図書館貸出情報の扱い、ご安心ください!
今日は長いです。でも、大事なことなので、読んで頂ければとっても嬉しいです。

お題は、今、一部ネット上で話題になっている「貸出履歴の取り扱い」についてです。

(はじめに)
5月4日(金)のCCCの増田社長と私の記者会見で出した「武雄市立図書館○蔦屋書店」の新図書館構想なんですが、多くの市内外の皆さん、プレスは好意的の一方で、ネットで一部火がついたように批判。批判はいいんだけど、荒唐無稽というか、直接情報であるユースト(午前午後)なんか見ていないかのような的外れな批判や、都合の良いフレーズを抜き出しただけの指摘はいつものこと。これって武雄市民病院の民間委譲の際でも良くありました(ただ、あの当時は今のようなSNSはなかったけどね。)。

それにしてもね、つぶそう、つぶそうという意見が波動のように来ています。現に僕のTwitterはいつものように炎上。もうTwitterは議論する場じゃ無いよね。2ちゃんねる化してる。その点Facebookはやはりまともでしたね。やっぱり、実名が一番。

でもね、僕はこういった炎上とか全然気にならないんですね。それはなぜか、この新図書館構想そのものの動機が善だし、その上、これは市民価値の向上につながるものと確信しているから。そういう意味では、市民病院の民間委譲と全く同じなんですね。それと、武雄の知名度がさらに上がることによって、結果、図書館のあり方に関心が集まる。

本当の意味で、この新図書館構想を通じて最高の公共施設を作り上げたいと思っていますし、これが市民価値の向上、市民福祉の向上につながるものと確信しています。また、この動きが全国に広がることを期待しています。


(本論)
ユーストでも言いましたが、「貸出情報は個人情報には当たらないというのは僕の持論」。皆さん、個人情報ってどういうものなのか、一度まとめてみますね。

個人情報とは、個人情報の保護に関する法律(平成15年5月30日法律第57号)
の第1条にその目的があり、「この法律は、高度情報通信社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大していることにかんがみ、個人情報の適正な取扱いに関し、基本理念及び政府による基本方針の作成その他の個人情報の保護に関する施策の基本となる事項を定め、国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務等を定めることにより、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。」となっています。

その中で個人情報とはというとね、その定義は、「この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。」となります。

それと、武雄市では、この法律に基づき、武雄市個人情報保護条例(平成18年3月1日 条例第12号)があり、条例の目的として、「この条例は、個人情報の適正な取扱いに関し必要な事項を定めることにより、個人の権利利益を保護し、もって基本的人権の擁護と公正で信頼される市政の実現を図ることを目的とする。」となっていて、ここでの個人情報の定義は、第2条において、「個人を対象とする情報であって、特定の個人が識別することができるものをいう。」となっています。

(長いまとめ)
そうなんです。法令においては、「特定の個人が識別することができるもの」となっているんですね。

では、論点の図書館の貸出履歴が、個人情報に当たるかというと、ちょっと具体的に言うと、「樋渡啓祐が「深夜特急」「下町ロケット」「善の研究」を5月6日に借りた。」この情報が外部に出るとこれは個人情報の関係法令の適用に当たる、これは当然。

僕が言っているのは、「5月6日20時40分、42歳の市内在住の男性が、「深夜特急」「下町ロケット」「善の研究」」を借りた。」ということそのものについては、個人が特定できないし、仮にこれが外部に出ても法令に照らし、全く問題がない、これが僕の見解であり、図書館の貸出履歴は、これをもとに、個人情報に当たらないって言っているんです。個人が特定できない。その中で、この情報はとっても貴重で、図書館の本の品揃え(武雄市立図書館は市民から成る選書委員がいます。)に当てたり、リコメンド(本を借りる人に、別の本の推薦)にあてたいって思っています。

これらの情報は、憲法学で広く通説となっているプライバシー権に当たると思っていますので、僕はプライバシーの保護という観点から個人の意向を重視したい。そして、記者&ユースト会見でも述べましたが、この貸出情報を、それを出すとも言っていないし、それを活用するに当たっては、市民の同意が必要だと言っています。

この持論の表明をもって「図書館の自由に関する宣言」に反しているなどと、やいのやいの言っている方もいるようだけど、私が持論を語るのも制限するなら、それこそ自由の侵害にあたると思いますね。ま、これは言い過ぎか。

