関越道の高速ツアーバス事故で、6日会見したバス会社「陸援隊」の針生裕美秀社長は「申し訳ございません」と謝罪を繰り返す一方、事故については「普通の人でも睡魔に襲われることがある」などと発言。東日本大震災以降3カ月間は外国人旅行客が減り、開店休業状態だったとしたうえで、「(点呼簿などの)記録はしていなかった」とするなど、言葉の端々からは「安全」への認識の甘さがうかがわれた。
会見は弁護士立ち会いで行った。紺のスーツ姿の針生社長は冒頭に被害者に対し、「申し訳ございません」などと謝罪し、何度も頭を下げた。その後、机に置いたメモを見ながら事故に至る経緯を説明。「過労運転はなかった」などと弁明した。
質疑で事故の原因を聞かれると、「普通の人でも睡魔に襲われることがある。私に責任がないというのではないが、今回は河野(化山容疑者)本人の居眠り、それが原因だ」と発言。一方、河野容疑者については「日本に17年いて、中国人のわりにかわいいやつだった」とし、バス4台を使い中国人ツアーの個人営業を行うことを認めたことについては、「人を育てるのが好きだった」などと述べた。
個人営業は、道路運送法で禁じる名義貸しにあたる疑いもあるが、針生社長はその認識を否定。バス乗車の日当が1万円だったと説明し、「経費を引いた分は入金するように言っていたが、名義料などは一切もらっていない」などと釈明した。
立ち会った弁護士によると、河野容疑者は「河野交通」の屋号で営業。月平均100時間の乗務の多くが、自ら手配した観光ツアーの客のための運転だったとした。
河野容疑者ら運転手については「日雇いというよりアルバイト」(針生社長)などと説明。東日本大震災をきっかけに仕事がなくなり、いったん従業員を全員解雇。現在いる10人の運転手は「3カ月間は見習い扱いだった」とし、最近まで雇用保険などのない非正規雇用だったことを明かした。
また、点呼簿などの記録については一切作らず、事故のあったツアーを仲介した会社から「配車指示書」が届かなかったことについては、「問い合わせたが、何の説明もなかった」となおざりにしていたことを明かした。
針生社長は運行計画書を作らないまま、26日朝に河野容疑者にバスの運転を依頼。河野容疑者が「道が分からない」などと言ったため、金沢市に帰省予定のあった別のアルバイト運転手を同行させ、往路は全区間を運転。復路は高速のインターチェンジまでの道案内をさせたという。