すべての起点を私にする練習
17:43:10  学生相談#102の記録。2011年最後の学生相談だった。

 <今日は話すことある?>首を横に振る。<ないんだ。今日はゼミの飲み会があるんだってね>うなずく(また勝手に連絡とられてるんだ)。<……>「……」<今年を振り返ってどう?>「最悪」<最悪?>「……」<先週もずっと待ってたんだってね>うなずく。<会いたかった?>うなずく。<何か伝えたいことがあったのかな?>うなずく。

 それでわたしは、前回に見かけたカウンセラーの別のクライエントについて訊いてみた。「その人のことが好きなの?」と。
 <好きって恋愛感情があるか?>「人として好きかってこと」<なんで彼女なの?>「見たの」<そうなんだ。じゃあ、あなたがいる横で予約とってたの?>うなずく。<何て言ってた?>「体調不良で連絡せず休んじゃったから、予約とりにきたって」<その通りだね。それのどこでしんどくなったの?>「このあと」<このあと?>「看護師さんが、「予約とったら先生も安心すると思う」って言った」<えぇ! 看護婦さんがそんなこと言ったの? 何でだろう……。でも、彼女のことで看護婦さんと話したことはほとんどないんだよ。たぶん無断キャンセルしたやん? だから看護婦さんも安心するって言ったんだと思う。真意はその人に訊いてみないと分からないけどね>「……」<それじゃあ、僕が彼女は心配しているのに、あなたのことは心配していないと思ったの?>うなずく。<そんなわけないやん。すごく心配しているよ>「でも、わたしはあの人とは全然ちがうもん。だからそんなはずない……」<ちがうって?>「あの人は明るいし、ハキハキしてるし、礼儀正しいし」<そう見えたんだ。じゃあ、あなたは明るくなくて、ハキハキしてなくて、礼儀正しくない?>うなずく。<そっか、看護婦さんにも好かれる人になりたいんだね>首を横に振る。<ちがうの? 確かにあなたはひとりで帰れなくて、看護婦さんも困ってることはあるけれど、それと好き嫌いは関係ないやろ?>「……」<それがくっついちゃってるのか>

 そして、カウンセラーは迷惑をかけないためにも、大人になろうというようなことを言ってきた。
 「どうしてわたしだけが大人にならないといけないの?」<あなただけじゃないよ。いっぱい我慢してるの分かってほしいんだね。お母さんにも友だちにも、ゼミでも我慢してるんだろ?>「……」<あと、僕にも我慢してるか>「……」<それでも、あなたは頑張ってると思うよ。もうちょっと頑張ってほしいけど>「でも、前に頑張ってないって言った」<もう言葉尻をとらえるのはやめようよ。いつ言った? 文脈が分からないと僕もなんとも言えないよ>「もう頑張れないって言ったら、頑張ってなかったやん! って叫んでた」<頑張るっていったらあなたは、全部をかけて頑張るみたいなことを考えるんだろうけれど、そうじゃないんだよ。ここで会議にかけられない程度に頑張ればいいんだよ>「……」<頑張ってないっていうのは誤解だからね。でも、声を荒げていたってことはイライラしていたんだろうね>うなずく。<こうやって一生懸命、気持ちを喋ってくれるあなたはかわいいし、人として好きだよ>

 わたしはなぜかこの日、カウンセラーの隣に座りたくてたまらなかった。それで、もう時間が終わるというときになって、立ち上がり、カウンセラーの隣へ行ってみた。カウンセラーも驚き、立ち上がり、<どうしたの?>と訊いてきた。
 「隣に座りたい」<枠を破るようなことをしたらあかんって。もう時間だから、予約とるよ>「……」<はい、じゃあ時間だから帰るよ>「どうしてこんなにさみしいのに分かってくれないの?」<さみしいんだ。震えるほどさみしいんだね>
 カウンセラーにそう言われてやっと、わたしは自分が震えていることに気がついた。でも、わたしが震えていようが何だろうが、カウンセラーは外までわたしを連れ出した。<頑張ろう。頑張るって人格的なことじゃないからね>と言いながら。
 外まで出たとき、カウンセラーは<頑張った、頑張った>と言って、わたしの背中をぽんぽんと叩いてくれた。それがどうしようもなくうれしくて、心地よかった。それでもカウンセラーは、彼の服をつかむわたしの手を振り払い、わたしを置いて走り去ってしまった。

にほんブログ村 メンタルヘルスブログ 境界性人格障害へ
にほんブログ村
  1. Edit
  2. Permalink
  3. |Category:限界設定期
  4. コメント:0
  5. トラックバック:0









:

トラックバックURL
http://marrow14.blog11.fc2.com/tb.php/259-ee74e3ed
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)