泊原発3号機 出力下げる作業5月5日 18時6分
国内で唯一運転を続けている北海道電力の泊原子力発電所3号機では、定期検査のため、5日午後5時から原子炉の出力を下げる作業が始まりました。
5日夜遅くには発電を止めて定期検査に入る予定で、泊原発3号機が止まると、国内にある原発50基はすべて停止することになります。
北海道泊村にある北海道電力泊原発では、5日午後5時から中央制御室で3号機の原子炉に制御棒を入れて出力を下げる作業が始まりました。
予定どおり作業が進めば、5日午後11時ごろに発電を止めて定期検査に入り、原子炉が止まるのは、6日午前2時ごろになる見通しです。
国内の原発は、東京電力福島第一原発の1号機から4号機が、法律上、廃止されたことから、50基となっていて、泊原発3号機が止まると、50基がすべて停止することになります。
国内で原発がすべて止まるのは、原発のれい明期でまだ2基しかなかった昭和45年以来、42年ぶりとなります。
一方、原発の運転再開を巡って電力各社は、全国の19基について、政府が再開の判断の前提としている「ストレステスト」を国の原子力安全・保安院に提出しています。
しかし、政府が原発の安全性と運転再開の必要性を確認したとして、地元福井県などに理解を求めている関西電力大飯原発の2基を含め、再開の見通しが立っている原発はありません。
また、電力需給について、関西電力と九州電力、それに北海道電力は、おととし並みの猛暑になれば電力が不足するとしていますが、「供給力が少なく見積もられている」といった疑問の声もあることから、国が第三者委員会を設け検証を続けています。
泊村長“大変残念だ”
泊原発の地元、泊村の牧野浩臣村長は、3号機が停止することについて「電力需給や安全性のことなどいろいろな面があるとは思うが、大変残念だ」と述べました。
そのうえで、牧野村長は「こういうことになった以上、今後は、なるべく早めに運転を再開させる形をとっていただきたい。いかなることがあっても対応できるような原子力発電所作りを進めていけば、あえて『脱原発』でなくてもよいのではないか」と述べました。
稼働原発ゼロに 夏に電力不足の見通し
北海道電力泊原子力発電所3号機の運転停止で、全国で稼動している原発はゼロになります。
全国の原発の運転停止が続くと、この夏には関西地方でおよそ15%の深刻な電力不足に陥るほか、九州や北海道でも電力が不足する見通しです。
北海道電力泊原子力発電所3号機は5日深夜、発電を止めて定期点検に入る予定で、これで全国に50あるすべての原発の運転が停止します。
各電力会社は、原発の運転停止によって電力の供給力が大幅に落ちていますが、今は、年間を通じて需要が最も低い時期にあたるため、当面、電力が不足する事態にはならない見込みです。
ただ、電力需要が増える夏場の需給は厳しくなる見通しです。
電力の需給状況を検証している国の第三者委員会は、全国すべての原発の運転が停止すると、おととしのような猛暑になれば、▽関西電力管内では、企業や家庭の節電がより進んだとしても、およそ15%の電力が不足するほか、▽九州電力管内や北海道電力管内でも電力不足となり、西日本全体でもおよそ3%の電力が足りなくなるとみています。
このため政府は、大型連休以降、企業や家庭に対する節電要請など夏の電力不足対策の本格的な検討に入るほか、福井県にある大飯原発の運転再開を巡り、地元を含めた国民の一定の理解を得られているかどうかについても検討を急ぐことにしています。
国内の原発稼働の歴史
国内初の商業用原子力発電所、茨城県東海村の日本原子力発電・東海原発が運転を始めたのは、今から46年前の昭和41年7月でした。
出力は16万6000キロワットと、今の標準的な大きさの6分の1ほどでした。
現在ある国内の原発で最も古い福井県敦賀市の日本原子力発電・敦賀原発1号機が運転を始めたのは、その4年後の昭和45年3月でした。
その年の4月30日から5日間、東海原発と敦賀原発1号機の2基が同時に止まることがあり、国内のすべての原発が止まるのは、このとき以来42年ぶりとなります。
その後世界では、昭和54年にアメリカのスリーマイル島の原発で、また昭和61年に旧ソ連のチェルノブイリ原発で、相次いで重大な事故が起きます。
しかし日本では、オイルショックを経験しエネルギー需要が増え続けるなかで、原発の数は着実に増え続け、平成5年度には、発電電力量で全体の30%を超えました。
また、平成11年には茨城県東海村の核燃料加工会社で臨界事故が発生し、作業員2人が死亡、住民660人余りが被ばく、平成14年には東京電力が原発の点検記録を不正に記載するいわゆる「トラブル隠し」が明らかになりましたが、原発はその後も増え続け、平成18年には、最多の55基になりました。
去年3月11日の東京電力福島第一原発の事故の前には、国内の原発は37基が運転していましたが、東日本大震災の影響や、13か月に一度行われる「定期検査」のため相次いで停止してきました。
そして3月下旬に新潟県にある東京電力柏崎刈羽原発6号機が停止して以来、北海道電力の泊原発3号機が、国内で唯一、運転を続けてきました。
国内の原発は、東京電力福島第一原発の1号機から4号機が、先月20日に法律上、廃止されたことから、50基となっていて、泊原発3号機が停止すると50基すべてが停止することになります。
また、国は、18年後の2030年までに新たに原発14基を建設し運転を始める計画ですが、福島第一原発の事故を受けて各地で影響が出ていて、いずれも具体的な見通しは立っていません。
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