この本を読んでほしい人に●まえがきにかえて

 私たちは、発達障害を「治す」研究をしている、小児科医師・脳生理学者・発達研究者です。そして、治療法の研究と同時に「発達障害は予防できないのか」という研究も行ってまいりました。
 研究を続けているうちに、実は、「発達障害の予防法」と「子どもが健やかに成長するための育児法」は、同じであることがわかりました。本書で紹介している育児を実践していただければ、子どもの心と体は健常に発達し、これが発達障害の「予防」にもつながるのです。
 発達障害は、1965(昭40)年ごろから学校で問題になりはじめました。当時は1万人に1人程度でしたが、今は1万人に1600人ともいわれ、マスコミでも多く報道されています。
 通常、発達障害は脳の機能障害によって起こり、治療の方法はわからないといわれていますが、私たちは2歳までならば改善可能であると思っています。筆者3人による、さまざまな臨床・実践研究の結果、「早期(2歳ごろまで)に発見し、適切な支援(育児)を行えば、ほぼ健常の発達をする」ことがわかっています。
 早期であれば、発達障害の兆候が見られても適切な支援(育児)を行うことにより、改善するのですから、生後すぐにそれを実施すれば、子どもはアンバランスな発達をすることなく、成長していくはずです。
 私たちが提案している育児法は、難しいことではありません。昔、各家庭で普通に行われていたものです。新しい接し方でもなく、薬を用いる方法でもありません。さらにお金もかかりません。
 特殊なことをすることなく、健やかな成長を促し、発達障害を予防する育児法なのですから、生後間もなくから実践することに何のためらいがあるでしょう? 薬のように副作用があるわけでもなく、教材を購入する必要もないのです。
 本書は、子どもたちの現状や発達障害の解説も記述していますが、読み飛ばしていただいても結構です。ともかく第7章で紹介している育児法を実践していただきたいと思います。発達障害の治療は大変ですが予防は容易なのです。

 最後に、この研究に多大な関心をもっていただき、本書の執筆のご助言を賜りました、一般財団法人親学推進協会理事長・高橋史朗先生、開善塾教育相談研究所所長・金澤純三先生、NPO法人教育研究所所長・牟田武生先生にこの場を借りて御礼申し上げます。

筆者代表 金子保

 

目 次

この本を読んでほしい人に●まえがきにかえて

推薦の言葉
一般財団法人親学推進協会理事長・明星大学教授 高橋史朗
開善塾教育相談研究所所長 金澤純三
NPO法人教育研究所所長 牟田武生

第1章 幼児期の発達の様子が変わってきています
 1 幼児期の子たちの変化
  ・発語が遅くなっている
  ・おつむがとれない
  ・転んで顔を打つ
  ・ある特定の場所にいると話せなくなってしまう
  ・就学時健康診断で特別支援教育の該当者と判定される
 2 生まれながらにして能力を身につけているのではないのです
 3 乳幼児期の経験不足が原因です
 4 適切な時期を過ぎると能力の獲得ができなくなります

第2章 教室の子どもの様子が変わってきています
 1 小1プロブレムとは
 2 こんな子どもたちが増えています
  ・特別支援教育対象児が急増しています
  ・通常学級の特別支援教育対象児とは
  ・発達障害系の新しいタイプの不登校が増加しています
 3 やはり経験不足が原因の場合があります

