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太陽光発電に思わぬ落とし穴

4月24日 19時15分

黒瀬総一郎記者

太陽光発電というと、一度屋根に取り付ければ半永久的に発電を続けてくれる、そんなイメージを持っている人が多いのではないでしょうか。
東京電力福島第一原発の事故以降、再生可能エネルギーとして太陽光発電を導入する動きが家庭や企業で広がっています。
岡山県は年間の晴天率が高く、国などの研究所による太陽電池の性能実験が行われています。
その取材をしているなかで、太陽電池の耐久性やメンテナンスに思わぬ課題があることが分かりました。
岡山放送局の黒瀬総一郎記者が解説します。

メンテナンスフリーと聞いたのに…

岡山県倉敷市に住む兼安靖さんは環境や家計のことを考え、12年前、自宅に36枚の太陽電池を設置しました。
購入当時は業者からメンテナンスの必要はないと聞いて、10年間はそのまま使えると考えていました。
しかし、6年目に発電量に気になる変化が現れました。
兼安さんは導入してから毎日欠かさず発電量を記録したのですが、その記録から発電量が急激に低下したことに気付いたのです。
結局兼安さんは、設置した36枚の太陽電池パネルのうち15枚のパネルを交換することになりました。

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兼安さんは「販売店の営業担当者は、売る際にメンテナンスは必要だときちんと説明するべきだ。それをメンテナンスはいらないといって売るのは言語道断だ」と憤りを隠せません。

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実は多かった太陽電池のトラブル

取材を進めると、設置した太陽電池パネルが数年で壊れるケースが全国的に起きていることが分かってきました。
産業技術総合研究所の加藤和彦主任研究員などが全国で調査した結果、住宅に設置された太陽電池483台のうち、およそ2割の97台が10年以内に発電量が減って電池パネルを交換していました。
加藤研究員は、数年で太陽電池が壊れる背景には、▽耐久性の評価基準が十分ではないこと、▽定期点検も義務づけられていないこと、などがあるのではないかと指摘しています。

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どんな故障が起きるのか?徹底検証

太陽電池で実際にはどのような問題が起きているのかを探るため、加藤研究員は、今月から研究所で使っている5600枚の太陽電池パネルの調査を始めました。
発電中の電池パネルの表面を赤外線カメラで写すと、全体が赤く映し出されるなか、色が白くなっている部分が見つかりました。
異常な発熱が見られる部分です。
原因は、電池の回路が切れて発電効率が下がっていることが考えられます。

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電池パネルのトラブルは、こうした故障が最も多いそうです。
電池パネルを実験室に運び込んでさらに詳しく調べると、電流が集中しすぎて発熱するのを防ぐ安全回路が壊れていたことが分かりました。
加藤研究員は「住宅では、電池パネルが設置される屋根とパネルの間に枯れ葉がたまってることも多く、発熱によって最悪の場合、火事につながりかねない」と危惧しています。

故障をいち早く見つけるには

こうした回路の故障をどうすればいち早く見つけることができるのか。
外見ではなかなか分からない太陽電池の故障を簡単に見つけ出す方法は、まだ十分に確立されていないのが現状です。
加藤研究員が開発したのが、電気信号を太陽電池の回路に流して断線している場所を見つけ出す装置です。
信号の受信機を電池パネルの表面に当てて徐々にずらしていきます。
電流が流れている場所では信号を受信して音が鳴りますが、急に音が鳴らなくなる場所があり、そこで回路が断線しているとみられます。

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装置の値段はおよそ10万円と比較的、ほかの調査機器よりも安く、メンテナンス業者などへの普及が期待できるとしています。
加藤研究員は「太陽電池は、一度付けて運転を始めてしまうと、屋根の上で故障が起きているのかどうか分かりにくい。業界としても正しい保守点検方法を作っていきたい」と話しています。

導入する際の注意点は?

加藤研究員は太陽電池を自宅などに導入する場合、メンテナンスの業者から購入することを勧めています。
また導入後も日々、発電量を記録して異変に気付けるようにすることがユーザーのとれる自衛策だと話しています。

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この夏の電力需給を検証する政府の第三者委員会は、この夏に節電が行われたとしても、猛暑になれば西日本全体で3%余りの電力が不足するなどとした電力会社による最新の見通しを23日に示しました。
政府が代替エネルギーの柱とする太陽光発電の普及を本格的に進めて行くには、保守点検の技術を確立して信頼性を高めることが何より求められています。