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社説:国内原発全停止 電力供給の将来像示せ
北海道電力の泊原発3号機がきょう5日に定期検査入りし、国内の商業用原発50基全てが停止する。原発黎明(れいめい)期の1970年以来、42年ぶりの事態で、電力需要が増す夏を「原発ゼロ」で迎える可能性が出てきた。
政府は電力の需給逼迫(ひっぱく)を理由に関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働を目指したが、「再稼働ありき」の姿勢が強い批判を浴びた。地元の理解なしには再稼働できない以上、仮に夏も原発ゼロの状態が続いた場合、どう対応するかは当然想定しておく課題だったはずだ。
にもかかわらず、その答えはいまだに示されていない。再稼働に前のめりになり、原発ゼロを踏まえた検討を怠ってきた政府の責任は重い。時間は限られているが、今夏の電力需給の見通しなど詳細な情報を示しながら、国民的議論を喚起しなければならない。
日本は国策として原子力を推進し、福島第1原発事故までは国内電力の3割を原子力に頼ってきた。しかし、福島の事故で安全神話は崩壊。安全対策の不備や危機管理の稚拙さが次々と明らかになり、原発に対する国民の不安、さらには政治に対する不信が増幅した。再稼働をめぐる現在の混乱も、これが背景となっている。
大飯原発の再稼働方針はわずか10日余りの協議で決定。こうしたプロセスからも「再稼働ありき」の姿勢は見え見えだった。先月末の世論調査では、大飯原発の再稼働に59%が「反対」で、電力消費地の近畿ブロックでさえ55%が反対と答えた。原発の安全性に対する根強い不信感を裏付けるものであり、政府は国民の声を尊重すべきだ。
政府、電力会社は繰り返し電力不足を強調するが、電力は本当に足りないのだろうか。
原発ゼロでも夏を乗り切ることは可能であるという専門家の声もある。ピーク時の電気料金引き上げなどで節電効果を高める一方、供給面でも夜間電力でくみ上げた水で発電する揚水発電や、電力会社間の電力融通などを積極的に行えば回避できるという指摘だ。電力不足は一日中続くわけではなく、ピークの時間帯の電力需要をどう減らすのかも重要な課題である。
政府は「足りない、足りない」と国民の不安をあおるだけではなく、少なくとも供給力の増強と節電策を示した上で、再稼働への理解を求めるのが筋ではないか。
ただし、議論を再稼働の是非だけに矮小(わいしょう)化してはならない。既存原発を再稼働させるかどうかは、日本のエネルギー政策をどう見直すかという問題でもある。民主党政権は「脱原発依存」を掲げているが、その道筋は固まっていない。目標に向けてどうかじを切るのか、そして電力供給の将来像をどう描くのか。原発ゼロの日を迎え、問われているのは脱原発依存への政治の決意と行動力である。
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