第3章 急増している発達障害の子どもたち
 1 発達障害とは
 2 発達障害児の行動特徴
 3 発達障害の3つの治療課題
 4 発達障害支援の新しい研究

第4章 テレビ・ビデオ・DVDに頼らない子育てを −片岡直樹
 1 発達障害について
 2 発達が遅れている子どもたちの事例
  ・私が出会う子どもたち
  ・初診2歳3ヵ月・女児 対人(−)言語理解(−)言葉(−)
  ・初診2歳・男児 対人(−)言語理解(−)言葉(−)
  ・初診1歳9ヵ月・男児 対人(+)言語理解(+)言葉(−)
  ・初診2歳4ヵ月・女児 折れ線タイプの言葉遅れ
 3 赤ちゃんのときの育ち方が一生を決めます
  ・テレビばかりを見ている赤ちゃんは追視をしません
  ・応答的環境と愛着がないと五感が発達しません
  ・最初から五感が発達していない赤ちゃんはいないのです
 4 テレビ・ビデオは2歳まで見せないで!!
  ・人間の魂が育たない
  ・立体的認識能力が育たない
  ・シンボル能力が育たない
 5 音と映像のない環境で子育てをしてください

第5章 脳生理学研究からの発達障害の予防 −澤口俊之
 1 HQ障害症候群としての発達障害
 2 発達障害(HQ障害症候群)の原因と予防の臨界期
  ・環境要因
  ・乳児脳・幼児脳とは
 3 金子式治療指導法の意義
 4 早期(2歳までの)治療指導が予防となります

第6章 発達障害の効果的な治療方法からの予防研究 −金子保
 1 発達障害を治す方法を研究・実践してきました
 2 発達障害児の家庭からわかったこと
  ・手のかからない子・笑わない子
  ・言葉がない子・増えない子
 3 どうしてこのような状態像を示すのでしょうか
  ・あやされる体験・笑い転げる体験が少ない
  ・父親の接触時間が少ない
  ・テレビ・ビデオ・DVDなどの視聴との関係が深い
 4 環境・接触の方法を変えることで変化が見られます
  ・子どもを笑わせるように接してください
  ・テレビ・ビデオは見せない・聞かせない
  ・子どもと接触する人の数を増やしましょう
  ・対応が早いほど、変化が早く現れます
  ・全人格発達方法で発達障害の予防ができます

第7章 この実践がわが子を発達障害から守ります
 1 音と映像のない環境を整えましょう
  ・2歳まではテレビ・ビデオ・DVDを見せない生活をしましょう
  ・テレビ視聴は1歳半〜2歳以上からにしましょう
  ・音楽や音の出るおもちゃは避けましょう
 2 子どもをあやしましょう
  ・目を合わせて、話しかけたり、あやしたりしましょう
  ・目が合ったとき、無反応なのが一番いけません
  ・いろいろなあやし方があります
 3 育児に取り入れてほしいこと
  ・添い寝をして話しかけましょう
  ・子守歌はお父さん・お母さんの声で
  ・おむつの取り替え方
  ・母乳(ミルク)・離乳食の与え方
  ・抱っことおんぶの両方を上手に使い分けましょう
  ・ベビーカーは対面式のものにしましょう
 4 お母さん以外の人に育児参加をしてもらいましょう
  ・お母さん以外の人のあやされる体験が必要です
  ・お父さんの育児参加時間を増やしましょう
  ・育児にはお父さんの協力が不可欠です
 5 親子で楽しく遊びましょう
  ・遊ぶ前の注意事項
  ・ヘリコプター遊び・飛行機遊び
  ・たかいたかい遊び
  ・お馬さんごっこ
  ・ハンモック遊び
  ・くすぐり遊び
  ・鏡で遊びましょう
  ・電動でないおもちゃで遊びましょう
 6 親子の触れ合いで豊かな心を育てましょう
  ・大げさにほめましょう
  ・言葉をいわせようとしないこと。言葉がけを多くしてください

第8章 経験不足による学習不適応(学習障害)を予防しましょう
 1 就学後の学習を支える知性を育てておきましょう
  ・幼児期に知性を育てる「遊び体験」をしましょう
  ・知性とは
 2 計算能力を育てる遊び
  ・「3+4」の計算で指を用いる子の問題
  ・ペットボトルボーリング遊び
  ・トランプじゃんけん遊び
 3 読み書き能力を育てる遊び
  ・文字を読ませる前にしたい遊び
  ・文字を書かせる前にしたい遊び









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