僕はね、一言も法令を無視するとも「図書館の自由に関する宣言」を無視するとも言っていないんですね。そもそも、この図書館の自由に関する宣言がまたくせ者。「図書館の自由に関する宣言」「図書館員の倫理綱領」に反する、という意見も見られましたが、中身そのものも僕は話にならないと考えている。まぁこれはいろんな人のいろんな考えがあるでしょう。問題はこの宣言の立ち位置。この宣言は日本図書館協会という図書館関係者の「部分社会」(法学用語)の宣言で、一般社会には法規性は何らないんですよね。図書館関係者で議論や宣言するときはいいのですが、今回のように市民を巻き込んだ話になると、法や武雄市条例に照らしてどうか、という点が重要で、個人情報の問題などはそれで十分議論・整理できると思います。その中で、今回の提携におけるいろんな情報の扱いに関しては、今までの市立図書館の情報の扱いを参考にしながら、別途、これは利用者にとって大切な点なので、武雄市議会での議論の一方で、武雄市立図書館が管理する個人に関する情報の問題である以上、武雄市個人情報保護条例第28条に基づく個人情報保護審議会で議論してもらいます。

指定管理者に予定しているCCCにおかれては、「プライバシーマーク」(プライバシーマーク制度は、日本工業規格「JIS Q 15001個人情報保護マネジメントシステム―要求事項」に適合して、個人情報について適切な保護措置を講ずる体制を整備している事業者等を認定して、その旨を示すプライバシーマークを付与し、事業活動に関してプライバシーマークの使用を認める制度。)の取得もされていますから、利用者の秘密保持においては勿論万全の体制を取れますし、僕の持論は持論として、こういった法令などをきちんと踏まえた上で、安心かつ安全な情報管理を行うようにCCCと武雄市の間でしっかり協議しながら制度設計を図っていきます。この履歴情報の扱いについては、再度書きますが、武雄市個人情報保護審議会及び武雄市議会並びに使ってくださる方々のご意見をしっかり踏まえます。まさに、万機公論に決すべしだと思っていますし、これらを踏まえて、市民価値を劇的に向上させた新図書館を作ります。

あとね、武雄市図書館に併設の歴史資料館がどうなるかというご心配も一部いただいていますが、これは鍋島家古文書、蘭学資料等、一級の貴重な資料がありますから、勿論残します。ただ、今の図書館内の場所にあるべきか、これについては、私自身、図書館、展示、そして、保存がどれも中途半端になっていると痛感し、これは少なからずの市民の皆さんからご意見を頂いていますし、また、事務室はあれだけの広さは不要。市民に開放します。この展示、そして、保存に関しては、今、議論を開始した新しい市庁舎(現在のまま耐震、現在の場所に建て替え、新しい地に新設の3パターンで検討)に機能として入れ込むか、今の図書館の裏の広大な職員駐車場に新たに展示&保存館等を作るかどうかは、これは、これから、議会の皆さんや文化関係者の皆さんと議論して決めていきたいと思っています。 

(これから)
以上の私の基本的見解をスタートに、5月中に武雄市個人情報審議会の中で、貸出履歴等の情報の意味、位置付け、そして、その取り扱いについて協議をしてもらいます。その議論を踏まえて、この情報の扱いに関して6月に、CCCと武雄市で協定を結び、公表したいと考えています。これらについては、6月武雄市議会定例会において広範に議論頂き、指定管理者締結に関する議案、武雄市図書館設置条例の改正案(指定管理者制度を盛り込む等)の議決を目指します。その流れに中で、前向きなご意見、ご質問をぜひ頂ければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

(感謝)
今日のBlogですが、武雄市役所のFacebook化に協力いただいている杉山隆志さんから、「Twitter を中心にあまりに事実に基づかない推論による誹謗・中傷・的外れな批判がひどいので、論点を整理して回答した方が良い。」という助言と、問題となっている論点を抽出いただいた佐賀県庁のHさんの論考(ご自身のFacebookにあります。)を参考にしながら書き上げました。

両氏に謝辞を申し上げます。ただ、すべての文責はこの私にあります。

繰り返しになりますが、是非皆さんユーストやこのBlogを踏まえて、重ねて、前向きなご意見、ご質問をお願いしますね!

by fromhotelhibiscus | 2012-05-06 20:08 | Trackback | Comments(0)
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