消費税増税関連法案が大型連休明けの8日に衆院本会議で審議入りする。審議では増税時の低所得者の負担緩和策として、食料品など生活必需品の税率を低くする「軽減税率」の導入の是非が争点になる。軽減税率は対象品目の線引きが難しく、税収も大幅に落ちるため採用されずにいたが、野党から検討を求める声が出ており、論戦が繰り広げられる見通しだ。
消費税増税では、低所得者ほど負担感が重くなる「逆進性」が問題視されている。欧州では消費税にあたる付加価値税の標準税率を20%前後にしている国がざらだ。一部の国では逆進性の解消策として軽減税率を採用し、国民の不満を和らげている。
標準税率20%の英国では食料品や医薬品、新聞などの税率をゼロ。標準税率19%のドイツも食料品や水道のほか、宿泊施設の利用などにも7%の軽減税率を適用している。
日本では、自民党が平成22年の参院選のマニフェスト(政権公約)に消費税増税時に軽減税率を検討することを明記。公明党にも「低所得者対策として考えられる」との声がある。
だが、軽減税率には「対象品目の線引きが複雑で、特定業界の優遇になりやすい」(財務省)という問題点がある。
フランスの場合、キャビアは19・6%の標準税率を適用するが、フォアグラやトリュフは5・5%に軽減されている。国内産業保護を名目に同じ高級食材でも差があるが、消費者からすれば不可解さが残る。
軽減税率が適用されるかどうかは商品の販売に直結しかねず、対象品目の選定は一筋縄ではいかない。
また、政府は消費税率を10%に引き上げた場合の税収増を年13兆5千億円と見込むが、課税対象の4分の1程度を占める食料品を税率5%に据え置くと、税収増は10兆円程度にとどまる。
野田政権は所得に応じて減税と現金給付を組み合わせる「給付付き税額控除」を低所得者対策の柱に据えている。
安住淳財務相は「現時点で方針に代わりはない」と軽減税率には消極的だが、負担増に対する国民の反発は根強いだけに軽減税率の再検討は不可避な情勢だ。