2009年度の概要世銀の融資図3.1 図3.2 図3.3 世銀は国際資本市場からの資金の調達(IBRD)と富裕な加盟国からの拠出金を使用した贈与や融資の配分(IDA)により資金を提供しています。IBRDとIDAの資金はいずれも、加盟借入国の貧しい人々のために役立てられています。 融資は借入国の個別のニーズに基づいて行われ、その手段はますます柔軟なものになっています。2009年度のIBRDとIDAの融資の概要については図3.1 ~ 3.3と表3.1をご覧ください。 低所得国途上国の貧困は、国際比較プログラムの最新の報告書によると近年考えられていたよりも深刻であるとが明らかになりました。2005年の物価水準(入手可能な最新値)で1日1.25ドルという国際貧困ラインが新たに設定されましたが、これは世界の最貧困国10 ~ 20か国の国内貧困ライン中間値です。世銀がIDA支援を通じて援助に尽力している低所得国43か国およびそこに暮らす約9億7300万人(2008年)は現在、今後数世代にわたって貧困状態を抜け出せないリスクが過去数十年間で最大となっています。 IDAの役割IDAは世界の最貧困国に譲許的融資を行う最大の多国間機関です。2009年度は、2007年の一人当たり国民総所得(GNI)が1,095ドル以下であった国がIDA融資適格国となりました。さらにIDAは、一部の小島嶼国のように、融資適格国の基準となる一人当たり国民所得は超えているものの、IBRD融資を受けるだけの十分な信用力を持たない国にも支援を提供しています。2009年度のIDA融資適格国は合計79か国でした。これまでのIDA卒業国は27か国に上り、その一部(最近では中国とエジプト・アラブ共和国)は今やIDAドナーとなっています。IDA資金の配分は主に、毎年実施される国別政策・制度評価における各借入国の格付けによって決定されます。IDAとIBRDの両方の援助を受けられる適格国の場合、IDA資金の配分に際しては、そうした国々が別の資金源から融資を得るための信用力やそうした資金源へのアクセスを考慮に入れる必要があります。 IDAは、借入国による経済成長の促進、貧困の削減、貧困層の生活状態の改善を支援しています。IDAは、そのプロジェクトにおいて、紛争後復興、経済移行、脆弱性、急速かつ持続可能な成長など各国の様々な状況に直面します。IDAは、すべての低所得国への支援を継続する一方、その成果を見ながら、IDA第15次増資(IDA15)の対象となる3年間の財政援助の半分をアフリカに向けられ、南・東アジアの最貧困国にも多額の援助が向けられる予定です。 IDA承認額2009年度のIDA融資承認額は140億ドルに到達しました(図3.4参照)。その内訳は融資が110億ドル、贈与が26億ドル、保証が4億ドルで、合計176件のプロジェクトに対するものでした。承認額が最も多かったのはアフリカ地域であり、その額は79億ドルでIDA承認総額の56%を占めました。南アジア地域(41億ドル)および東アジア・大洋州地域(12億ドル)も大きな割合を占めています。国別では、ナイジェリアとパキスタンが単独では最も多くのIDA資金を受け取りました。 IDAは、インフラ・セクター(エネルギー・鉱業、運輸、上下水道・治水、情報通信技術)で重要な資金調達源のひとつです。これらのセクターを合計すると49億ドルで、IDA承認額全体の35%に上ります。承認額が最も多かったセクターは行政(法律・司法を含む)であり、単独のセクターとして26億ドルの融資を受けました(全体の19%)。保健・社会サービス・セクター(20億ドル)および農業セクター(19億ドル)に対しても多額の支援が提供されました。 テーマ別に見ると、特に多くの資金を受け取ったのは、農村開発(32億ドル)と人間開発(27億ドル)でした。金融・民間セクター開発(25億ドル)、公共セクター・ガバナンス(17億ドル)、都市開発(10億ドル)にも大きな関心が払われました(図3.5 ~ 3.7は2009年度のIDA融資の概要を、図3.8はインフラ関連のIDA融資を示しています)。 図3.4 図3.5 IDAの原資図3.6 図3.7 IDAの活動資金は主にドナー国からの拠出金でまかなわれています(図3.9)。そのほか、IBRD純利益からの移転、IFCからのグラント、過去のIDA融資に対する借入国からの返済金などによってもまかなわれています。ドナー国と借入国の代表者は3年ごとに会議を開き、IDAの融資方針と優先分野を話し合い、その後3年間の融資プログラムに必要な額を決定します。通常、IDA拠出額が最も多いのは主要先進国ですが、途上国や移行国もドナー国に名を連ねており、そうした国の中には現在IBRDから融資を受けている国やIDAから融資を受けた経験を持つ国も含まれています。IDA第15次増資(IDA15)交渉期間中に、中国、キプロス、エジプト、エストニア、ラトビア、リトアニアの6か国が新たにドナーとして加わりました。 2009年度は、2009 ~ 2011年度を対象とするIDA承認額の原資となるIDA第15次増資(IDA15)の初年度でした。この3年間にIDA融資適格国への譲許的融資として417億ドル(特別引出権273億ドル相当)が承認される予定です。ドナーにより誓約された新たな拠出金は過去最高の252億ドルに上りました。これらの拠出金に加えて、債務削減コストのために過去に誓約された拠出金から165億ドル、IDA融資返済金と投資収益、世銀グループからの内部資金が確保されました。 世銀グループはIBRDの純利益およびIFCの内部留保から35億ドルを拠出すると誓約しており、この額はIDA第14次増資(IDA14)での拠出額の2倍以上となっています。 IDA15の総額のうち91億ドルが、IDAによる債務削減に伴う融資返済金の減少分に対するドナーからの補填となっています。その内訳は、IDA15実行期間中の多国間債務救済イニシアティブ(MDRI)に関係する費用が63億ドル、IDA15におけるIDAの重債務貧困国(HIPC)イニシアティブに関係する費用が17億ドル、IDA15での延滞債務解消プロジェクトのための資金が11億ドルとなっています。これらの金額は、IDAが債務救済イニシアティブゆえにドナーからの拠出にこれまでよりも依存するようになっていることを示すものです。 表 3.1 世界銀行によるテーマ別、セクター別の融資 | 2004 ~ 2009年度単位:100万ドル
注:2005年度からは、保証と保証ファシリティを含む。数字は端数を四捨五入したため、合計額が合わないことがある。 図3.8 図3.9 HIPCイニシアティブとMDRI世界銀行は、HIPCイニシアティブおよびMDRI を通じて最貧困国の債務削減を行っています。現在までにIDA融資適格国40か国のうち35か国がHIPC決定時点に到達し、HIPCイニシアティブの援助を受ける資格を得ています。このうち26か国がHIPC完了時点に到達し、HIPCイニシアティブおよびMDRI の下での債務削減を受けています。すべての融資適格国に対するHIPCイニシアティブの債務削減に伴う債権者の負担総額は、2008年末現在、正味現在価値で740億ドルと推定されます。HIPCイニシアティブ完了時点に到達している26か国で見ると、世銀による債務削減総額は2008年末時点で純現在価値約260億ドルであると考えられ、そのうち110億ドルがHIPCイニシアティブ、150億ドルがMDRI で提供されています。 |