8章 大げさな情報にだまされない
第9章 「確実性」の誇張に用心する
第10章 数値の背後に誰がいるのだろう?
ソフトカバー、本文黒1色刷