北海道電力泊(とまり)原発3号機(北海道泊村)は5日午後11時3分、定期検査のため運転が止まり、国内に50基ある原発が1970年以来42年ぶりにすべて停止した。原発が運転再開するめどは立っておらず、昨年3月の福島第1原発事故を経験した日本は、発電量の3割を占める原発の運転ゼロが続く前例のない時期に入った。原発の安全性に不信感を抱く市民グループは「原発ゼロ」を脱原発に向けた一歩と位置付け、全国各地で集会やデモを開いた。
泊3号機の地元、北海道では停止前の午後1時、脱原発を目指す40の市民団体が札幌市の大通公園で集会を開き、雨の中、450人(主催者発表)が集まった。
冒頭、3人の子どもが「こどもの日」にちなみ、メッセージを読み上げた。
福島第1事故で福島市から札幌市に家族で避難した中学2年の渡辺刀麻君(13)は体験を基に「事故で福島の絆はずたずたに切り裂かれた。子どもが笑顔でいられるようにしてほしい」と訴えた。札幌市の高校1年の池沢加那さん(15)は「重荷を背負うのは私たち子どもです。原発は本当に必要なのですか」と疑問を投げ掛けた。
この後、「これからずっと原発ゼロ」「子どもが大事、命が大事」などとシュプレヒコールをあげながら、中心街を歩いた。
参加した北海道北広島市の主婦佐々木百合香さん(32)は「3日後に第3子が生まれる予定。子どもに二度と悲劇を経験させないため、原発はきょうで卒業して」と話した。デモや集会は東京、名古屋などでもあった。
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泊3号機は午後5時、核分裂の連鎖反応を抑える制御棒を原子炉に挿入。出力を徐々に下げ、6時間後の午後11時3分、ついにゼロになった。7日午後には原子炉内の温度が100度以下になる冷温停止状態になる予定。
北海道電は「泊原発は電力の安定供給にとって重要な基幹電源。安全確保を徹底し、一日も早い発電再開を目指す」とのコメントを発表した。多数の報道陣が現地入りしたが、取材は制限され、原発内は1社による代表取材しか認められなかった。
(中日新聞)